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地味な平社員の俺が、何故か美人上司と社内のアイドルに迫られている件  作者: おとら@9シリーズ商業化


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部署に挨拶

 麗奈さんと昼食を終えた俺は、午後の仕事に取り組む。


 今度は指導をすることではなく、自分の仕事をしている。


 明日のゴールデンウィークまでに、終わらせておかないといけないからだ。


 デートとか色々問題はあるが、今はこちらに集中しないと……!


 すでにキャパオーバーをしているが、俺は何とか仕事をこなしていく……。


「えっと……この会議の資料は、このファイルに入れて……顧客リストはこっち……メールを送って……よし、これでひとまず安心だな」


「水戸君、どうかな?間に合いそうかな?」


「あっ、課長。ええ、今終わったところです」


「それは良かった。では、私と一緒に来てもらえるかな?」


「はい、良いですが……どちらへ?」


「来週から仕事をしてもらう部署に挨拶に行こうか。顔合わせ程度でもしておけば、後々面倒なことを省けるからね。何より……心象が良くなるからね」


「そうですね……こちらからお願いします。案内してもらってよろしいですか?」


「ええ、もちろんです。私は、貴方のそういうところが好きですね」


「え?あ、ありがとうございます……」


 何だろ?いつもなら……そんなことないと思うのだが。

 今は——言葉がスッと入ってきた気がする……。


「おや?……良い顔してますね。これは、後押しした甲斐がありましたかね」


「え?」


「いえ、こちらの話です。では、行きましょう」


「は、はい」


 戸惑いつつも、課長についていく。

 ……一体、どういう意味だろうか?





 最上階の6階に部署があるので、階段でいくことにする。


「確か……商品を調理する場所もあるんですよね?」


「ええ、最上階が適していますからね。うちのビルは火災にも強いですが、万が一ということもありますから……」


 下の階で火事が起きたら、逃げ場はないからなぁ……。


 そのまま階段を上がった先の扉を開けると……。


「あら!田村君じゃない!」


 入り口にて、少し恰幅の良いハキハキした女性がいた。

 確か……食品部門の部長で、三船さんだったかな?


「三船さん……君はよしてくださいよ」


「何言ってのよ!まだまだ君で十分よ!私より若いんだがら!」


「二つしか違わないじゃないですか……ハァ、水戸君、食品開発部門の責任者である三船里美さんだよ」


「初めまして、三船部長。私は監査及び情報事業部門の水戸と申します」


 普段言うことないけど……正式名称はこれで合っているはず。


「ええ、初めまして。貴方が、田村君と麗奈ちゃんのお気に入りね?」


「えっと……そうなのですか?」


「ええ、そうですよ。うちの部署の仕事は地味です。同じような仕事を毎日毎日続けます。そんな中、コツコツと淡々と仕事をこなす貴方は、我が課にとっては欠かせませんから」


「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです」


「あれ?話と少し違うわね?なんか、自信がない子だって聞いてたけど……しっかりと聞き入れているし、雰囲気もそんな感じしないわね……」


「え?」


「どうやら、一皮向けたようでね。麗奈ちゃんのおかげかもしれません」


「良い女っていうのは、良い男を育てるっていうからね!麗奈ちゃん、元気にしてる?」


「ええ、最近は水戸君のおかげで柔らかくなってきましたし……」


「あら……?これは、今度話を聞くべきね……」


「えっと……」


 どうしよう……完全に置いてけぼりだ。

 一つわかるのは……自信か。

 松浦係長には、たくさん褒めて頂いた。

 確かに、そのおかげで少しはついたのかもしれない……。

 これは……ますます、恩返しをしなくてはな。


「あら、ごめんなさいね。麗奈ちゃんは新入社員の頃から知ってるから。色々大変だろうから、少し気にかけたり……田村君とは、年は違うけど同期なのよ。最初は、一緒の部門だった関係で仲が良いのよ」


