ゴールデンウィークは波乱
ゴールデンウィーク前の、最後の仕事を終えた俺は、久々に真っ直ぐ家に帰る。
無事にマンションに着き、家に帰ることが出来た。
「フゥ……良かった。今日は何もなくて……」
誰からも誘われることなく、自分の時間が持てる。
「嫌とかではなく、少々キャパオーバーだし、考える時間が欲しかったからな……」
さて……松浦係長とデートすることになった。
……なぜ?ホワイ?どうして?
……いつの間にやらそういう流れに……。
後悔はしていないが、いまいち状況を飲み込めてない自分がいる。
「あんな美人とデートとかしたことないぞ?せっかくなら、楽しませてあげたいが……」
俺に出来るだろうか?
こんな俺に……つまらないと言われ、好きだった彼女に振られた俺に。
「……我ながら、ウジウジしててイラつくな。とりあえず、飯を食べるか」
今日は、色々あったから作る気力がない。
なので冷凍してあるビーフシチューに、焼いたパンとサラダで済ませる。
その際に行儀は悪いが、ネット小説を読む。
「うん、美味い……へぇ、最近のラブコメ小説はエロが強いのか……いや、エロいだけじゃないな……きちんとした話の上でのエロってことか……みんな、色々凄いなぁ……」
そんなことを考えつつ、食事を終え、ソファーにもたれかかってると……。
どうやら……ゆっくりもしていられない状況のようだ。
「森島さんから電話か……出ないというわけにはいかないか……もしもし?」
『もしもし、お疲れ様です。今、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だよ。どうしたんだい?」
『あのですねー、月曜日に私とデートしません?』
……今、なんと?
デートと聞こえたような……。
いやいや、そんなわけが……さっきラブコメを読んでたからって。
『あのー、聞こえてますかね?やっぱり、迷惑ですかね?』
「いや!そんなことは……って、本気かい?」
『ふふ……そんなに構えないでくださいよー。相談に乗って欲しいんですよー』
なるほど、そういうことか。
経験が浅いから、そういう冗談ともよくわからないんだよなぁ。
……だから、つまらないとか言われて振られるんだろうな。
「そういうことなら、まあ……」
『ほんとですか?助かりますよー』
「ただ……」
『大した時間はかからないのでご安心ください。貴重なゴールデンウィークですからねー』
「なら問題ないよ」
『では、時間と場所は前日に送りますねー。失礼しますねー』
電話が切れる……。
「ふぅ……相談か……一体、なんだろうな?」
……電話もしつこくないし、用件のみで楽だったな。
話しやすいし良い子だし、相談くらいなら力になるとするか。
「ん?あれ?」
着信がきてる……松浦係長からだ!
「か、かけなおさないと……!」
慌てて電話をする。
「もしもし?」
『あっ——ご、ごめんね?かけても出なくて……何かしてたかな?忙しいなら……』
「いえ、大丈夫ですよ。少し……」
あれ?森島さんから電話だって……何故言えない?
別におかしなことじゃないよな?
松浦係長と付き合ってるわけじゃないし……。
『水戸君……?』
「いえ……日曜日のことですね?」
『う、うん……お任せしても良いのかな……?私、そういうのわかんなくて……』
「お安い御用ですよ。一応、予約を取っておきますね。ゴールデンウィークですから」
『あ、ありがとうございます……頼りになるのね……』
「いや、これくらいは……」
まあ、一応教訓として覚えてはいるけどな。
前の彼女に、なんで予約してないの?とか言われたからなぁ……。
言わなくてもわかってとか……ハァ……女性って難しい。
『ううん!そんなことないよ!』
「あ、ありがとうございます……」
なんというか……真っ直ぐ言われるとテレるな……。
『え、えっと……わ、私は何をすれば良いかな……?』
「いえ、そのままで大丈夫ですよ。明日、予定が決まり次第連絡しますから」
『そ、そういうものなんだ……よ、よろしくお願いします……』
「ええ、お任せください」
『じゃ、じゃあ……きるね?あれ?そっちがきるの?え?え?』
「クク……気にしなくていいんじゃないですか?」
『わ、笑われちゃった……』
「あっ——す、すみません……」
『う、ううん!いいの!えっと……お休みなさい……』
「ええ、お休みなさい。では、俺が切りますね」
通話を終えて、ソファーにもたれかかる……。
「ハァ——緊張した……」
松浦係長と話すのは緊張するな……。
いや……ドキドキすると言えばいいのか……?
俺は乙女かっ!
「2人の違いはなんだろうな?……よくわからない……」
松浦係長と話すより、森島さんのが楽な気はする……。
だが、楽しいのは松浦係長な気がするし……。
すると、再びスマホが鳴る。
「おいおい、今日はなんだ?……姉貴か」
ちょうど良いと思い、電話に出る。
「もしもし?」
『お姉ちゃんですよー』
「当たり前だろ」
『あら、ノリが悪いわね』
「悪かったな、つまらない男で」
『あらー……相変わらず、重症ね。アンタは……』
「ほっとけ。で、どうしたんだ?」
『明日、予定はあるかしら?』
「ゲームをする予定だったけど……」
だから、松浦係長にも日曜日が良いと言ったが……。
色々と状況が変わってきたからな……。
『なら、やめとくわね。買い物したいから男手が欲しかったけど』
「いや、予定を変更する。良いよ、付き合うよ」
『……事件ね。学生時代に遊べなかった反動で、大人になってからゲームや小説にのめり込んだアンタが……』
「……何も否定ができないな……いや、相談があるのと、明後日に車を貸して欲しいんだよ」
『へぇ……珍しいわね。いつもなら溜め込むだけ溜め込んで自爆するアンタがね』
「まあ……少し、心境の変化というか……変わっていかなきゃと思ってな」
『良い傾向ね、それは。アンタは真面目過ぎるし、もう少し楽に生きなさい』
「姉貴……サンキュー」
「ふふん、お姉様と呼んでも良いわよ?』
「却下します」
『ふふ……でも——良かったわ。そう思える日が来たってことね……良いわ、貸してあげるから……ただし、覚悟しなさいね?』
「わかってるよ、事情は説明するから」
『あら?それまた珍しい……』
「というか、それが相談内容に関係あるし……」
『そういうことね……わかったわ。じゃあ、明日の昼過ぎに行くわ』
「ああ、わかった」
通話が切れ、ようやく静かな時間が訪れる。
「なんか、立て続けに起きたな……色々なことが」
一ヶ月前まで、何も変化がなかったのに……。
少々、キャパオーバーなのは否めない……。
ただ——嫌な気がしない自分に気がついたのだった……。




