新手
ぼくは新しい仲間を迎えいれようと、ブラックと手を差し出した。
それを見て、ブラックも手を差し出す。
「ほら、コバルトも」
「……本当に信じて大丈夫なんだろうな?」
「信用されていないことはわかっているし、すぐに信用できないこともわかっている」
ブラックは固い表情でコバルトに、本心を告げた。
それが結果的によかったのか、コバルトは手を差し出して三人で手を取り合って握手をした。
これでぼく達クルセイダーズ、レジスタンス、反逆軍達三つの同盟ができた。
しかしそれに水をさすかのようにある男が、ぼく達に野次を浴びせてきた。
「おっと? これは総司令官殿、負け犬のスキル使いと手を取り合って随分と仲がよろしいようで」
「誰だ!」
ぼくはその野次を浴びせてきた者の方を向いて叫んだ。
野次を浴びせてきた男は、瓦礫の山の上に立っていた。
なんとその男は、ぼくが知っている顔であった。
(あ、あれはカインやアベルと同じ顔の男! いやだけれども髪の色と瞳の色が違う)
「誰だお前は! なぜカインやアベルと同じ顔をしている?」
「えーと君は、ああ。覇王様の息子のルカ君か、ぼくの名前はエノクよろしくね」
「質問に答えろ! ぼくはそんなことは聞いていない」
「はあ……このパターン二回目でしょ? いい加減覚えて欲しいなあ。ぼくは魔術の【勇者】、だから同じ顔をしているのさ」
(魔術の勇者だって! そうかカインはスキルの【勇者】、アベルは魔法の【勇者】で同じ顔だった。彼も同類か)
「何をしにきた! お前一人でぼく達に勝てるとでも言うのか?」
「んーとね、ぼくは覇王様の言いつけ通り【聖女】をさらいに来たのさ。そして君達に勝てるか、だって? それは今から見せてあげるよ」
そう言ってエノクはまばゆい光を発して、魔術を展開した。
(聖女を拉致しに来ただって……? それはまずい!)
ぼくは、咄嗟にシアンを庇う形で地面に押し倒した。
その咄嗟の判断がよかった。
「チッ、一人取り逃がしたか」
ぼくが庇いきれなかった方の【聖女】、マゼンタが気付いたときには彼にさらわれていた。
そのあまりの速さにぼくは、反応しきれなかった。
「クソッ! マゼンタを返せ! 汚いぞぼくと戦え」
「はあ……面倒だな。まあ一人だけでも充分な戦果でしょう、じゃあぼく帰るから。裏切り者の総司令官殿もご達者で」
そう言って次の瞬間には、エノクと名乗る魔術の【勇者】はゲートを作り出して自分の世界へと帰っていった。
そのあまりにも一瞬の出来事にぼくは、呆然と立ち尽くしてしまった。
(なんてことだ……、マゼンタが! マゼンタが攫われてしまった)
ぼくは一瞬の間に仲間を失ったことが悔しかった。
その悔しさのあまりぼくはポロポロと涙をこぼした。
(チクショウ……チクショウ……!)
他の者達はというと、ぼく同様仲間を失ったことに悔しがっていた。
そしてそれとは別に、裏切り者だということがバレて悲観する魔術師達もいた。
「やべえよ、どうするんだよ。俺達もう裏切り者だってわかっちまった!」
「クソッ、いつかはこうなると思っていたけどこんなに早くバレちまうなんて」
魔術師達からすれば、帰る場所を失ってしまったのだ。
その絶望はとてつもないものだろう。
しかしそれに対して、ブラックがげきを飛ばした。
「案ずるな! 俺たちのやっていることは正しい。間違っているのは覇王の方だ! きっと神様もそのことを見ていてくださっている。最後に勝つのは我々だ」
ブラックがそう言うと気休めではあるが、その場は少し落ち着いた。
そして場が落ち着いた後ブラックは、「ついて来い」と言ってぼく達をどこかに案内した。
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