覇王
ぼく達はブラックの誘導のもと覇王のいる部屋に向かってまた歩き出した。
時折遠回りしているようにも思えるこの迷路のような廊下の進み方に対してぼくが疑問を投げかけた。
「ねえブラック、本当にこっちであっているの? なんだか遠回りしているように感じるのだけれど」
「なんだ疑っているのか? まあそれも無理はないか。たしかに遠回りしていることに間違いはない」
「え? ほら、やっぱり遠回りしているじゃん!」
「落ち着け。確かに遠回りはしているが、これは敵に遭遇する可能性の低い道を選んでいるからそうなっているだけだ」
「あ、なるほど」
ぼくは納得して、胸をなでおろした。
たしかにぼく達が今いるのは、敵の本拠地そのものだ。
もし敵に見つかりでもしたら、囲まれてひとたまりもないだろう。
こうやって、遠回りでも敵に遭遇しないよう安全に進むのが結局はよいのであろう。
そんな風にぼく達は時には物陰に隠れて敵をやり過ごしたり、時には早足で敵に見つからないよう廊下を駆け抜けたりして
進んでいった。
ぼく達が作戦会議を開いてからおよそ二時間を過ぎたあたりであった。
一際大きい扉の前へと、ぼく達はたどり着いた。
「もしかしてここが……」
「ああ」
ブラックはコクリと頷いた。
そうこここそが、ぼく達の冒険の終着地点だ。
そう考えるとぼくは、緊張で胸が張り裂けそうになった。
だけれども怯えて引き下がるわけにはいかない。
自分を奮い立たせる目的も兼ねて、皆の決意を聞いた。
「皆! これからぼく達は、覇王と戦うことになる。困難を極める戦いになるだろうけれど覚悟はできているか!」
「もちろんできているさ!」
決意を問いただしてみたが、皆の決意は変わらないようであった。
それを聞いたぼくは安心し、覇王の部屋につながる扉に手をかけた。
大きな扉は、想像以上に重く感じた。
「グッ……!」
それを見た仲間達は、さらに力を加えて扉を開けようとした。
しかしそれでも、扉は開かなかった。
「クソッ! 何か【魔術】で扉が封印してあるのか?」
「いや、そんなはずはないずだ」
それを後ろから見ていたシャロは、拍子抜けした顔をしてこう呟いた。
「あの。もしかしたらだけれど、その扉って押すんじゃなくて引くんじゃないのかしら?」
「え?」
そう言ってシャロが扉を引くと、いともたやすく扉が開いた。
「アチャー」
「もう、何やっているのやら……」
ぼくは気を取り直して、再び覇王の部屋へと入っていった。
中は、向こうが見えない程広い部屋が広がっておりその中央には、一つポツンと椅子が存在し誰かが座っていることがわかった。
ぼくはそれが覇王だと瞬時に察し、走って近寄った。
「覇王! ぼくはお前を許さない!」
「待て! 安易に近づくなと言っただろう」
ブラックが静止するが、ぼくは目の前の敵への怒りがおさまらずただ必死に突っ込んでいった。
ぼくを追いかけてブラック、コバルト等が続く。
シャロ等の魔法を使えるもの達は、物陰に隠れながらゆっくりと近づいていった。
息をからしながら、覇王の前へとぼくは辿り着いた。
近づいてわかったが、覇王はぼくらの目線と反対側に座っており、部屋の向こう側に広がる何かを眺めていた。
(何を眺めているんだ……? 薄暗くてよく見えない)
そんなことを考えていると、覇王はぼくに気がついたようであり椅子から立ち上がりこちらへゆっくりと歩いてきてこう言った。
「ルカか。久しぶりだな」
その言葉を聞いて、小さい頃の記憶が蘇ってきた。




