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秘密

 旦那様から領地を貰い、小さな領主となったぼくの周りには人が増えた。


 毎日来客がやって来ては、いろんな芸やお話を聞かせてくれる。


 けれどぼくは、元々は平民の出だ。難しいことはよくわからない。


「セバス、この人には”大変ためになった”と言って帰ってもらって」

「わかりました、ルカ様」


 セバスは、ぼくがここの小さな領主になると聞いて、なぜか旦那様から離れてここへやって来た。


 やって来たのはセバスだけではない、もう一人。


「ルカー! ねえ、この前やってくれたあの気持いいやつやってよー!」


 そう。なぜかシアンもここへやって来た。


 彼女曰く、「ルカと一緒にいた方が何かあった時安全だから」という理由らしい。


 それには、旦那様も「なるほど」とすぐに了承したらしい。


(はぁ……、退屈だな。領主生活って)


 ぼくにはやはり冒険が似合っている。

 

 杖を片手に魔法を唱える生活が一番だ。


 そんなことを嘆いていると、セバスが戻ってきた。


「ルカ様、次はあなたのお爺様だと名乗る者がやって来るそうです」

「え!? 爺ちゃんが」


 爺ちゃんは、【神の手】と呼ばれる【回復術師】として最上級職に歴史上唯一なった人だ。


 その力はすさまじく、魔王にかけられた呪いを癒やした程だ。


(けどなんで爺ちゃんがぼくに会いに来たんだろう?)


「爺ちゃんはどんな見た目をしてた?」

「えーと白髪頭に白髭をたくわえた立派な出で立ちをしていらっしゃいました。あ、あと特徴としてゴッドハンドと書かれた服を着ていました」


(じ、爺ちゃんだ。相変わらず変わんないなあ……)


「わかった、通して」

「わかりました」


 セバスにそう命じると、爺ちゃんがやって来た。


「よう、ルカ。立派にやっとるやとうじゃのう」  

「爺ちゃん! 今の今までどこに行ってたんだよ!」

「ワシか? まあそこらをブラブラとな」

「もうまったく」


 爺ちゃんには放浪癖があって、三年前に行方をくらませていた。


 だからぼくも、爺ちゃんと同じ【回復術師】になって冒険を始めたんだ。


「今になっていきなり現れたってことは何かを伝えに来たの?」

「おお、そうじゃそうじゃ。お前にワシの秘密を伝えに来た!」

「爺ちゃんの秘密!?」


 ぼくはゴクリと息を飲んだ。


 爺ちゃんは【回復術師】の中では、生きる伝説でありぼくの憧れだ。


 そんな人の秘密だ。聞かないわけにはいかない。


「実はワシは【回復術師】として失格なんじゃ」

「え!?」


 ぼくは憧れの人が【回復術師】として失格と聞いて驚いた。


「嘘でしょ!? だって爺ちゃんは【神の手】なんだよ」

「うむ、そうじゃ。じゃが、お前は一つ勘違いをしておる。【神の手】は【回復術師】の最高職ではない。【施術師】の最高職じゃ」

「え、【施術師】? 何その職業」

「ワシも詳しくはわからん。ただあらゆる病気や呪いを手で触れることで治すことができる、それが【施術師】じゃ。そして【施術師】には、【回復術師】にはない特典がついておる!」


 ぼくは【神の手】から語られるその特典に息を飲んだ。


「その特典とは……」

(ゴクリ……)

「可愛い女の子の体に触れられることじゃ!」

「えーーーーー!」


 何その特典とぼくはずっこけそうになった。


「でもお前にもおるじゃろ? 好きな子の一人や二人ぐらい。その子の体に直接触れられるんじゃ、想像してみい」


 ぼくの頭の中には、なぜかシアンの顔が浮かんだ。

 あの子の体に触れられる……。悪くない!


「どうじゃ? 悪くない話じゃろ」

「うん、爺ちゃん最高だよ!」

「しかも、やり方は簡単じゃ。長ったらしい魔法を覚えなくても、目に見えてくる魔力の滞りに触れればそれで治癒できる」

「確かに!」


 ぼくは、シアンを治癒したときのあの感覚を思い出して言った。


「それにな【施術師】には、【回復術師】にではできないことができるのじゃ。それは──」


「え!? そんなことができるの!」


「できる! お前には才能があるからのぉ」


そう言い残してぼくの爺ちゃんはまたどこへ消えていった。 

数ある小説の中からこの小説をお読み頂き、本当にありがとうございます!




良ければ、ブクマと★をいれて頂ければ幸いです

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