作戦
「で、どうするんだい? 具体的にどう覇王を攻略するんだい?」
ぼくはブラックに具体的な方策を問いかけた。
「ここは基本に忠実に行く。覇王といえど【魔術】は基本的に【魔法】に弱いことに変わりはないはずだ。【魔法】が使えるものは手を挙げてみろ」
ブラックの提案はとてもシンプルなものであった。
覇王の【魔術】を叩くには、こちらは【魔法】で対抗する。ただそれだけのシンプルなものである。
ちょっと拍子抜けする程にシンプルな解決法であったので、ぼくは心配になってブラックに質問を返す。
「なるほど、たしかに【魔術】を【魔法】で押し込むというのはとても合理的だと思う。だけれどそんな単純な策で本当に覇王を倒せるのかな?」
「……一つの仮説がある」
ブラックは急に神妙な顔をして、黙りこくって言った。
「仮説?」
「ああ、そうだ。知っての通り覇王は、魔法の世界で魔王を操って魔法の世界を侵略しようとしていた」
「それは知っているけれど、それがどうしたんだい?」
ぼくはブラックが何を言いたいのかがわからず早く結論を求めた。
「本当ならば、魔王を操らなくても覇王ほどの力があれば強引に魔法の世界を侵略できたはずだ」
「確かに。それができなかったということは覇王は、魔法にやはり弱いってこと?」
「そうだ。俺はそう考えた、どう思う?」
ぼくはブラックの話を聞いて、少し考えこんだ。
確かにあの教官以上の実力を持った覇王ならば、多少の不利程度ならば魔法の世界を侵略することは容易かったはずだ。
ブラックの話には一理あると感じ、同意しようとした。
しかしその次の瞬間別のことが思い浮かんだ。
「確かに覇王は魔法に弱いのかもというのはなんとなくわかった。だけれどもそれならどうやって魔王を裏から操ることができたんだい?」
「む……それは確かに」
ぼくは魔王の死に際の台詞を思い出しながら考えた。
(確か魔王は、強大な存在が別にいると言っていた。それが覇王なのは間違いない。だけれど覇王の言動には矛盾が多い)
ぼくは一旦考えを整理することにした。
覇王は、魔法の世界を直接侵略することができなかった。
だから魔王を使って、間接的に魔法の世界を侵略しようとした。
魔王は覇王のことを恐れていた。つまり覇王は魔王よりも強い存在のはずだ。
どうも覇王のやっていることは辻褄が合わずわからなかった。
そこではぼくはとあることを思いついた。
「もしかしてスキルの世界から人を拐って、魔王を襲わせた……とか?」
「ありえるな」
ブラックは、ぼくの意見を肯定した。これは手応えがありそうだ。
「なら、そのスキルの世界から拐った人物をきっと護衛として覇王はつけているはずだ。そう考えると、安易に魔法使いが前に出るのは危険だ」
「確かに。ならどうする?」
「ぼくは少しとはいえ魔法が使える。ぼくが囮になってその護衛を誘い出す。それをブラック達が倒してくれ。その後シャロが覇王を攻撃してくれればいい」
「なるほど、それならばうまくやれそうだ」
ぼくはブラックからのお墨付きを得て、満足気になった。
「よし。作戦は決まった! 休憩は済んだだろ? そろそろ出発することにしよう」
「わかった」
ぼく達は、覇王討伐に向けて意気込んで残り半分の迷路を抜けることにした。




