覇王
「はぁ……はぁ……はぁ…」
大量の魔力を消費し、息を切らすシャロ。
ありったけの魔力を先程の一撃につぎ込んだため、もはや【ファイアボール】の一発も放つことができないだろう。
しかし、これで【超越者】ゼロに勝利することができたのだ。これ以上の収穫はない。
勝利を確信し、ニヤリとした表情を浮かべるシャロ。
しかし、その顔は次の瞬間絶望へと変わった。
「私を倒せたと思っていたか? 可哀想に」
「──なんで……? なんでまだ──」
「お前は火球が爆発を起こしたと思っていたようだが、あれは私がわざと起こしたものだ。それによって直撃を免れたのだ」
「そんな!」
「手痛い代償だったぞ! お前達には私直々に手を下してやる。食らえ!」
そう言って【超越者】ゼロは右手を振り上げ、【魔法】を練り上げた。
ぼくは助太刀に入ろうかと考えたが、まだこの空間から抜け出すのに時間がかかりそうであった。
もうダメか。そう考えたときであった。
「【超越者】ゼロ、私が相手になろう」
「お前は……!」
そう言ってシャロ達の前に立ちはだかる者がいた。
そう、【覇王】であった。
「お前は私を復活させたものであったな?」
「そうだ。そしてお前を倒し、これからお前を従わせる者でもある」
「舐めた口を聞きおって、いいだろうお前から相手してやる」
そういって【超越者】ゼロの攻撃の対象は、シャロから【覇王】にうつった。
「辞めろ! 父さん! そいつは敵う相手ではない、一人で戦うなんて無茶だ!」
ぼくは届かない声を叫んだ。
しかし、【覇王】でありぼくの父には自分の悲願達成のための欲望しか目の前から見えていなかった。
「くらえ! 【ヘブンズ・ゲート】」
【覇王】は高度な【魔術】を【超越者】ゼロに向かって放った。
「甘いな【ジャッジメント・ソード】」
そう言って、【覇王】の強大な一撃を軽くいなす【超越者】ゼロ。
やはり先程戦闘を行ったばかりで、消耗しているのだろうか?
【覇王】の攻撃の手が緩かった。
「ふっ、【覇王】などと名乗ってはいるが所詮はこの程度。やはり人間は弱いな」
「甘いのお前の方だ、【超越者】ゼロ! 【ゴッドスマッシュ】」
そういってなんと【覇王】は続けざまに高度な【スキル】である【ゴッドスマッシュ】を【超越者】に向かって放った。
「なに!」
そうか、【覇王】は【魔術】だけでなく【スキル】も使うことができる。
その不意をついて、【覇王】は二つの異能で【超越者】ゼロを攻略するつもりなのだ。
「グッ、グアアアアアアア」
不意をつかれて、【覇王】の一撃をモロにくらって体勢を崩す【超越者】ゼロ。
「はぁ……はぁ……どうだ。参ったか?」
その場に倒れ込んだ【超越者】ゼロを上から見下ろす【覇王】。
やはり先程の戦闘でのダメージと、二つの異能を同時に使ったことで【覇王】も消耗しているようだ。
しかし、不本意な形とはいえ、【超越者】ゼロを倒せたかもしれない。
そして更に喜ばしいことに、この白い空間の終わりが見えてきた。
ぼくはみんなの傷を癒やすため、この空間を走った。




