懐柔
「どうだっ! 参ったか? これで分かっただろ?スキル使いが負け組じゃないって」
「やめろルカ、これ以上は奴らを強制送還させてしまうことになる」
「分かってる。手加減してあるからその心配はないよ」
ぼくは、コバルトにグレタとグランデには手加減をして攻撃したことを伝えた。
それを聞いて、コバルトは歯がゆそうな複雑な表情を浮かべていた。
自分達の仲間をバッジに封印した、憎い敵をかばうような真似を自分でしてしまっているからだ。
しかし、そこはさすがコバルト。しっかりと感情を堪えて合理的な判断をした。
ぼく達がこれ以上攻撃を加えない様子を見て、女魔術師二人はおちゃらけた口調で挑発のようなことを言ってきた。
「あれー、私達助かったみたいよ? ねえ、グレタ」
「そうみたいね、とにかく命拾いしたわね、グランデ」
二人は、どこか余裕そうな雰囲気でぼく達のことをおちょくってくる。
正直言ってぼく達が本気を出せば、もう少しでこの女魔術師達を再起不能にはできる。
しかし、コバルトがその判断をくださないということはなにか理由があるのだろう。
ぼくはコバルトにどんな意図があるのかを尋ねた。
「ねえどうしてトドメを刺さないの? 何かを聞き出そうとか?」
「そうだ。俺たちは、バッジにされた仲間を取り戻す方法を探し求めている。その方法をコイツラから聞き出す」
「なるほど」
確かにこの二人のような幹部なら、バッジから人間に戻すやり方を知っているかもしれない。
ぼくはコバルトの意見に納得し、早速二人に用件を尋ねてみた。
「グレタにグランデだっけ? 君達に聞きたいんだけど、どうやったらバッジから人間に戻すことができるんだ?」
「さあ? 覇王様から何か聞かされていた? グレタ」
「いいや? 聞かされていないないわよ、グランデ」
二人はこんなときでも、いつもの調子を崩さずに受け答えをする。
それに苛ついたコバルトは、スキル【念動力】を彼女達にぶちかまそうとしている。
その様子を見て、女魔術師の一人はクスリと笑った。
「私達逃げようと思えば魔術でとうの昔に逃げれるのに気がついていなみたいよ、グレタ」
「そうみだいだな。ところでどうして逃げないんだ? グランデ」
「えー、それはこの可愛い坊やのスキルがあまりに見事だったからに決まってるじゃない!」
「はぁ?」
なにやら先程まで息ピッタリであった彼女達の意見に食い違いが生じていた。
そして可愛い坊やのスキルとは、ぼくの【施術】のことであろうか?
確かにぼくのスキル【施術】は、力を加減すれば心地よいと感じる人もいる。
それがどうやらグランデと呼ばれる女魔術師の心を動かしたらしい。
「わかった、なら聞き方を変えよう。なんでも話してくれると約束するならもう一度【施術】をしてあげるよ」
「え? 本当! なら何でも喋っちゃうわ、ねえグレタ」
「おいおい私は聞いていないぞ! グランデ」
だがどうやらグレタと呼ばれる女魔術師はぼくのことを気に入っていないみたいだ。
だが、話をしてくれる人物は一人で十分。ぼくはグランデから話を聞くことにした。
「じゃあ話してもらおうか。君達が人間をバッジに変えて集めている理由を」
「えーとそれはね、覇王様が言うには何やら新世界を作るための強大な魔術を発動するのに必要なんだって」
それを聞いてコバルトが、大声で怒鳴った。
「なに! それでは俺たちの失った仲間はその魔術の生贄になってしまうのではないか?」
「うーん、私も詳しいことはよくわからないんだけどその心配はないわ。新しい世界で元の人間として再生するらしいから」
「黙れ! お前達の戯言には付き合ってられん」
「まあまあ、コバルト。とりあえず話てくれてありがとう。服がはだけているから、新しい服をあげるよ」
「えー、ほんと? あと約束の【施術】も忘れないでね!」
「わかった、わかった」
ぼくは苦笑いを浮かべて、その場で立ち尽くした。
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