疑念
「え? ルカが覇王の息子?」
その場にいた者達はぼくの顔を一斉に見た。
まずい。この世界に来て一番にばれたくない事実が知られてしまった。
「それって一体どういうことになるの?」
シアンが不安そうな顔を浮かべて、ぼくを見つめる。
ぼくだって小さい頃しかお父さんのはない。
その人が覇王として世界征服を狙っていると聞かされても自分自身困惑する。
しかし、ここはなんとか皆に信用してもらわないと、パーティが分裂してしまう。
知らないだとか、人違いだなどとしらばっくれてもよい。
だが、また同じ状況になった場合今よりも険悪な雰囲気になることは間違いない。
そうすれば今度こそパーティ崩壊の聞きだ。
ぼくは正直に知っていることを話すことにした。
「わかった、正直に話す。信じてもらえないかもしれないけれど、正直ぼくのお父さんに関する記憶は小さい頃のものしかない。けど、ぼくが知っているお父さんはとても優しい人で、自分に魔法の力がないことに悩むようなとても覇王と呼ばれるような人じゃない」
ぼくは自分が知っている、お父さんの記憶を皆に話した。
これで皆が納得してくれるとは、到底思えない。
だが、これがぼくの知っている全てなのだ。
皆はぼくの話を黙って聞いていた。
やはりにわかにはぼくの話を信じられないのだろうか? だがぼくだってお父さんが覇王だなんて話は信じられない。
痛いほど冷たい沈黙が場を包んだが、それをシアンが破った。
「私は信じるよ。私を癒やしてくれた時のルカとっても優しかったんだもん」
「私もですわ、お父様がどういった人なのかはとりあえず一旦別として、ルカ様はとてもお優しい人です」
「シアン、シャロ……」
ぼくは涙が溢れそうなほど嬉しかった。
「えーと、じゃあ私もご主人様のこと信じるかな」
「私達もルカについて行きましょうよ。ね? グレタ」
「まったくしょうがないな、グランデ」
どうやらこの場にいる皆がぼくの仲間をしてくれるようであった。
ぼくは嬉しさでその場で泣きそうになった。
だが、そんな時であった。
「いやー実に感動的な場面ですな。だがそうはうまくいきません。グレタ、グランデの両名は反逆罪として粛清。そして覇王様に楯突くルカ君一行は私が処刑させてもらう」
「誰だ!?」
ぼく達は話し込むことに夢中になりすぎて、後ろから近づいてくるその人物には気が付かなかった。
後ろから近づいてきたその人物は、覇王軍の軍服を着ており何やら格式高そうなマントを羽織っていた。
「これは総司令官殿!? なぜここに?」
「なぜかって? たまに軍を裏切る不届き者がいるからその巡回を兼ねてね。だが君達がその裏切り者だとは思わなかったよ」
どうやらぼく達に後ろから話しかけてきた人物とは、どうやらグレタとグランデの上官らしい。
しかも総司令官ということは相当に選びぬかれた精鋭の魔術師なのだろう。
「全く、君達ほどの魔術師が負け犬のスキル使いに敗北するとはね。そればかりでなく反逆者になるとはね」
「黙れ! スキル使いは負け犬じゃない。それにお前達のやっている侵略行為のほうが間違っている!」
「ならば私のことを力づくで這いつくばらせてみせろ。そうすれば、お前の意見をなんでも聞いてやろう」
「本当だな?」
「本当だ」
そう答えた途端魔術師は、魔術道具を構え戦闘の姿勢に入った。
それと同時に複数の足音が聞こえだした。
「なんだこの足音は!?」
「君達のお仲間を相手してくれる私の下僕達の足音さ。さあこれで一対一で好きなだけ戦える。さあかかってこい!」
「わかった! 望むところだ」
ぼくは戦う姿勢に構えて、総司令官と呼ばれる男と向き合った。
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