伏兵
塔のてっぺんにつくと、そこにはだだっ広い空き地があった。
そしてそこの真ん中には一人の老年の男が立っておりその後ろには、数十人の若者が隊列をなしていた。
「ようこそ、反逆者ルカ殿」
「これは一体……?」
老年の男が、いの一番に喋りだした。そして彼はぼくに挨拶をした後振り向いてこう言い放った。
「貴様らに告ぐ! 今から反逆者狩りを行う。ここで功績を立てた者には覇王様からのある名誉と、出世が約束される。励んで頑張るように」
「はっ!」
そう言って若者達は、ぼくの方を向いて一斉に睨みつけてきた。
「ひいっ……!」
ぼくは、凄んだ彼らに怯えて一瞬身動きができなくなってしまった。
それを見て、老年の男は若者達に一斉に号令を送った。
「敵は我々に恐れをなしたぞ! かかれ!」
そう言って、若者達はぼくへと飛びかかってきた。
その凄みに負けて、ぼくはその場に立ち尽くしてしまっていた。
「くらいなさい! 【ファイアドレス】」
少女の年齢と思われる兵士が、魔術を纏ってぼくへと襲いかかってきた。
(まずい……! これだけの数の兵士に一斉に襲われたらやられてしまう)
ぼくは、まずいと頭ではわかっていながらも体がすくんで動けなくなってしまっていた。
そして次の瞬間気づいたときには、ぼくは思い切り体を弾き飛ばされていた。
「うわああああ!」
ぼくはどこからか攻撃を受け、吹き飛ばされてしまった。
「いって……」
おそらく強力な魔術の一撃を受けたのだろう。そう決めつけてぼくはとっさに魔法【回復】を唱えようとした時だった。
「なにをやっている。間抜けが」
そう罵ってくる者の顔を見上げた。そしてその次の瞬間ぼくは、何が起きたかを察した。
「フラック……! 助かったよ」
「まったく。離れ過ぎだ馬鹿たれが。お前は私から離れ過ぎだ」
何が起こったか? それを説明する前にまずぼくが犯したミスについて説明しなければならない。
ぼくが犯したミスとは、それはすなわち急いで走りすぎたということだ。
そのせいで、ぼくはブラックの魔術【隠密】の外へと出てしまったのだ。
それによって、ぼくは魔術師達から見える形になり攻撃を受けてしまったというわけだ。
それがぼくの犯したミスだ。
そして、魔術師達に襲われたぼくを後ろから追いつてきたブラックが、突き飛ばしてくれて攻撃を躱せたというわけだ。
それだけではない。ブラックが駆けつてくれたことによりぼくは、魔術【隠密】の影響を受けるようになった。
それにより、ぼくは魔術師達から見を隠せるようになった。
「なんだ? なにが起きた!? さっきまでいたはずの反逆者ルカがいないぞ」
ぼくが急に消えてことにより、魔術師達は驚いて辺りをキョロキョロと見渡した。
それに対して、老年の男は怒りをあらわにした。
「なにを手こずっている! これぐらいのこと想定の範囲内だろうが! おそらくこの近くにまだ身を潜めて隠れているはずだ。草の根を分けて探せ!」
「は、はっ!」
そう言って若者達はぼくの捜索を始めた。
それに慌てふためくぼく。だが、それに対しブラックは「落ち着け」と一言。
「わ、わかった。落ち着いたよ」
「ああ、なら大丈夫だ。いいかよく聞け? もう少しすればこの東の塔を、仲間達が登りきるはずだ。そうすればこれだけの数がいようとどういうことはない」
ぼくはゴクリと息を呑んで、なるべく落ち着きを取り戻そうとした。
「そうだ、お前がリーダーなんだから、ゆっくりと落ち着いて行動するようにしろ」
「わ、わかった」
そう言いながらぼく達はゆっくりと歩いて、階段を降りていった。
(頼む……! なるべく早く追いついてくれ)
若者達に見つかるか、仲間達が追いつくか時間との戦いが始まった。




