教官
「ブロンド、ブラック。これからぼく達は敵陣に突っ込んでいく。ぼくが合図したら適宜自分の持てる力を出してほしい」
「わかった。それでどういう風に戦えばいい?」
「ブラックとブロンドも、持てる力をすべて出し切ってほしい。ぼくは後方支援を行いつつ、皆が集結するのを待つ」
「わかった、それでいこう」
ぼく達は顔を見つめあわせて、頷き合い作戦を実行に移すことにした。
「行くぞ!」
ぼくがそう叫ぶと同時に姿を現して、目の前の新米兵士達に突っ込んでいった。
「なに!?」
いきなり姿を現したことで不意を突かれた兵士達は、おののきその場に一瞬立ち尽くした。
その一瞬の隙を見逃さずにぼく達は、立ち尽くしてしまった兵士をバタバタとなぎ倒していった。
「コラ! なにをやっているお前達! 戦え! 戦うんだ!」
教官と思わしき人物は、後ろから喝を入れるがそれよりもぼく達の勢いが勝る。
数十人といた新米兵士達は、バタバタと倒されていき先程の半分ほどの数までに減ってしまった。
それに激しい怒りを覚えた教官は、大声をあげた。
「貴様らぁ! それでも誇り高き覇王様の兵士達の姿か! 話にならん。私直々に貴様らに手本を見せてやる」
教官と呼ばれる老齢の男は、新米兵士達を押しのけてぼく達の目の前へとやってきた。
「おい、ブラック。あの男は、自分からは直接戦わないんじゃんかったのか?」
「落ち着け、それはときと場合による。逆に考えろ教官が直接戦わないといけないほどやつらは追い詰められているということだ」
「な、なるほど」
ブラックの逆転の発想に確かにとぼくは心の中で頷いた。
そうだ、教官が出てきたからと言ってなんということはない。今勢いがあるのは圧倒的にぼく達の方だ。
それにブラックとブロンドは、教官から指導を受けていたはずだ。彼がどんな【魔術】を使うのかは、知っているはずだ。
「ねえブラック、ブロンド。あの教官ってどれくらい強いの? 案外威張り散らしているだけで、弱いなんてことは?」
「ない」
二人は揃って、首を横に振った。
「あの教官が使う【魔術】は、主に氷系に分類されるものだ。安易に近づくとカチコチに凍らされてしまうぞ」
「わかった。それで二人はどうやってあの教官を倒したんだい?」
「いや私自身あの教官と試合を行ったことはあるが、一度も勝つことはできなかった。それはブロンドも同じだ。
とにかく長年の経験と知識が尋常じゃない。相当腕が立つ、三対一で戦っても勝てるかどうか怪しいところだ」
ブラックは淡々と自分たちの置かれた状況のまずさを語った。
「そうか、わかった。でもぼく達には戦わないと行けない理由がある。だから勇気を出して戦うんだ!」
「そのとおりだ」
ブラックとブロンドははにかんで、ぼくの意見に賛成した。
そう、ぼく達には戦う理由がある。失った仲間達を取り戻すため、【覇王】の三界侵略を阻止するため。
それに比べてあの教官にはこれといった戦う理由がない。
それは後々に響いてくるほど大きな要因だとぼくは考えた。
ともかくぼく達は、あの教官の強大な【魔術】に立ち向かいながら勝つしかないのだ。
「どうした? 【覇王】様に歯向かう不届き者達め! 命をかけてかかってこい!」
教官はどっしりと腰を落とした姿勢で、【魔術】を展開しぼく達を迎えうとうとしてきた。
それに対しぼく達も、自分達が持てる最大限の【魔術】を展開した。
「さあ来い!」
「よし行くぞ!」
その言葉と同時にぼく達と教官の激しい戦いが始まった。




