強敵
ぼくはコバルトに教えてもらった、魔術師と戦う時の基本近接戦闘は避けるを実戦した。
スキル【気功】を使って、じわじわと敵を削っていく戦法だ。
しかし、流石は総司令官と呼ばれる程の男である。
攻撃を魔術で防ぐどころか、身体能力でぼくの攻撃をかわしてくる。
(馬鹿な!? 魔法と違ってスキルの速度は相当なもののはず。それを素の身体能力で避けるなんて)
ぼくはその優れた身体能力に驚きつつ、隙を与えない抜かりなさに苛立った。
グレタとグランデの時は、反射魔術と防御魔術の隙をついてなんとか倒すことができた。
しかし、この総司令官はまず攻撃すらろくにあたらないのだ。
これでは隙をつくことすらできない。
(どうすればいいんだ……!)
ぼくは必死にどうすればよいのかを考えた。
(よし、押して駄目なら引いてみろ。だ)
ぼくはあえて、攻撃をやめて防御に転じようと考えた。
防御や回避は得意でも案外攻撃は苦手というタイプはいる。
この男に限ってそれはないだろうが、もし攻撃する際に隙を見せるようなら反撃のチャンスだ。
だがいきなり攻撃をやめると不審がられる。
ぼくは疲れたフリをして、攻撃をやめてみた。
「はぁ……はぁ……」
「どうした? もう攻撃はお終いか? ならば私が行こう!」
そう言うと男は、構えていた魔道具に魔力を込めだした。
何が飛んでくる? ぼくは身構えた。
──しかしそのぼくの予想は外れた。
なんとその男はぼくに思いっきり突っ込んできたのだ。
ぼくは思わず反射的にスキル【回避】を発動し、攻撃を避けた。
「ほう避けたか。だがいい判断だ。私の魔術は光の魔術。私の周りに鎧のように纏っているこの光に当たればお前は死んでいた」
ぼくはその男の周りをよく観察してみた。
すると男の言っていた通り、彼の周りには光の粒が鎧のように浮かんでいた。
「魔術とは、攻撃と防御を一体化させたものなのか!?」
「そうだ。だから貴様らのような、近接戦闘がメインのスキル使いには滅法強い。勝ち目はない諦めろ」
勝ち目がないや諦めろなどと言われて食い下がるほどぼくは諦めがよくない。
なんとしてでもこの男を倒し、侵略行為を止めてみせる。
改めてそう心に誓った時であった。
「キャーッ!」
シアンの方から悲鳴が聞こえた。
ぼくは思わずそちらの方を振り返った。
そちらを見るとなんと、シアン達は侵略軍の兵士達に囲まれていたのである。
なんてことだ。状況がまずいのはぼくばかりでなくシアン達も同様であった。
「クッソ……! 一体どうすれば!」
ぼくはシアン達の方へと気を取られ、自分の集中力を欠いてしまった。
「おいおい、お前の相手はこっちだぞ?」
その隙をついて総司令官と呼ばれる男は、ぼくに攻撃を仕掛けてきた。
「クソッ! なんて卑怯な」
ぼく達は慣れない魔術師との戦闘にすっかり苦戦しボロボロになっていた。
そんな時であった。
「グワアッ!」
シアン達の方からまた悲鳴が聞こえた。
しかし、これはシアン達の悲鳴ではなかった。
聞こえてきた悲鳴は男の声。つまりは魔術師達の悲鳴だ。
なにがあったんだとぼくはまたシアン達の方へと視線を逸らす。
するとなんと、山のようにいた魔術師達が一人また一人とやられていく信じられない光景を目にした。
「これは一体どういうことだ……?」
ぼくは何かの見間違いかと思ったが違った。
「レジスタンスだ! レジスタンス達が反撃に出てきたぞ!」
魔術師の一人がそんな情けない声をあげた。
「慌てるな。相手は所詮スキル使い。魔術で対処すればどうとでもなる」
「それはどうかな?」
「なに? 何者だ!」
総司令官と呼ばれる男は珍しく声を荒げた。
そして、ぼく達の戦いに助太刀に入ったのはなんとあの男であった。
数ある小説の中からこの小説をお読み頂き、本当にありがとうございます!
良ければ、ブクマと★をいれて頂ければ幸いです