「そうだったのですね……」


「ハハ、すまないね。こういう方なんだ。エネルギッシュというか……でも、悪い方じゃないから。しっかりと意見を言えば、話を聞いてくれる人だ。遠慮なくいうと良いよ」


「貴方が覇気がなさすぎるのよ!全く……それさえあれば、もっと上に行けたのに……」


「いえいえ、私にはこのくらいがちょうどいいのです。身の丈に合わない役職は、本人も部下も不幸ですから……」


 ……当たり前だが、課長にも色々あるんだろうなぁ……。

 そのうち、そういう話も聞いてみたいな。


「まあ、正しいわね……さて、では来週からということで良いかしら?」


「はい、よろしくお願いいたします」


 俺は次に周りを見渡してから、再び口を開く。


「皆さまも、よろしくお願いいたします」


 拍手が起こり、皆が笑顔を見せてくれる。

 ほっ……良かった。

 これからは、円滑なコミュニケーションを取ることが重要になってくるからな。


 最後に、お仕事の最中にお邪魔して申し訳ありませんと言い、部屋を出る。




「さあ、これでひとまず安心だね」


「課長のおかげですよ。ありがとうございます」


「いやいや、私は何もしてませんよ。では、私は私室に行きますね」


「わかりました。では、失礼します」




 課長を見送った後、俺は給湯室に入る。

 少し緊張したので、喉が渇いたからだ。


「フゥ……やっぱり、知らない人と話したり、見られるのは緊張するな」


「あれー?水戸先輩じゃないですかー?」


「森島さんか、休憩かい?」


「いえ、お茶を出そうかなーって。多分、このタイミングが良いと思うので」


「森島さんは、そういうところに気づくよね。いつも助かるよ。ありがとね」


「……水戸先輩くらいですよ。お茶出して礼を言う人……」


「いや、みんな思ってるんじゃないかな?それに、横山だって言うでしょ?」


「間違えました、毎回言うのは水戸先輩くらいですね。やっぱり、口に出して言ってもらえると嬉しいですからねー」


「まあ、そうだよね」


 ……なんか、最近の森島さんは話しやすい気がする。

 あれか……猫を被ってないからかな?

 言い方がサバサバしてるから、そっちのが楽だな。


「今、良からぬことを考えましたね?」


「い、いや……ハハ……」


「良いですよ、別に。水戸先輩の前で猫被っても仕方ないんで」


 ……これは、相手にされていないってことだな。

 ウンウン、変な勘違いをする前で良かったよ。


「楽な方でいいんじゃないか?疲れるしね」


「またそういうこと言いますか……あっ、電話番号教えてくださいよー」


「え?いや、それは……」


「水戸先輩には気を遣わなくていいので、会社の相談とかしたいんですよー」


「なるほど……」


 確かに、松浦係長とは違うけど大変そうだもんな。

 セクハラっぽいことも、上手く躱してはいるけど……。

 ストレスは溜まるだろうなぁ……。

 ……よし、せっかく俺を頼ってくれたんだ。

 ここは、先輩として応えるのが筋ってものだろう。


「ダメですかねー?」


「いや、良いよ。ただし……」


「わかってますよー。そんなに連絡もしないですから。いざって時に相談に乗ってくれたら嬉しいです」


「ああ、俺で良ければ」


「なんか、雰囲気変わりましたねー?」


「うん?そうかい?」


「うーん……自信がついた感じですかね……」


 ……鋭い子だな。


「まあ、指導も任されるようになったしさ。いつまでも、ウジウジしてるのも良くないかなってね」


「あっ、そういうことですか……ふーん……」


 その後、番号交換をする。


「……これで良いですね……さて、お湯が沸きましたね」


「手伝うよ」


「ありがとうございます」


 その後、お盆を持った森島さんは給湯室から出て行った。


「さて……俺も変わらないとな」


 まだまだ、過去を思い出すのは辛いが……。


 少しずつ、前に進んでいくしかないよな……。

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