危機
ぼく達は【覇王】を倒せたものだとすっかり喜びに浸っていた。
しかし、突然シャロが大声をあげた。
「待って! 倒したにしてはなんだか手応えがない。まだ【覇王】は息をしている!」
「なんだって!」
その時ぼく達にまた緊張が走った。
(どういうことだ? たしかにコバルトは【覇王】の【回避】を妨害したし、シャロの【ファイア・プリズン】はきっちりと【覇王】を直撃した。
それなのにまだ仕留めきれていないだなんて! 奴は無敵なのか?)
こういった非常事態にはひとりひとりがバラバラでいるのは危険だ。
ひとりひとりの戦力がバラけてしまうと、それこそ敵の思うつぼだからだ。
ぼくは人纏まりになるように、号令をかけた。
「みんな! バラバラにいたら危ない。とにかくフロアの中央に一旦集まるんだ!」
「わ、わかった!」
ぼく達は、急ぎ足でフロアの中央へと固まって【覇王】が安易に手出しできないよう守りの陣形をとった。
それと同時に今それぞれの体力や、魔力の状況を聞いた。
「誰かさっきの戦闘で傷ついた人はいるか?」
それに対して皆首を横に振る。どうやら皆無事で済んだようだ。
「それじゃあ次に聞きたいけどシャロ、あと魔力はどれくらい残っている?」
「それが……しばらくは【魔法】を使えないぐらい魔力を消費してしまいましたの」
「なんだって! でも魔法の世界では最上級魔法だってもっと連発できていたじゃないか」
シャロは、魔法の世界では最上級魔法を連発できる最強の魔法使いだということは知られていた。
しかし今日シャロは、最上級魔法をそんなには撃っていないはずだ。
それなのにもうエネルギー切れとはどういうことだろう?
その疑問に対して、ブラックがこんな意見を述べた。
「おそらく魔術の世界と魔法の世界では、何かしらのエネルギーを構成するものが違うからだろう」
「え? どういうこと?」
「さっき覇王が言っていただろう? 世界は元々一つの世界であったが、それが三つに分かれてしまったのだと」
「ああ。でもあれは覇王が言っている妄想に近いものだ。何の証拠もない」
「まあ落ち着いて聞け。それがもし事実だとすれば、おそらく魔術の世界では魔法の世界と比べて魔法の源となるものが少ない」
「……つまり?」
「魔術に対してはたしかに魔法を有効かもしれないが、この世界では連発ができないということだ」
ここにきて、ぼく達はミスをしでかしたことに気がついてしまった。
貴重な資源であった魔力を連発し、敵の親玉を打ち損じてしまった。
これは大変苦しい状況だ。そして更に追い打ちをかけるように危機は続いた。
「ガハッ!」
突然シャロが倒れたのである。
「シャロ! どうした?」
それに続いて、ぼくも何者からか攻撃を受ける気配を感じた。
「危ない!【回避】」
ぼくは危機一髪のところで、攻撃を避けた。
そしてその攻撃を放ってきた者の姿が現れた。
「……! 【覇王】やはり生きていたのか」
「フハハハハ、そうだ。先程お前達が倒したと思いこんだものは、私の光の【魔術】が生み出した幻影だ。私は倒れておらん」
やはり【覇王】一筋縄ではいかない相手だ。今まで戦ってきた相手の中でも一番強い。
ぼくは冷や汗をかいた。




