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華の子  作者: 烏合衆国
第一部 カルミア
2/150

茅野 焔華




     ○




 県立華園(ハナゾノ)高等学校は、県下で最もレベルの高い高校だ。入学する生徒は皆、夢と希望、慢心と自尊心、そして個性を持っている。いろいろな者がいる中、二年E組の教室では、華江(ハナエ )焔華(ホノカ )が昼食の弁当と問題集を囲んでいる。

「これは憶えた方がいい公式だよ」

「うん、確かに便利」卵焼きを頬張りながら華江は言う。二人は理系選択だが、彼女は数学が少し苦手で、こうして数学が得意な焔華に教わっているのだ。「あっ、これ先週の模試の大問3なのか」華江はファイルを漁り、目当てのものを探し当て机の上に出す。

「そ、その記憶力を勉強に生かせたらいいよね」

 焔華は優しく提言する。華江はピックに刺さったミニトマトを持ち上げて、

「そう、そうなんだよね」

 と返す。

「水泳みたいに、体で憶えられたらいいのに」

「体の部分とか場所とかに配置する記憶法ならあるけど……」

「え、何それ!」

「場所法っていう――あ、話ズレてる」焔華はハッとする。「便利だから、使えるようにした方がいいよ」

「丸暗記はダメ。導けるようにしなきゃ」

「ご高説ごもっともだからそうしようね」

 二人は笑い合い。

「ほのちゃん、食べ終わったら図書室行かない? 探してる本があって」

「数学は?」

「数学は、授業の時に」

 飽きたのだと、焔華は察する。「うん。いいよ」と言い、おにぎりの最後の一口を咀嚼する。飲み込むと、小さな弁当箱を華柄の布に包む。「行こっか」

 二人は立ち上がる。

 華江が自然に差し出した手を、焔華は自然に握った。




     ○




鹿山(カ ヤマ)先輩って、マオから見てどんな人?」

 良空(ラスク)眞緒(マオ)に尋ねた。

 彼と双子は、従兄弟妹(いとこ)の関係にある。家はそう離れておらず、休日に互いの家に遊びに行く程度には仲がいい。

「どんな人って」

 眞緒は困惑する。彼女が何を意図してその質問をしているのか。鹿()()とは、彼の友人、陸上部部長、鹿山遥樹(ハルキ )のことであろう。良空が陸上部に入ったのは知っているが、仲よくなろうとでもしているのか――

「まさか、遥樹のコトが――」

「え? 私は違うよ」眞緒が半ば核心を持って言ったことを、良空は笑顔で否定する。「マオ、先輩と仲いいんでしょ? 強いて言うなら興味」

「興味か……」彼は天井を仰ぐ。「まあ性格がいいよな、まず。あと身長が高い」

「マオ低身長だもんね」

「低身長はタスクだろ」

「僕はこれから伸びる」突然の飛び火に、事実従兄(いとこ)より5㎝程背が低い輔久(タスク)は返す。「あ、僕も訊きたいんだけど、華江(ハナエ )先輩って、マオから見てどんな人?」

「鹿山妹?」意外な名が出てきて、眞緒は首を傾げる。確かに彼は、友人の妹ということで、彼女と仲がいい。「まさか、鹿山妹のコトが――」

「いや、マオ、先輩と仲いいんでしょ。どういう話するのかとか、気になって」

「んー、遥樹もだけど、なんかあの兄妹(きょうだい)とは気が合うんだよな。波長が合うというか」

「?」

「?」

 双子は頭上に疑問符(ハテナ)を浮かべた。

「分かんない? いるだろ、そーいう奴」

「分かんないとは言わないけど」「感覚派」

「音楽やってるからな」眞緒は適当な言い訳をする。


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