魔術
ぼくは早速グレタとグランデに頼んで魔術を教えてもらった。
しかし、魔術は基本的には魔法と同じで違うところいえば、魔道具を使うかどうかぐらいであった。
元々魔法の知識があったぼくは、めきめきと力を伸ばしていった。
魔術を覚えて一日でコバルトと試合をして圧倒できるようになり、その数日後にはグランデ達とも渡り合えるほどとなった。
「さすがルカね。物覚えが早くて助かるわ」
「いや、グランデ達が教えるのがうまいからだよ」
ぼくは思っていたことを素直に述べた。
ぼくが魔法を知っていたからというのもあって、魔術の習得が早いというのもあるだろうが彼女達の教え方もうまかった。
問題はこれだけの鍛錬で、あの総司令官に勝てるかどうかということだ。
ぼくは正直に言って彼に勝てるかどうかを、彼女達に尋ねてみた。
「なあ、グランデ。それとグレタ。正直に答えて欲しいんだけれど、このままであの総司令官に勝てると思う?」
「総司令官? ああ、ブラックのことね。正直に言ってまだ無理じゃないのかしら。ねえ、グレタ」
「そうだな。潜在能力を考えるとブラックに勝てるかもしれないが、今のままだと難しいだろうな」
「そうか」
ぼくは思っていた通りの答えに落胆した。
ブラックと呼ばれるあの総司令官の魔術と身体能力は、並のものではない。
覚えて数日程度のぼくの魔術で、彼に勝つことはやはり難しい。
しかしその様子を見て、グランデがぼくを励ましてきた。
「もう! なにしょげているのよ。今の段階では厳しいというだけで潜在能力はわからないって言ったでしょ? ねえグレタ」
「ああ、まあな。ただそれを引き出すための鍛錬を積む時間がないのも事実だ。急いで鍛錬を積まないとだな。そうだろ? グランデ」
時間がない。そうそれがぼくにとって一番恐いことなのだ。
この秘密基地だって今は安全だが、いつ敵に見つかるかはわからない。
しかし恐れていたその時は突然に訪れた。
「大変だ! 侵略軍がこの辺りの捜索を始めたぞ」
そう言ってコバルトが、ぼく達に危険を知らせに帰ってきた。
「どうする? このまま逃げとおせるかな?」
「無理だろうな。おそらくはもう数十分後にはここに突入してくるだろう」
ぼく達の運命はあともう数十分後には決まる。
次に取る選択肢は二つ。
一つは、このまま奴らが見過ごしてくれることを願って沈黙して過ごすこと。
もう一つは見つかる前に、こちらから奇襲をかけて相手の出鼻をくじくことだ。
正直どちらの作戦をとってもうまくいく可能性は低い。
ならばとぼくは三つ目の選択肢を提案した。
「ぼくに提案がある。ブラックっていう総司令官に決闘を挑もうと思う」
「決闘を? そんなの無茶よ! それに相手が応じてくれるかわからないは」
「確かに無茶だろうし、誘いに乗ってくるかはわからない。けれど、奴はぼくが勝ったら何でも言うことを聞くと約束した。その約束は今も生き続けているはずだ」
「なるほど、確かに言われてみればそうね。彼の性格的にも約束は守る方だし提案に乗ってくる可能性は高いと思うわ。ねえググレタ」
「そうだな。奴はどちらかというと義理を重んじる武人肌の人間だ。私も同意見だ。なあグランデ」
ぼく達は顔を見合わせて頷いた。
作戦は決まった、ぼくがブラックに一対一の決闘を申し込んで勝つ。
ただそれだけだ。問題はその作戦をどうやって実行するかだ。
そう考えている時、コバルトがこんなことを言い出した。
「俺が人質になろうと思う」
「え? それっていったい?」
「俺が人質になって、投降してルカが勝てば約束を守ってもらう。お前が負けたら俺をバッジにするなりなんなりしてもらおうということだ」
そんな無茶苦茶な作戦やめようと止めかけたが、他に作戦が思いつかない。
時間も迫っていることだし、ぼく達はその手筈で作戦を進めることにした。
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