邪魔
ある時ぼくは、旦那様に呼び出しをくらった。
(なにがあったんだろう、悪いことじゃなければいいんだけど)
「ルカ君よ、実は君に【回復術師】としての才能がないと訴えるものが出てきた」
(え、一体誰が!?)
ぼくがそんなことを考えていると、訴えた人物が現れた。
「よお、ルカ。また会ったな」
(カインだ……、まさかまたぼくをおとしいれようとしているのか?)
「勇者カインよ、ルカ君が【回復術師】として失格であるということをもう一度話して貰えないか?」
「はい。実は、そのルカという者は私達のパーティで【回復術師】をやっていたのですが回復量があまりにも少ないためパーティを出ていって貰ったのです。
到底お嬢様の呪いを癒やすことなどできるとは思えません」
「それは本当かね? ルカ君」
「い、いえ。違います。カインが言ってることは嘘です」
なんということだ。
あれだけ信頼してくださっていた旦那様が、勇者に告げ口されただけで手のひらを返すなんて。
ぼくは必死に誤解を解こうと頑張った。
「勇者カイン一人だけの発言をまに受けるのはよくないと思います。他に証言者がいないと」
「うーん、確かにそれもそうかもしれん。勇者カインよ、他に証言できる者はおるか?」
「います、外にいるので連れてきてください」
「うむ、許そう」
旦那様が入るのを許可すると、なんと勇者パーティの元仲間達がやって来た。
(まずい。マゼンタ、【タンク】、【メイジ】だ……、絶対ろくなことにならない)
そう考えていると、マゼンタがまず話し始めた。
「私勇者パーティのサブリーダーで、追放されたルカの代わりに【回復術師】をしているものです」
「おお、そなた名前はなんという? 我が娘に似ていて、気に入ったぞ」
「ありがとうございます。名前はマゼンタと言います」
(まずい、旦那様は娘のことを溺愛している。マゼンタはシアンとそっくりだからまに受けやすいだろうな……)
更に追い打ちをかけるように【タンク】がこんなことを言い始めた。
「私は勇者様のパーティで【タンク】を務めている者です。実はルカからは嫌がらせを受けたことがありまして……」
「なに!? それはどんな嫌がらせじゃ。是非聞いてみたい」
「はい、実は魔物から攻撃を受けた際にルカに回復してもらおうと頼んだのですが、薬草で治せと言われて回復してもらえずに今でも
その傷が残っているのです」
そう言って【タンク】は、冒険者なら今さっき作ったとすぐにわかる腕の傷を旦那様に見せた。
「おお、なんと酷い。わかった、もうよい。しまってくれ」
「わかりました、お見苦しいものを見せてすみません」
(駄目だ! 旦那様。そんな奴の言うことを信じたら)
ぼくは必死に言い返そうと頑張るけれど、味方が少ない状況で何も言い返せずにいた。
お人好しな旦那様はすっかり勇者パーティの嘘に騙されてしまった。
口下手なぼくは、勇者パーティの嘘に反論できなかった。
そんな時であった。
旦那様の元にシアンが訪ねてきた。
「あ、ルカ! お父様のところにいたのね? もう色々探したんだから」
いいところにきた。これはもしかしたら勇者パーティに復讐できるかもしれない。
ぼくは、ニヤりと笑った。
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