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陰謀

「ねえ、ちょっと気になっていたことがあるんだけれどいい?」


 ぼくは、ブラックに廊下を走りながら尋ねる。


「なんだ? なんでもいいから聞いてみろ、リーダー」


「うん。じゃあ聞くけど、どうして覇王はあんなにまで【聖女】と【勇者】に拘るの?」


 それを聞いたブラックはつい足を止めた。


「確かにな、言われてみればそうだ。覇王はスキルの世界の住人をバッジにしろと命じていたが、【勇者】と【聖女】だけは生身のまま連れて帰れと命じていた。そのあたりは不自然だ」


 ブラックは、思いがけない気付きについ足をとめた。


「うわ、急に止まらないでよ」


 ぼくの前を走るブラックに急に止まられると歩調が狂う。


 しかし、ブラックはぼくの主張に耳を貸さずなにやら考え事を始めた。


「やってみる価値はありそうだな」


 ボソリとブラックは呟く、


「確か君の仲間には、【勇者】と【聖女】がいたはずだろ?」


 ああ、そうだけれど

 

「ならその仲間今から取り返しにいかないか?」

「え、本当に?そうしてくれるなら、ぼくは嬉しいけれど突然なんで?」

「決まっているだろう?勝つためだ」


 ブラックはニヤリと笑いながら答えた。


 ぼくが覇王軍を倒す理由として、世界に平和をもたらすというものもあるが、それ以前にカインとエノクに奪われた仲間を取り返すというものがある。


 それを成し遂げるには、まず覇王軍を壊滅させるのが先だと思っていた。


 それが今すぐに仲間を取り返せるとなれば、ぼくとしては嬉しことこの上ない。


「聞かせてくれないかな? どうして【聖女】と【勇者】を取り戻すことがぼく達が勝つことに繋がるのか」

「そうだな。お前達には聞かせてやる必要があるだろう。なぜ【聖女】と【勇者】を取り戻すことが勝つことに繋がるのか。ただこれは俺の憶測も交じるのだがいいか?」

「うん、聞かせてくれよ」

「まず覇王の目的とはなんだと思う? そこからまず話を進める必要がある」

「え? 覇王の目的?」


 ぼくはただひたすらに目の前にいる敵を倒してきた。


 覇王……つまりぼくのお父さんが何を考えて、侵略戦争をしかけているかなんて考えたことがなかった。


「それは君達の言っていた通り、新しい世界を創造するために……あれ? なんでだろう。【聖女】と【勇者】は侵略に絡んでこない。なんでだ?」

「そう。俺が言いたかったことはそこだ。新しい平和な世界を創造するためと言っているが、それはおそらく建前だろう。きっと本命は、【聖女】と【勇者】になにか関係あるに違いない」

「なるほど、確かにそこまでは筋が通っている」


 しかし、覇王がなぜそこまでして【聖女】と【勇者】に拘るのはなぜか? そこが相当に重要な部分なはずだ。


「それで聞かせて欲しい。なぜ覇王はその二つにそこまで執念を燃やすのか」

「そうだな。ここからが本題だ、なぜ覇王がその二つに拘るのか? だが、その二つの存在に共通して言えることは一人いるだけでも相当な戦力になるということだ」

「あ!」


 確かにぼくは、魔王との戦いの時に相当アベルとシアンに助けられた。


 つまりブラックが言いたいであろうことは一つ。


「ここまで言えばわかるな? そうだ。覇王は、三つの世界を征服するべく【聖女】と【勇者】を手にしようというわけだ。そして覇王は見事その目的を達成すべく、魔術の世界を我が物とし、スキルの世界も陥落直前というわけだ」

「なんてことだ……」


 ぼくは、ついつい手元にある強力な武器を見落としてしまっていた。


 確かに魔術の世界を足がかりにし、スキルの世界は陥落直前そして【聖女】と【勇者】はもうすでに六人うち四人は確実に手元にある。


 それが全員揃えば……もう恐るにたるものなどないだろう。


 ぼくはようやく、覇王のやろうとしている陰謀の恐ろしさに気がついた。

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