冒険
「セバス、領地統治は任せたよ」
「かしこまりました」
ぼくは信頼できる人物に領地統治を任せて、冒険に出ることにした。
それは、ぼくを追放した勇者パーティに復讐するためでであり自衛のためだ。
(徹底的に懲らしめてやらないと、イグニみたいにぼくを襲いにくるだろう)
勇者パーティに復讐するためには、戦闘要員が必要だ。
「アベル、ぼくはカインという勇者を自称する者を懲らしめに行こうと思う。着いてきてくれるかい?」
「私は、ルカ様のしもべです。どこへでも着いていきます」
「え、ルカどこかに行っちゃうの? なら私も連れていって!」
ぼく達が真面目な話をしている時に、シアンが乱入してきた。
まったく……シアンに聞かれないように、二人でこっそりと話をしていたのに。
女の勘というものは怖いものである。
「シアン、君は病弱だ。それに冒険に出るには戦える力がないと……」
「むぅ……確かに私は魔法が使えないけど、スキル? ってのが使えるもん!」
スキル……ぼくと同じだ。爺ちゃんからスキルというものについて教わったけれど、結局スキルとは
なんなのだろう。
この世界においては、魔法が使えることが絶対だ。
だからぼくは、一生懸命に回復魔法の勉強をした。
それに、カインは魔法を使えないながらも勇者として頑張っていると聞いて、尊敬していた。
それだけにぼくをあんな目に合わせた上、更には陥れようとしてきた。
彼だけは絶対に許せない。
ぼくは復讐心を胸に、冒険へと出た。
「それでこれからどこに向かうんですか?」
「勇者パーティは、今や指名手配を受けている罪人だ。まともな職業につけるとは思わない、たぶん傭兵をやっているんだと思う」
「傭兵、傭兵。ってことはリベアね!」
リベアとは、傭兵やならず者達が集まる街の名前だ。
「確かにリベアなら身を隠すのにちょうどいい場所だ。きっとそこに勇者パーティはいるはずだ」
「よしじゃあさっそく、リベアに向かいましょう!」
「そうだな」
ぼく達はリベアに向かった。半日ほどでつく距離だったので、昼ぐらいにはたどり着いた。
辿りついてそうそうぼく達の前に倒れている少女がいた。
少女は、銀髪の短い髪に緑色の瞳をしていた。
「大丈夫ですか!」
「ゲホッ……ゲホッ……」
どうやら相当酷い重症のようだ。
ぼくは、少女を起こして早速問診をはじめた。
「ハァ……ハァ……」
少女の息が荒い。
これは早く気道の確保をしなければ。
ぼくは、彼女を仰向けに寝かせて首を上に反らせた。
そして彼女の胸に耳をあてた。
すると、ぼくはある違和感に気がつく。
(ん……? この子ってもしかして)
その違和感とは別に、この子にまずいことが起きていた。
「やばい! この子心臓がとまってる」
「え!」
「ちょっとみんな後ろに下がって、【施術】をはじめるから」
ぼくは、まず彼女の上着を脱がせて上半身が息苦しくないようにした。
その後、この子の胸元を触った。
すると、後ろからシアンがこんなことを言ってきた。
「ちょっとルカ! なんで私以外の子の胸を触ってるのよ!」
「いや、これはそういうことじゃなくて、ちゃんとした治療だから!」
(女の子っていうのは嫉妬深い生き物だって爺ちゃんも言ってたなあ……)
確かにこの子が女の子ならば嫉妬の対象にもなるんだろうけれど──。
「ぷはっ、生き返りました」
「お、よかったよかった」
「はい、なんと言っていいやら。あなたはボクの恩人です」
ぼくが心臓マッサージをした結果その子は生き返った。
「いやーよかった、よかった。ん……ボク?」
「はい? そうですけれど──」
「え? えええええええ」
【勇者】アベルは大声で、叫び声をあげたのであった。
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