突入
大規模移動魔術により、ぼく達は魔術の世界の本部へと辿り着くことができた。
ぼく達は全員揃っているか点呼を取ろうとした。
しかし、不運なことに監視役に見つかってしまった。
「スキルの世界侵攻軍総司令官殿!? なぜレジスタンスのやつらと一緒にいらっしゃるんですか?」
「君には少し眠ってもらおう」
そう言ってブラックは、見張りの者を一瞬にして気絶させてしまった。
(さすがだ……、ぼくと決闘したばかりというのにもうあんな俊敏な動きができている)
ぼくはブラックの目にも留まらぬ攻撃に、つい呆然としてしまった。
「なにをボーッとしている? これから本拠地を落とすっていうのに戦場で立ち尽くす奴がどこにいる?」
「ご、ごめん。だけれどもこれからぼく達はどこに行けばいいんだ?」
「隊を二つに分けよう。グレタとグランデを先導役に結界魔術を張っている部隊を落としてくれ」
「結界魔術?」
ぼくは聞き慣れない単語を聞き返した。
それに対してブラックが丁寧に返答をする。
「ここに来る前に言っていた、スキルの世界からの大規模な干渉を防ぐための魔術を展開している部隊だ。一日中交代交代で途切れる間もなく、展開し続けている。まずそこを落とさないと、スキルの世界からの大量の物資の輸送ができなくなってしまう」
「なるほど。それと気になっていたんだけれど、大規模な干渉っていうのはつまりどういうこと?」
「まあどの程度か詳しくはわからん。人一人程度なら小規模、隊一つ以上を大規模と呼んでいる。だから、強制送還には干渉しない程度に結界は調整してあると聞く」
「なるほど」
ぼくは疑問に思っていたことが解消され、すっきりとした。
「それでもう一つの隊はどうするの?」
「もう一つの隊は私が先導して、覇王のいる最奥部を目指す。そこで覇王を倒すことができれば、俺達の勝ちだ」
「なるほど、わかりやすくていい作戦だ」
正直言ってぼくは戦争の戦略などの知識は一切ない。
魔王をうっかりと倒してしまったせいで、逆に戦争の引き金を引いてしまった程だ。
ここは侵略軍とはいえ、それの総司令官を務めていたブラックの意見を聞くのが正しいだろう。
「それで危険度はどっちの方が高いの?」
「決まっているだろう? 覇王を倒す方が遥かに難しい。死にたがり以外はこちらに着いてこないほうがいい」
そういったブラックの言葉は、嘘や脅しの文句でもなんでもなかった。
そう感じさせる本気度合いが違った。
しかし、それでも覇王を倒そうと意気込み手を挙げる者は大勢いた。
ところがブラックは、おかしなことを言い出した。
「皆沢山名乗り出てくれたことは嬉しい。だが、残念な知らせがある。君達全員を連れて行くことは残念ながらできない」
「え、それは一体? どうして!」
数は多い方がいいに決まっている。その常識を信じるぼくからすれば、訳がわからない提案であった。
「数が多いとそれだけ目立つ……というのもあるが、実は私の魔術だが応用をすれば、【隠密】を使うこともできるんだ」
「どういうこと?」
「見せたほうが早いだろうな。【隠密】」
ブラックが魔術を唱えると、なんと瞬く間にブラックの姿が見えなくなった。
「え、凄い! 一体どういうこと?」
「お前達から見えている私の像をちょっとばかり弄っているのさ。そうすることで、私の姿を隠すことができる」
「なるほど! でもそんな便利なスキルがあるなら、やっぱり大勢の方がいいんじゃ?」
「数に制限がある。どれだけ多く見積もっても十人が魔術をかけることのできる限界だ。だからそれ以上人を連れて行くことはできない」
ブラックからいきなり提案された【隠密】という手段。
それを使うためには数を十人以下に減らさなければならない。
増えた仲間がまた減るという事態にぼく達は陥った。
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