お礼
シアンと名乗る美少女は、ぼくを立派なお屋敷へと連れてきた。
「うわー大きなお屋敷」
ぼくはそのあまりの大きさについ口に出してしまった。
それを見てシアンは、「あらあら」とクスクス笑い声をあげる。
うん、やっぱり可愛い。純粋な笑顔だ。
「セバスー! お客人を連れてきましたわ」
そう言って彼女は、執事を呼ぶ。
するとお屋敷から、セバスと呼ばれる男が出てきた。
「ん……? 見かけない茶髪の青年がいますな」
「この方が私を助けてくださったの」
そう言ってぼくを軽く紹介してくれた。
「なんですって! これは旦那様を呼ばなくては」
セバスと呼ばれる執事は、ぼく達を中へと案内した。
長い廊下を歩くと、旦那様の元へとぼく達はたどり着いた。
「おお、この方が娘の命を救ってくださった、えーと?」
「ルカと言うものです」
「おお、ルカ君か。なんとお礼を申していいのやら」
そう言って旦那様とセバスは大泣きして喜んだ。
(きっと色々大変だったんだろうなあ……)
そんなことを考えていると、旦那様は意外なことを言い出した。
「ルカ君! 君は我が娘の命の恩人だ。なんでも褒美をくれてやる、欲しい物をいいたまえ」
「え、欲しい物ですか?」
(欲しい物何かあるかなあ……)
ぼくは欲しい物がすぐには思いつかずに悩んでしまった。
「金か? 地位か? 名誉か?」
(お金も地位も名誉も欲しいなあ、でも──)
ぼくは、シアンの方を向いて考えた。
ぼくは、この子が助かって欲しいから助けただけ。他にはなにもいらない。
「いいえ、何もいりません」
「何! 何もいらないとな? なんと慎み深い。ますます気に入った、君に全てをやろう」
「え、本当ですか? そんな滅相もない」
「いやいや、ワシのメンツに関わる問題じゃ。貰ってくれるまで帰さんぞ」
そう言って旦那様は、ぼくに無理矢理金と地位と名誉を与えてくれた。
ぼくは金として金貨五十枚を貰った。
これはぼくが一生かけても手に入らないような大金だ。
そして地位として、ぼくはこの国の小さな領主にしてもらった。
本当はぼくみたいなのが領主になることはできないんだけど、色々手を回してもらったみたいだ。
最後に名誉として、この国の王様に謁見してもらえることになった。
本当に旦那様にはいいようにしてもらった。
だけれど、ぼくがお屋敷から出る前にこんなことを尋ねられた。
「なあルカ君、失礼なことを聞くがどうやってうちの娘の呪いを解いてくれたんだ?」
(どうやってと聞かれてもなあ。ただ魔力の滞りが見えて、そこに手をかざして魔法を唱えただけなんだけど)
おそらくこんな適当なことを言ったら、旦那様は怒ってしまうだろう。
だからぼくは考えてこう返した。
「ちょっと説明をすると長くなるので、また次会った時にお話します」
「おお、やはり高度なスキルが必要じゃったか。そうじゃろうなと思っていたよ、それと君に頼みたいことがある」
「何でしょう?」
「また病気が再発するかもわからん。娘の側にいてやってはくれんか?」
「え!」
ぼくは驚いて声を漏らす。
次また治せるのか自信がなかったからだ。
ただぼくに出来る返答はこれしかなかった。
「わかりました、なるべくお力になります」
「おおルカ君がいれば本当に力強い、よろしく頼むよ」
そう言って旦那様はぼくのことを信頼してくれた。
これは次会う前には治せるように調べておかないと。
ぼくはそう考えながら、お屋敷を出た。
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