女王の日常
ピピピッ!ピピピッ!と音が聞こえる……。
……と、止めないと……よし。
「んっ……朝ね……起きなきゃ……」
私の朝は、まずはストレッチから始まる。
正確には……前日から始まっているかな?
会社から帰ってきたら、きっちりと化粧をとり、メンテナンスをする。
夜の十一時前には必ず寝て、六時に起きるようにしている。
やっぱり、七時間は寝ないといけないと思う。
仕事や、身体にも影響が出ちゃうし……。
み、水戸君に、おばさんとか思われたらヤダし……。
アラサーにもなると、色々と大変なのです……。
「イタタ……身体が少し固いわね……」
うーん……ジムに行くお金はないし……。
ジョキングも始めようかしら……?
ウオーキングはしてるけど……筋トレとかも。
む、胸が垂れたらヤダもん……み、見せることあるかもだし……。
「な、何を言ってるの!?わ、私ったら……!」
で、でもでも……お付き合いしたら、そういうことするのよね……?
き、キスさえまだなのに……あぅぅ……想像できないよぉ〜!
「はっ!いけない!準備しなきゃ!」
水戸君との、朝の貴重な時間が……!
そう……私は元々、仕事のために早めに会社に行っていた。
でも……今はそれだけじゃない。
水戸君に挨拶をしても誰も気にしないし、人も少ないから話せることもあるし……。
「お昼ご飯は食べるようになったけど……足りないもの……」
もっと近づきたい……でも、引かれたくない……。
水戸君は真面目だから……迫ってくることもないし……。
迫ってくれて良いのに……キャ——!?よ、良くないわ!
「し、心臓が持ちそうにないもん……」
顔を洗い、下地を作る。
敢えてキツめのメイクをすることで、男の人から避けられるようにする……。
「ほんとは、可愛いメイクとかしたいんだけど……」
新入社員の頃は、そうだったんだけど……。
そうすると、男の人が誘ってくるし……。
女子からは嫌われるし……。
ハァ……可愛いメイクがしたい……。
「まつ毛を上げて、気が強く見えるように……口紅も濃いめの赤にして……前髪が下りてると幼く見えちゃうから、気持ちセンター分けで……きっちりと」
……可愛い髪型もしたいなぁ……。
ゆ、ゆるふわとか……でも、似合わないか……。
前髪だけでも下ろしたいけど……やめておこう……。
「ゴミ出しをして……朝ご飯はコンビニで……持ち物は……よし」
最後に、スーツに着替えて家を出る。
よーし!今日も頑張ろう!
会社に到着したら、モードを切り替えます。
……早速、嫌な顔に会ったわね。
営業部の部長である、目黒賢治。
年齢は、脂の乗った40代後半でやり手の人だ。
ただ……セクハラ親父にして、嫌味な人だ。
「おやおや、今日も早いですな」
「おはようございます、目黒部長。そちらも早いですね」
「ハハ!私の部署は忙しいのでね……貴女の部署とは違って。良いですよ、貴女は……雑用しかしない部署で。どんな手を使ったのか知りませんが……上役からも気に入られて……まあ、一つしかありませんかね」
「私のことは何を言われても構いませんが……部署の悪口はいただけませんね……我々は会社を支える部署だと誇りを持って仕事をしております……訂正を——」
私は強い意志を持って、目黒部長を睨みつけます……!
怖いけど……負けない……!
だって……みんな一生懸命に仕事してるもの……!
「クッ!?相変わらず、おっかない女だ。女は大人しく男に従っていれば良いものを……さっさと、結婚でもしたらどうですか?その身体を使えば……おっと、いけない。今は色々厳しい時代でしたね」
「……十分アウトだと思いますが?これは報告させて頂きますね」
「チッ!好きにしろ。俺には専務が付いているからな……では、失礼」
そう言い残し、去って行きました……。
結局、謝ってないし……しかも、さり気なく胸を見てたし……。
それにしても……こ、怖かったぁ〜……でも、言ってやったわ!
私の心は荒んでいましたが……。
それも……どこかに吹き飛びます!
「水戸君、おはようございます」
「松浦係長、おはようございます」
ウンウン、今日も水戸君は素敵です。
視線も下に行かないし、しっかりと目を見てくれる。
……少しくらい見ても良いんですよ……?
「今日の予定は……」
いけないいけない……水戸君は、真剣な表情で話してるんだから。
私も、上司として答えないと。
……ですが、そんな私は次の瞬間——凍りつきました。
森島さんが、水戸君にくっついていただけではなく……。
なんと……食事まで行ったというのです……!
そっからの記憶は曖昧です。
ただ、機械的に仕事をこなしていたと思う。
そして一区切りついたところで、私はトイレに行きます。
「ど、どうしよう?水戸君が……あんな可愛い子に勝てないよぉ……」
で、でも!まだ付き合ってるとかでは……ないよね?
水戸君は付き合ってる彼女はいないって言ってたし……。
「こ、こうなったら……今日、誘ってみよう……!」
どうしたら男の人が喜ぶとか、好きになってもらえるかわかんないけど……。
とりあえず——行動してみないとね!




