投降
「レジスタンスに告ぐ。抵抗するのを辞めて出てきない!」
侵略軍の兵士がそう呼びかけながら、基地のまわりを散策していた。
作戦の予定では、そこでコバルトが投降する予定だ。
だが投降するといっても無防備な姿を晒して、投降するわけではない。
きちんと戦えるような武装をして、投降し自分の意見を通す。
それがいかにもコバルトらしいやり方だ。
「俺だ、コバルトだ。お前達のボスに話がある。そこに俺を連れて行け」
「なんだと! その口の聞き方は……ってぐあっ!」
今のコバルトは最高にアブラが乗っている。
ぼくとの試合の結果も踏まえて、魔術師対策は万全だ。
これぐらいの雑魚兵士なら一捻りできてしまう程に成長した。
それを察した他の雑兵達は、仕方なくコバルトを総司令官の元に連れて行くことにした。
渋々とコバルトを総司令官の元へ連れて行く、侵略軍達の様を見ているとなんだかスカッとした気分になる。
これでは投降したコバルトの方が立場が上で、投降を促した側の侵略軍側が下僕のようであった。
その諍いを見て、数分後に無防備に白旗を掲げた侵略軍がやってきた。
おそらくは使者のようなつもりなのだろう。
しかし、こいつらは無防備な一般市民を狙ってバッジへと変えていった。
使者であろうとぶちのめしてやりたい気分であったが、その気持ちは一旦抑えて用件を聞くことにした。
「どなたです?」
「総司令官殿の使者です。あなた方の提案を受け入れるそうです、ルカ殿一人で私どもに着いてきて下さい。そしてこの基地は、決闘が終わるまで我が軍の支配下に入ります」
「なんだって! そんな勝手な提案受け入れろというのか?」
「我々はこれでも譲歩しているつもりです。もうあなた達の基地は発見しました。あとは兵士を送り込んで殲滅するだけです。一時でも身の安全が確保されるだけでも、儲けものと思いなさい」
「わかった。総司令官を信じてぼくだけ着いていくことにする。その総司令官に二言はないな?」
「ございません。総司令官殿は高潔なお方です」
高潔な男が無防備な一般市民を虐殺するに近いことをするだろうか?
ぼくは侵略軍の言い分にへどが出そうであったが、必死に抑えてついていくことにした。
「ルカ! 本当に一人でついていって大丈夫?」
「大丈夫だよ。絶対に無事に帰ってきてみせるし、約束も守らせてみせる。皆は安心していて」
ぼくの仲間達が、ぼくの身の安全を案じてくれた。
彼らのためにも、必ずこの戦いは勝たないといけない。
ぼくは、魔道具を握りしめながら総司令官の元へと向かった。
「来たか。再戦できる時を待ちわびたぞ。そこにいるレジスタンスが乱入しなければ──。おっと仮定の話はよそう」
総司令官はぼくを見つつそう言った。
そして、肝心のコバルトだが手錠こそされているるものの争った形跡はない。
おそらくは、うまく話し合いを進めた末に戦いに乱入できないような形がとられたのだろう。
本来ならば、単騎で相手に突っ込んでいくような自殺行為だ。
身柄を拘束されたとはいえ、身の安全が保障されているだけでも充分に勝利といえるだろう。
ぼくはひとまずコバルトが安全だということに安堵し、今度は総司令官の方を見た。
「今日は随分とお行儀がいいみたいだね。いつもは無抵抗の人々を勝手にバッジにしていくのに」
「黙れ! それは我らが覇王様の語る理想郷を作るための計画のためだ。その犠牲に彼らはなっただけだ」
「黙るのはそっちの方だ! お前達が理想郷を作らなくても、ここにいる人々は平和に暮らしていた。それをお前達がこんな荒野にしたんだ」
どうやらぼくの挑発は、彼の胸に届いたようである。
おそらくは、彼もこの計画にはなにかしら不満を抱えている。
そのようにぼくには見て取れた。
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