魔領
国王陛下の許しを得たぼく達は、早速魔王領に向かうこととした。
魔王とは、現在停戦協定を行っており基本的に人間が立ち入ることは戦争を意味する。
しかし、国王陛下からの許しを得た【使者】ならば大丈夫だ。
ぼく、アベル、マゼンタ、シアンの四人は【使者】の称号を貰って今魔王領との狭間に来ていた。
魔王領と人間領の間には、大きな谷間ができておりここが二つの領地を隔てている。
ぼく達は、唯一の通り道である橋を渡って魔王領へと踏み入った。
魔王領と一歩踏み入ると、そこからは物凄い魔力を感じた。
「うわ……物凄い魔力量だ。一歩前進するのもしんどい」
「確かに、これは凄まじいですね」
「うぐ……気持ち悪い。ルカ様助けて」
ぼく達は口々に、魔王領に入ったことへの感想を漏らした。
しかし、そんな中で一人ケロッとしている者がいた。
「みんな何してるの? 私は平気だよ?」
そう、シアンだけは平気であった。彼女には魔法がきかないため、それが影響しているのだと思われる。
「そ、そっか。じゃあシアンに遅れをとらないように頑張って進まなきゃ」
ぼくがそう号令をかけた時であった。
「居たぞ! 【聖女】が二人に【勇者】が一人、そしてあともう一人いる。こいつらを倒して魔王様のところへ持っていけばさぞお喜びになる」
「ああ、そうだな。ただ絶対に殺すなとの命令だ。あまり痛みつけるなよ?」
なんと二体の【ドラゴンライダー】がぼく達を襲ってきた。
彼らは、Sランク級の魔物で戦闘力だけでなく知能も高い。
「やめろ! ぼく達は【使者】だぞ。ぼく達を傷つけることは、人間との戦争を意味する。それでもいいのか?」
「構わん! それよりも大きな使命が我々にはあるのだ」
「なんだって……!」
(何を考えているんだこのドラゴンライダーは? それに聖女が二人? ぼく達のパーティに聖女はマゼンタだけのはず)
とにかく襲ってくる敵は倒す、それがぼく達の今やるべきことだ。
ぼく達はそれぞれ戦う武器を手に構えた。
「先んずれば人を制す! くらえ【ダークスラッシュ】」
【ドラゴンライダー】は、いきなり巨大な魔力を剣に纏わせた斬撃を放ってきた。
「させません! 【ドラゴンスラッシュ】」
アベルは【ドラゴンライダー】からの攻撃を、彼らの弱点属性である攻撃で防いだ。
(クソッ……! 【ドラゴンライダー】の奴、飛んでいやがって。ぼくの攻撃が届かない)
ぼくのスキル【施術】は、肉弾戦では滅法強く【勇者】にも引けを取らない自信がある。
しかし、その分射程距離が短くて今回のような空を飛んでいる相手には分が悪い。
一体どうすればよいのか、ぼくは困ってしまった。
「おい見ろ! 【勇者】以外まともに遠距離攻撃できないみたいだぞ」
「よっしゃあ! これで昇進確定だ!」
【ドラゴンライダー】達は調子付いて、更に攻撃の手を強めてきた。
それをなんとかアベルが、防いでくれているがもう長くはもたないだろう。
万事休すか。そう思った時だった。
(思い出すんだ、爺ちゃんがこうい時どうやって戦っていたのかを)
ぼくは記憶の片隅にある、爺ちゃんの武勇伝を引っ張り出してどう戦えばいいのか考えた。
(そうだ! 爺ちゃんは確か、こういうとき【気功】を飛ばして敵を倒したって言っていた)
ぼくは、やり方も知らなければ見たこともない【気功】という技術を、どうすればよいかイメージした。
おそらくは、全身に流れる魔力の流れを一箇所に集中させ、それを相手に放つ技だ。
「くっ……! ガス欠です」
ついにアベルの魔力が尽きてしまったようだ。
今度はぼくが戦うしかない。
ぼくは、謎のスキル【気功】を頭の中でイメージしそれを【ドラゴンライダー】に放った。
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