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聖女

「なるほど。ブラックの言っていたことは、よくわかった。ぼくの仲間達を取り返すことは、望みでもある。それに覇王を倒すのには当然強力な戦力が必要になる。となれば、【聖女】や【勇者】を仲間にすることは、大変有意義だとぼくも思う」

「わかってくれたか。理解が早くて助かるよ」

「それでブラック。【勇者】や【聖女】の正確な位置は把握できているのかい?」


 ブラックは侵略軍の総司令官という立場だ。


 つまりは、覇王軍の中でもかなり高い地位についていると予想できる。


 【勇者】や【聖女】の位置といった重要な情報も知っているはずだ。


 そうでなければ、わざわざこの話をしてきた意味がわからない。


「すまない。正確な位置はわからない」

「なんだ……絵に描いた餅か。けれど何か断片的な情報は知ってそうな口ぶりだね」

「ああ、知っているさ。けれど、何度も言うがこれは正確な情報じゃない。それに、俺達が突き進む道は厳しいぞ?」

「道が厳しいのは承知のうちだよ。だからブラックの知っていることを教えて欲しい」

「わかった、少し長くなるぞ?」


 ぼくはコクリと頷いた。それは皆も同じだ。


「まず誘拐された【聖女】と【勇者】の位置だが私も知らない。おそらく覇王の親衛隊と呼ばれる者達が守っているのだろうな。そして、魔術の世界に存在する【聖女】と【勇者】に関してだがちょっと特殊だ」

「特殊? というと?」

「【勇者】はスキルの世界に見た通りだ。覇王からも特別な権限を与えられて、自由に行動しているつまり位置を把握することは実質的に不可能だ。そして、【聖女】の方だが、そっちもちょっと特殊だ」

「どう特殊なの?」


 ぼくは首を傾げながらブラックに尋ねる。


「そうだななんと言ったらいいのだろうかな。その【聖女】なのだが、言葉を選ばずに言うとじゃじゃ馬でな。覇王の言うことも聞かずに、好き勝手に行動している」

「な、なるほど。とにかくその【聖女】と【勇者】は自由で動きが掴めないってことか」


 結局ブラックが答えた通り、長い割にはぼく達が得られた情報はとくになかった。


 だが逆に言えば、【勇者】と【聖女】は覇王とその側近しか知らないトップシークレットなのだとわかった。


 やはり【勇者】と【聖女】は、覇王の侵略計画の要になる存在なのだろう。


 そんなことを考えているとだ。


「ふふん、見つけましたわ! クルセイダーズにレジスタンスに反逆軍」

「なに! どうして、わかった? 今はブラックの【隠密】でぼく達の姿は見えないはずだ」

「いや……それがだな。今話している相手その人こそが【聖女】なんだ。おそらく【聖女】には、どうやら私の【隠密】はきかないらしい」

「なるほど。でも……」


 ぼくはその先を言いかけてやめた。


 確かに彼女はブラックの魔術【隠密】を掻い潜って、ぼく達のことを見つけることができた優れた魔術師だ。


 しかしだ。彼女には致命的な見落としがあった。


 なんと彼女は、たった一人でぼく達に挑もうとしてきたのである。


 ぼく達の人数と、彼女一人ではあまりに戦力差がありすぎる。


 これでは一方的に彼女を倒すことになってしまうだろう。


 しかし一方的に彼女を倒すのでは、目的である【勇者】と【聖女】を仲間にするという目的は果たすことができなくなる。


 ここはなるべく穏便に済ませたい。


「ルカ、わかっているとは思うがくれぐれも我々の目的は見失うよ?」

「わかっているよ。あくまで彼女は組む相手として戦う。だから、一方的に倒したりはしないよ」

「何をコソコソと話しているんですの? 私と決闘しなさいな!」

「わかった。ここは一対一で戦うのが筋だろう。そのルールで戦おう」


 本来ならば一対一で戦う道理はないのだが、ぼく達はあえて彼女とその取り決めで戦うこととした。

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