撃破
ぼくは、魔王を倒すためにどうすればよいか考えた。
何か打開策がなければこのままやられてしまう。
(もし僕に腕が三本あれば話が違うんだけれど……)
そんな夢のようなことをぼくは思い浮かべた。
腕が三本あれば、まず最初の一本でフェイントをかまし奴の身体にわざと触れる。
そうすれば、奴は必ず魔法を使って腕を氷漬けにしてくるだろう。
そしてここからが反撃だ。
奴に魔法を使わせた後は少しの間リキャストタイムが発生する。
そのわずかな隙を逃さず二本の腕で、攻撃をかませばあるいは──
ぼくがそんなことを考えていると、アベルが耳打ちをしてきた。
「ルカ様。状況は圧倒的に不利です。このままやられるくらいなら、私が隙を作ってその間にルカ様が魔王を倒して下さい」
「馬鹿! ぼくは仲間を誰一人失いたくないんだ。その方法だけは絶対にダメだ」
そうだ、ぼくはパーティを追放するようなカインのような人間にはなりたくない。
その一心で、リーダーとして皆を率いてきた。
それなのに、アベルを捨て駒にするようなことなど絶対にできない。
ぼく達が短く会話をしている刹那にも、魔王は再び冷気を城内へと充満させていた。
このままでは凍死する。
決断の時は迫っていた。
(ぼくは仲間をどうすれば守れるんだ……?)
仲間を守る、仲間。そうだ! ぼくには仲間がいるじゃないか。
この作戦ならばもしかすれば──
だが、それには圧倒的な覚悟が必要だ。
(いや、覚悟なんてぼくがパーティリーダーになった時からついているじゃないか)
ぼくは、アベルとマゼンタにある命令をした。
「え! そんなことできません」
「えー私はご主人様が言うなら、どっちでもいいよ?」
「これはお願いじゃない、命令だ。やってくれるな?」
「……わかりました」
ぼく達は短い作戦会議を終え、ついに魔王へと最終決戦を挑むべくぼくが一直線に突っ込んでいった。
「ふん! 若いな、恐れ知らず目【アイス】」
魔王は、リキャストタイムが極めて短い小技をうってきた。
しかし、魔王の小技はその辺の魔術師の大技をも凌ぐ。
巨大な氷の玉が飛んできた。
ぼくはそれをスキル【回避】で避ける。
そして魔王の懐へと潜り込み、【ツボ押し】をした。
「ふん、小僧が。そんなことをしても無駄だっ!」
そう言ってぼくの腕を凍り付けにしてくる。
だが、それこそが僕の策であった。
「それはどうかな? くらえ!【激痛ツボ押し】」
ぼくは、凍り付けとなった腕をその場に捨て本当の腕で、スキル【施術】のラッシュを決めた。
「ば、馬鹿な! なぜ腕が三本も!」
「簡単なことさ。バベルに腕を切断して貰って、その後マゼンタに【回復】してもらい腕を復活させた。後は切断した腕で攻撃したように見せかけて、本当の腕で攻撃する。
たったそれだけのことだよ」
そうたったそれだけのことだが、当然痛覚というものはある。
ぼくは腕を切断されるという激痛を声を殺して耐えてこの作戦へと出た。
そして、ぼくの作戦は勝った!
ぼくが隙を作った間に皆が攻撃を畳み掛ける。
【セイントスラッシュ】、【反回復】、【加護】などだ。
そして最後はぼくの【施術】を決めた。
すると魔王の体は、ボロボロと崩れていった。
「ば、馬鹿な! 私が負ける……だと?」
そう無念の一言を言い残して消滅しかけた時であった。
魔王は最後っ屁に、巨大な渦の攻撃をこちらへと放ってきた。
「うわ!」
ぼく達は、思い切り踏ん張った。
しかし、踏ん張ることのできないアベルだけはその渦へと乗り込まれていく。
それでもアベルは剣を床に突き刺してギリギリで耐える。
けれども、再び力をとり戻したカインがアベルもろとも渦へと突っ込んでいった。
「アベル!」
ぼくが叫んだがもう遅い。
「フハハハ、残念だったな。あの渦の先は別の世界へと繋がっている。これであの御方も喜んでくれるはず──」
「答えろ! あの御方とは誰だ?」
ぼくがそう問い詰めたが、魔王は既に息絶えていた。
ここで一章完結です!ここまでお読みいただきありがとうございました。
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