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華の子  作者: 烏合衆国
 side三年
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32/151

筒井眞緒③




     §




 宣言通り、御唯綺(ミユキ)のD組は勝利を修めた。

 ()-()

 D組の二回の得点は、ちなみにいずれも御唯綺だ。

()()ー。観てた観てた? どうだった?」御唯綺は観覧スペースへ来る。

「お疲れ。格好よかったよ」

「可愛かった?」

「いや可愛かったかどうかは解らんけど……」可愛いバスケって何?

「そっかー。ほら、(アサ)ちゃん試合でしょ? どけてどけて」と笛崎(フエサキ)をどかせてオレの左隣に座る御唯綺。やりたい放題だ。「がんばれー、(アサ)ちー」

 と、オレの右隣の叶織(ハオリ)が、袖を引っ張ってくる。そちらを向くと、叶織が身振り手振りで何かを伝えようとしている。御唯綺を小さく指差す。口の前で右手をパクパク。その手で何かを弾ませる動作をする。オレは大体理解。

「御唯綺?」

「ん、はい、え、何?」彼女は姿勢を正してこちらに向き直る。

「次の試合も出るの?」

「出るよー。バレーはC組とやる方しか出ないけど」

「メンバーってどんな感じ?」

「いや、同じなのは六条(ロクジョウ)ちゃんだけかな。後は剣道部部長の優雅(ユウガ)ちゃんと、あと、あの巧い子、バド部部長の──」

「御唯綺も巧かったよ」

「ほんと? 可愛かった?」

「ああ、可愛かったよ」よく解らないが肯定しておいた。オレの言葉に、御唯綺は、

「え、そ、そうかい?」とご機嫌のようだ。

「バド部部長といえば、歩舞(アユム)ね」叶織は盗み聞きを終え、そう呟く。

「よく知らんけど……強い?」

「全員体力お化け」とのことである。

 まあ、他人はそう評価しておきながら彼女自身も、新体力テストのシャトルランの記録は107回。十分に体力お化けの称号はくれてやれる(ちなみに女子は88回で10点)。身長は学年で叶織が一番高かったなのでそこはアドバンテージと考えられるが――D組にはそれが数名いる訳で。

「まほろと、話してくる」叶織はそう言って立ち上が──



「呼んだ? (ナツ)(ねえ)☆」



 ()()が後ろに立っていた。

「あ、ニノー」御唯綺が反応する。二ノ見は「ハロー」と返事をしてしゃがむ。「で、夏姐。作戦会議? 皆呼ぶ?」

「というより、御唯綺を他のトコに遣りましょう。ほら、眞緒?」

 二人がじーっとオレを見る。なんだかさっきからいいように使われているが、反抗する理由は見当たらなかったので、御唯綺に声を掛ける。

「御唯綺、あっちの方が人少ないから移ろうぜ」

「え? あ、うん!」オレと御唯綺はステージからぱっと飛び降りる。「……あ、夏姐様」

「何?」

「勝たせないよ、絶対」

「──望み臨むところ」

 オレは思わずヒューッと口笛を吹く。個人的には最高の会話(キャッチボール)である。

「行こーか、眞緒ー」御唯綺はそう言って先を歩いていく。オレは手を挙げて二人に挨拶し、その後を追う。




     §




 ()-()

 引き分けという結果で三回戦が終わり(笛崎ナイスファイト)、遂にA組とD組の対戦が始まろうとしていた。

 両チームがコートに入る。

「「お願いします!」」

 ジャンプボール。

 二ノ見と御唯綺が、向かい合う。

「夏姐様じゃないんだ。ナメられてる?」

「ナメてるのはそっち」

 ボールが高く上げられる。

 二人は同時にジャンプ──二ノ見が先にボールに達する。

 弾かれたボールを、叶織がキャッチ。即座にドリブルに移行。

 相手のチームの内、二人が叶織につき、他はゴール前に集まる。しかしディフェンスを躱す躱す。このまま一直線にゴールまで──と思いきや、途中で動きを止め、足下を確認。そしてシュートモーションへ。

 気の利いた審判が、指を三本立て高く掲げる。

 (バスケット)(ボール)が吸い込まれた。



 歓声。



「今年もノリノリじゃん、ハオ(ねえ)は?」後ろからそう声が掛かるので、振り向いた。

藤場(フジバ)

「よー」その男、藤場も同じバンドのメンバーで、御唯綺と同じD組。よく見ると、周りの人はD組だらけである。「いきなりスリーポイントとか。うちが負けたらどうしてくれるんだって」

「フン。叶織が勝つに決まってるだろ」オレはそう返す。

「ほー言うね。自分のことみたいに」

「…………」確かに。

 オレはまるで自分の功績かのように叶織を語っているところがあるかも知れない。

 叶織は頭がよくてできる人なので、他人から頼まれたことはしっかりこなすし、十分な結果を残してくれる。今回も、皆の『勝ちたい』という願いを遂行するだろう。

 独りで。

 誰が彼女の隣にいることができるだろう。オレも、笛崎も、昔から叶織に助けてもらってばかりだ。それでいて、当然のように何度も何度も、頼ってしまう。そんな彼女と、共に歩める存在。それは──やはり、遥樹(ハルキ)なのか。

「──少なくとも、オレではないな……」

「ん? 何て?」

 そういう意味では、遥樹は理想的かも知れない。彼は割と、自分のことは自分で何とかするし、周りを自主的に手伝うことも多い。叶織と共同作業をするとして、叶織に頼るのではなく(オレだったら絶対頼る、笛崎もきっとそうだ)、むしろ必要なくてもサポートするような奴だ。



 ゲームが動く。御唯綺がボールをもらって、リングに走る。

 叶織は真っ直ぐリング下へ向かう。──と、御唯綺が途中で動きを止め、

 ──スリーポイント──

 いや、弾いた。透かさず叶織はリバウンディングに移るが、それよりも速く、誰よりも早く榊岸(サカギシ)が反応し、ボールにリングをくぐらせる。

 ()-()

 御唯綺が外したことで一瞬盛り下がったムードが、再び燃え上がった。落ち込んでいる御唯綺に、チームメンバーが数人声を掛けゲームに戻る。

 今度はA組が攻める。


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