火拳
「くらえ!【ファイアパンチ】」
「ッ!」
カインの放ってきたスキル【ファイアパンチ】をぼくは、ギリギリのところでかわす。
「なんて速い攻撃なの! 目にも止まらなかったわ」
「私も見えなかった! 傷ついたら、回復してあげるから言ってね、ご主人様」
シアンとマゼンタが遠く離れた位置からぼく達の戦いを眺めて呟く。
「おいおい、マゼンタは俺の大切なヒーラーだったはずだぜ? 略奪するような悪い子になっちまったのかよ、ルカ」
「お前がマゼンタを見捨てて、魔王領に逃げたんだろ! ぼくは彼女を保護しただけだ」
ぼく達は、会話を交わしながらも彼のスキル【ファイアパンチ】が止むことはなかった。
(クソッ……! 火を拳に纏わせる単純なスキルだけど、連射できてこれだけのスピード。厄介だ)
「オラッ! オラッ! 避けるのがおせえぞルカ!」
ぼくは、カインの放つ【ファイアパンチ】を避けるのに一苦労で、攻撃に転じることができなかった。
(これじゃあ、カインを倒すことはできない。いつかあの攻撃を食らってアベルみたいにやられてしまう)
ぼくは冷や汗をかいて、ドキリとしてしまった。
(落ち着け、こういう時こそ、どうすればいいのか必死に考えるんだ)
ぼくは、色んな考えを頭の中で巡らせる。
そんな時爺ちゃんとのこんな会話を思い出した。
────
「ねえ爺ちゃん、どうしてこの人には強い薬を与えないの?」
ぼくは、すっかり弱りきった病人を見て言った。
「それはなルカ、物事には加減というものがあるからじゃ。まずは弱い薬を与えて体力を回復させ、次に肉やおかゆを与えて体力をつけさせる。そして最後に強い薬を与えなければ
ショックで死んでしまうかもしれんじゃろ?」
「なるほど! 流石【神の手】」
「ハハハ、あまり褒めるな褒めるな」
────
そうだ。ぼくは、カインと戦っていて疑問に思っていたことが一つあることを思い出した。
彼は何度も【ファイアパンチ】を放っているが、熱くないのだろうか?
アベルを一瞬にして、戦闘不能にさせる程の威力だ。
おそらくは何かのスキルで、火力を調整しているのだろうがそれにも限度があるはずだ。
となれば、ぼくのやる作戦はこうだ!
「ねえ、シアン。スキル【加護】をかけて貰えないかな?」
「え、いいけれど? でもルカ、全然攻撃できてないじゃない!」
「そう。だからそのスキルを使うのは、カインにお願い!」
それを聞いて、カインは大笑いを浮かべた。
「はぁ? 馬鹿じゃねえの? 俺の攻撃を強化しちまったらお前焼け死んじまうぞ! もういい決着だ! 【ファイアパンチ】」
「もうルカったらどうなっても知らないんだから! 【加護】」
そう言ってシアンは、【加護】をカインに向かって放った。
すると、どうだろう。カインの【ファイアパンチ】は、拳だけでなく全身に燃え広がっていった。
「ギャアアアアアアアッ!」
やっぱりだ。一定以上の火力で【ファイアパンチ】を放つと、流石に火力を調整しきれずに全身に燃え広がってしまうんだ。
ぼくは、チャンスとばかりにカインへと【ツボ押し】を食らわせた。
「イッテエ! アッチイ! シヌゥ! 助けてくれえええ」
カインは、自らが放った【ファイアパンチ】に焼かれる苦しみと、ぼくの放った【ツボ押し】によるダメージで、死ぬほどの
激痛を全身に浴びた。
──しかし、ぼくは少しも可哀想だとは思わなかった。
元々は自分でまいた種であるし、彼は散々ぼくをおとしいれようとしたのだ。
ぼくは。助けを求めるカインに構わずスキル【ツボ押し】を連撃した。
「ギャアアアアアアアッ」
彼の断末魔のような惨めな叫び声が、魔王城に響き渡った。
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