決戦
「覇王! お前がぼくの父親だろうと関係ない! その狂った計画をぼくが止めてみせる」
そう言ってぼくは魔力をひたすらに込めた【ファイアボール】を【覇王】に向かって放った。
それを見て【覇王】は余裕の表情で、ぼくの攻撃を薙ぎ払った。
「ふん、ままごと程度の【ファイアボール】では、傷一つつけることはできないだろうな」
「クソッ……!」
さすがに【覇王】は元々魔法の世界にいた者だ。
ぼく程度の【ファイアボール】ぐらいは見慣れている。
未熟な攻撃なら対処法を心得ている。
だが、それでいい。
ぼくの攻撃はあくまで囮だ。
本命の攻撃はこの次に待ち受けている。
「ならこれはどうかしら?【ファイア・プリズン】」
そう言って魔法の世界で一番腕の立つ魔法使いであるシャロは、最大火力の魔法攻撃【ファイア・プリズン】を【覇王】に向かって放った。
これをモロに喰らえばいくら【覇王】といえどタダでは済まないはずだ。
そして炎が、覇王の体を包んだところをぼくはしっかりと見た。
これで勝負は決した。そうぼくは思った。
「やったのか……? 近づいて確かめてみようか」
「……ええ」
そう言ってぼくはシャロと目をあわせて、【覇王】の状態を確認しにいった。
「……どう?」
シャロは遠くからぼくに声をかける。
モクモクとあがっている黒煙が、止むとぼくは驚いて声をあげた。
「みんな逃げろ! 【覇王】はまだ生きている! やつは【ファイア・プリズン】から逃げ出しているぞ!」
そう言った瞬間、後ろから悲鳴が聞こえた。
「キャアアアア」
ぼくは後ろを向いて事態のまずさに気がついた。
覇王は驚くべきスピードで【ファイア・プリズン】から抜け出してシャロに襲いかかっていたのだ。
「な! どうやってあの火炎の中から抜け出したんだ!」
ぼくは思ったままの感情を声を大にして叫んだ。
「フハハハ、可愛そうなやつだな。【スキル】を使えるのはお前だけだと思っていたのか? 甘い、甘い、甘い、甘い。私も使えるのだよ!」
「な、なに! クソッ!」
なんと【覇王】は、ぼくと同じく【スキル】を使えるのだという。
おそらくは【ファイア・プリズン】が唱えられたと同時に【スキル】である【回避】を使ってその場から脱出していたのであろう。
そしてぼくはあることに合点がいった。
「もしかしてその【スキル】の力を使って【魔王】を自分の配下に置いたのか?」
「その通りだよ。【魔王】といえど、私の【スキル】の前では赤子同然だったよ」
ぼく達が考えていた、スキルの世界の住人が護衛についているという想像は全く違った。
なんと【覇王】は、【魔術】と【スキル】を同時に扱うことができるというのだ。
この厄介な相手をどう攻略したらいいのだろう。
ぼくは頭を悩ませた。




