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完結

「ルカはやっぱり生きていたんだ……」



 さらにしばらくたってから、コバルトがささやくように言った。



「ルカはやっぱりまだ生きていたんだよ!」



 自分に言い聞かせるようにはっきりと言うと、コバルトはまだぼんやりしているシャロの手をとって上下に激しく振った。



「本当にすごかった! まぶしくて何が起こっていたのかよく見えなかったけど、とにかく、あんなに間近で魔法が見れるなんて、本当に、僕は、僕は……」



 コバルトは感激のあまり涙を流しはじめた。



「よし! 僕は決めたよ!」



 彼はシャロの肩を強く叩いた。




「僕は魔法研究家になる! そして、いつか、ルカに行くんだ!」




 と力強く言った。




「だから、君も協力してくれ!」


「え、私?」




 今、目が覚めたかのようにシャロは驚いて目を見開いた。




「私はちょっと……」


「当然、報酬ははずむからさ!」




 シャロは一呼吸おいた。


 そして、表情を引き締めると、




「もちろんよ、コバルト」


 と言った。




「私もぜひ協力したいと思ってたの」




 胸に手を置き、彼女は心をこめてそう言った。




「そう言ってくれると思っていたよ」




 そして、二人はかたい握手を交わした。


 その時、空に花火があがった。


 西の空はすっかり茜色に染まっている。


 夏至祭の夜の部の合図だ。




「もうこんな時間か」




 美しい夕焼け空。薄紫色の雲がたなびき、まだ夢の中にいるようだ。




「今年の夏至祭はあまり参加できなかったな」




 残念そうにシャロが言った。


 花冠コンテストは誰が優勝しただろう? もっと食べたいものも飲みたいものもたくさんあったのに。




「何言ってるんだい。祭りはこれからじゃないか」




 森の向こうから音楽が聞こえてくる。


 握手をしたままの手に熱がこもる。


 シャロは思い出したように急にドキマギした。




「コバルト」


 


 その胸の高鳴りを押さえるように彼女は言った。




「さっきはありがとう。あなたのおかげでルカを助けることができたんだから」




 コバルトはにっこりと笑う。ぼさぼさの赤毛が夕陽を浴びてキラキラと輝いている。頬が熱くなったと感じたのは、きっと夕陽のせいだとシャロは思った。




「きっと僕たち良いコンビになれるね」


「人間と魔法使いなのに?」




 シャロはおどけて言う。




「そんなの関係ないさ」




 間髪入れずに否定をしたコバルトの言葉に胸がぽっと熱くなる。これもきっと夕陽のせい。




「君の方こそ人間の僕に親切にしてくれたじゃないか。いつも、魔法使いに弟子入りしようと思ってたずねて行っても門前払いだからね」




 人間のしかも貴族の青年が弟子になりたいとたずねてきたら、きっと誰でも驚いてしまうだろう。はじめて会ったときの調子を思い出してシャロは笑う。




「シャロ」




 コバルトが言う。


 そして、手を離したと思うと、その手をシャロに差し出した。




「魔法使いのお嬢さん、僕と踊ってくれる?」




 花火が打ち上がる。


 星屑のように夜空がキラキラと輝いた。




「喜んで」




 今度は素直に答えた。


 二人とも衣装は埃まみれ、花冠もどこかへ吹き飛ばされてしまった。だけど、そんなことちっとも気にならなかった。


 今までの夏至祭で一番長く感じた夜だった。


 そして、一番楽しい夜だった。


 その夜は何曲踊ったのか覚えていない。





 夏至祭の翌日、シャロは息苦しさに目を覚ました。


 目を開けると、ネラに羽交い締めにされていた。




「シャロ~」




 うっと反射的に鼻を押さえるくらい酒臭い。




「やっぱりあのアルグレーン伯爵の三男とできてたんだって?」




 ネラはまた目がすわっている。


 昨夜もずいぶん遅かったようだが、今朝までどうしていたのだろう。もしかすると、廊下で寝ていたのかもしれない。以前、失恋して酔いつぶれたときはそうだった。




「だから、そんなんじゃないんだって」


「もしかして、前から夜な夜な抜け出してたのも、逢引きしてたってわけなの?」


「え?」




 シャロは驚いてネラを見る。


 顔がむくんで、目も腫れている。やはり、大道芸人の彼とは上手く行かなかったのだろう。




「ネラ、知ってたの?」




 もちろん、夜に寮を抜け出していたことを、だ。逢引きではない。




「当然でしょ? ルームメイトなんだから、バレてないとでも思ってたの?」




 あんなにぐっすりと眠っていたのに。




「だから、素直に白状しなさいよ」




 と体を激しく揺すられる。




「……だから、コバルトとはなんでもないんだって、本当に」




 引きはがそうとしたが、逆に力強く羽交い絞めにされてしまった。これは、そうとう酔っ払っている。どれだけ飲んだのか聞くのも怖いくらいだ。酒屋を一軒潰したくらいじゃすんでいないかもしれない。




「シャロ、私はあなたの味方だから、寮を抜け出して逢引きしてたことは先生に内緒にしてあげる」


「だから違うって……人の話をちゃんと」


「かわりに私にも素敵な殿方を紹介して!」



 ネラはそう言うとシャロにしがみついたまま、おいおいと泣きはじめた。


 この小さな魔女を眠らせる魔法も知っていたらいいのに、とシャロは思った。


ここで完結です!ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回作も頑張るので、ブクマや☆で応援いただけると大変励みになります。

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