諍い
(頼む……間に合ってくれ)
ぼくは、ぶるぶると震えながら仲間の助けが来ないかを待っていた。
「落ち着け、ルカ。もう少しで助けが来る」
「わ、わかってる。ただ……ちょっと」
「ちょっと。どうした?」
「リーダーなのにこんな姿を晒してしまうなんて情けないなって」
「はぁ……」
呆れた顔でブラックは、溜め息をついた。
何かまずいことを言ってしまったか? 一体どうしたのだろうか。
「お前がそれを言うか。今更お前がそんなことを言い出すか」
「え、それってどういうこと?」
ぼくはキョトンとした顔で、ブラックの顔を見た。
確かにぼくはリーダーとして、少しばかり力量が足りていない自覚はある。
だけれども、何も呆れられるようなことはないはずだ。
ぼくは少しばかり怒った表情で、ブラックに問いただした。
「ちょっと流石に酷くないか? ぼくだって立派とまではいかないにしても、真面目にはリーダーをやっているつもりだけれど」
「つもりだけだろ? 私も総司令官としてこのパーティよりも多くの人を率いてきた経験がある。その上で言わせてもらうが、お前はまだ半人前だ」
ぼくはブラックに率直な意見を言われて、少しばかり動揺してしまった。
自分でできていないとわかってはいても、いざ実際にダメと言われると結構精神的に来るものがある。
ぼくは露骨に落ち込んだ様子をブラックに見せた。
「はぁ……そういうところを含めて、お前はまだリーダーに向いていない。もっとどっしり構えていればいいんだよ」
そう言われてぼくはハッとした。そうか、これはブラックなりの不器用な優しさだったのかと。
そんな問答を繰り返していたところに、後ろから声をかけられた。
「なにをやっているんですの?」
その声を聞いて一瞬ドキりとしたが、声の主の顔を見てぼくはホッと胸を撫で下ろした。
やって来たのは、ぼくとブラックの次に急ぎ足で走っていたブロンドだったからだ。
「いや、ちょっとお互いの友情を深めあっていたというか、なんというか」
「はぁ……」
ぼくのとってつけたかのような言い訳に、呆れた表情を示すブラック。
実際間違ってはいないのだが、やはりぼくの言い訳には無理がある。
ぼくの言い訳を怪しんで、ブロンドはキョロキョロとぼくの顔を見てきた。
これでは少し気まずい雰囲気がある。ぼくは必死に取り繕うと話題転換を試みた。
「まあ、とりあえず一旦この話は置いておくとして、ブラックはあの若者達の強さをどう見る?」
「随分唐突な話題転換だな。まあ確かにここで縮こまっているよりかは、打って出ることも考えたほうがよいだろうな。そうだな、ザッと見た感じ全員新米の兵士と言ったところだろうな。ポテンシャルは中々にあると思うが、本部にずっといるだけあって実戦経験には乏しい。この三人で十分に戦えるだろうな」
「なるほど。でもぼくはあの真ん中の老年の男が気になるんだけれど、何か情報はないか?」
「あの男は、私がまだ戦場に出る前の訓練生だった頃からいるベテランの教官だ。あの若者達を一斉に相手するよりも、厄介だろうな。ただ……」
「ただ?」
「やつは、自分が功績をあげるよりも生徒を育成することに精をあげているやつだ。きっと戦いに乱入してくることはないだろう」
「本当か! ならこの三人でも十分に戦えるってことか?」
「まぁ……そういうことになるな」
ぼくは、ブラックの見解を聞いてニヤりと笑った。
やはりぼくはあれこれ策を立てて、考えごとをするよりも自ら戦いの場に突っ込んでいって活路を開くほうが向いている。
ようやくぼくの本領を見せられる機会がやってきたわけだ。
「よし、じゃあみんなを待つ間ぼく達から奇襲を仕掛けよう」
「ふっ、お前らしいな」
そう言ったブラックの口元はほころんでいた。やはり彼も前に出て戦いたいタイプのようだ。
作戦は決まった、後はいよいよ戦いに挑むだけだ。




