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迷路

 ぼく達は覇王城を走り回り、東の塔へと向かった。


 覇王城を走り回って、ぼく達はその広さに驚いた。


 走っても走っても、周りの景色が変わることなく同じような廊下を走り回っていた。


「はぁ……はぁ……、ねえ本当にこっちであっているの?」

「ええ、間違いありませんわ」

「間違いない」

「わかった、二人がそう言うなら信じるよ」


 ブラックとブロンドがぼくの問いかけに対して答える。


 ぼくは最初に力を入れて走りすぎてしまったせいで、後半バテが発生してしまっていた。


 けれども仲間を救うという使命感で、ぼくは走り続けた。


「こっちだ」


 ブラックは、二つに別れた曲がり角で左を選択した。


「え、それ本当にあってる? 方角的には逆だよ?」

「覇王城は、敵への侵略に備えて複雑な迷路のような構造になっている。だから、たまにあべこべの方向に進むこともある」

「な、なるほど」


 ぼくはブラックの解説を聞いて納得した。今この時点で言えばブラックの背中がとても大きく見えた。


 とりあえず覇王城を庭のように知り尽くしている二人に任せるのが、ここは適切だろう。


 ぼくは速度を落として、二人の後をついて行った。


 しかし突然二人は急に速度を落とした。


「え? 急にどうしたの?」

「しっ、少し静かにしろ」


 ブラックは、ぼくの口に手をあて音を立てないように言った。


「え? 一体どうして?」


 ぼくは小声で、ブラックに尋ねた。


「この近くには、兵士の宿舎がある。足音でバレるかもしれん」

「なるほど」


 ぼく達はブラックの指示に従って、ゆっくりと歩き出すことにした。


 なるべく足音を立てずに、ゆっくりと歩くというのも案外疲れるものであった。


 いわゆる差足、忍び足というゆっくりとした歩き方も走るのは別な方向に疲れる。


 走るという行為は、肉体的な疲労をもたらす。


 しかし、今ぼく達がやっている歩き方というものは、精神的な疲労をもたらした。


 やはり敵陣の中を進むというのは危険と隣合わせだ。


 この感覚は、魔王城を攻略する時以来の感覚だ。


 十分程物音を経てずに進んでいくと、急にブラックは立ち止まった。


 それに驚いて、ぼく達も足を止めた。


「どうしたの? ブラック」

「おかしいな」

「え? なにが?」

「おかしいとは思わないか? 今奴らは敵が自分達の城の中に潜り込まれているという状態なわけだ。それなのに今まで敵兵の見回りに何人出くわした?」


 ぼくは今までの記憶を思い返してみた。


「うーんとたぶんだけれども十人ぐらいかな? 確かに見回りの数が少ないような」

「そう思うだろ? 覇王のことだ。何かの考えがあってこういう配置にしているように思える」

「確かに……奴らのことだ。何の考えもないとは考え辛い」


 ぼくはブラックの考えに同意した。目の前にいる強大な敵よりも、目に見えない敵の方が恐ろしく感じる。


 とにかく用心することしかできないが、ぼく達は先を急いだ。


「こっちだ」


 ブラックの指示の元、ぼくは曲がり角を曲がった。


 すると、やっと長い長い廊下を抜け巨大な塔が見えてきた。


「もしかして……」

「そう、あれが東の塔だ。おそらくあそこにお前の仲間が閉じ込められている」


 ぼくは東の塔を見上げ、そのあまりの高さに驚いた。


 その塔はまさに、人を閉じ込めるための牢屋としてうってつけの場所だ。


「よし、なら急いで助けに行かなきゃ」


 ぼくは思わず走り出していた。


「おい、待て。敵も当然あそこを襲うことは想定しているはずだ。無闇に走るんじゃない」


 そう言ったブラックの制止を振り切り、ぼくは塔のてっぺんを目指した。


「まったく……あいつをリーダーにしたのは失敗だったかもな」


 そんな軽口を叩きながらも、ブラックはついて来た。


 果たして、東の塔には何が待ち受けているのだろうか。

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