魔術師
「お前は……ブラック?」
コバルトは、いきなり乱入してきたブラックに困惑の声をあげた。
「私だけじゃない。ブロンドもいる」
「大丈夫かしら? まあちゃちゃっと倒して治癒してあげるからそこでじっとしてて」
「お前達……! 礼は言わんぞ」
「礼なんて必要ないさ。私はただ自分がやってしまった罪を少しでも償いたい。ただそれだけのことだ」
「……ふん」
そう言ってコバルトは顔を背けて、そっぽを向いた。
かつての敵であったブラックに助けられるのは、彼にとっては屈辱でもあるのであろう。
「次はお前達が相手か? 見たところそちらの女は【聖女】のようだな? 少しは楽しませてもらえそうだな」
「私はあなたのことを知らないけれど、一つだけわかることがある。私はあなたを止めるために今ここにいるのだと」
「私を止める? 果たしてそんなことができるかな? かかってこい! 私の名は【超越者】ゼロ。すべての異能を極めし者だ」
【超越者】ゼロが自分の名前を名乗った瞬間に、戦いは始まった。
ブラックとブロンドは、近接戦闘は危険と悟って一旦距離をとって戦うことにした。
それを見て【超越者】ゼロは、つまらなそうに感想を述べた。
「なんだ? 意気込んで臨んできた割りにはそんな逃げ腰か。これではつまらぬな」
「あなたこそそんな安い挑発をして。随分と戦いが好きなのね」
それを聞いて【超越者】ゼロは不敵な笑みを浮かべた。
「当たり前だ。私の極めた奥義を見せたい! それだけが私の生き甲斐だ。しかしお前達はどうだ? 小賢しい戦い方で、極められていない力を私にぶつけてくる。
これをつまらないと言って他になんという? もういい、お前達が近づかないのであれば私が距離をつめるまで」
そう言って痺れを切らした【超越者】ゼロは、物凄い超スピードで二人に迫ってきた。
二人は、【魔術】が得意とする防御の【魔術】を展開した。
「【ブラック・アーマー】」
「【セイントドレス】」
二人はそう唱えて【魔術】を展開しきろうとしかけていた。
それに対し、【超越者】ゼロは何も【魔術】を展開していない。
これならば攻撃を凌ぐことができる。
そして戦闘のテンポをこちらに持っていくことができる。
ぼくは「よしっ」と小声で呟いた時であった。
「ふんっ」
「な!」
ぼくはまたもや信じられないものを見た。
なんと防御の【魔術】を唱えるよりも早く【超越者】ゼロが、二人に攻撃を食らわせていたのだ。
そしてゆっくりとこう呟いた。
「【ジャッジメント・ソード】」
「馬鹿な! 無詠唱で【魔術】を……? そんなことがありえるのか……!」
そう言ってブラックとブロンドはその場に倒れ込んだ。
本来【魔術】は、詠唱を必要とするものだが【超越者】ゼロにそんな常識は通用しなかった。
やはりこいつは化け物だ。
ぼくは一人一人とぼくの仲間達がやられていく光景に絶望した。




