治療
ぼくは彼女の心の緊張をほぐすことができた。
心の緊張をほくぐすということは、体の緊張をほぐすことにも通じる。
まず治療の第一のアプローチには成功したようだ。
ぼくは下半身のタオルを剥いで、脚の【施術】から始めた。
彼女は、シアンよりもほっそりとしたスレンダーな脚であった。
「ちょっとひんやりしますからね」
そう言ってぼくは、王女の脚にオイルを塗りつけた。
「ヒヤッ」
彼女は、小さく声を漏らした。
「大丈夫ですよ、安心してぼくに身を委ねてください」
「は、はひ」
ぼくは、彼女の耳元で小さく呟いた。
彼女に安心して貰ったところでぼくは、【施術】をはじめた。
彼女はふくろはぎのあたりがよく硬くなっている。
そこでぼくは、新しい手技を彼女に披露した。
指をくねくねと脚に絡ませて、ピアノを弾くように優しく揉みほぐしていく。
このタコのような手の動きに、彼女はメロメロになった。
「あっ……あっ……あっ!」
「気持ちいいですか?」
「は、はい。とっても」
(んーこれだけふくろはぎが張っているということは)
ぼくは今度、足裏の【施術】を行うことにした。
「すみません、ちょっと手のひらとか……触っても大丈夫です?」
「は、はい。大丈夫でしてよ。それとお名前を聞かせてくださってもよろしくて?」
「ぼくの名前ですか? ルカと言います」
「ルカ様ですか……ありがとうございます」
「どうしてぼくの名前を?」
「いえ、初めて殿方に体を触られたので」
そうか。彼女は王女様だけあって、純潔を保っているのか。
ということは【施術】とはいえ、ぼくなんかと初めて手と手が触れ合ってしまって申し訳ないな。
ぼくはそんな気持ちになりながらも、手のひらの【施術】をはじめた。
彼女の手のひらを広げてもらい、ぼくは親指と人差し指のちょうど谷間の部分を押した。
「ッ……いたッ、痛い」
「大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です、我慢できます」
「そっか」
ぼくは、彼女が無事なことにホッとして【施術】を続けた。
「痛かったら言ってくださいね」
「わ、わかりました。それと……頼みがあるんですけどいいですか……?」
「はいなんでしょう?」
「耳元で私の名前を囁いてもらえないでしょうか?」
「あ、はい。いいですけれどお名前は……?」
「シャーロットって言います。シャロって呼んでください」
「わかりました」
耳元で囁いて欲しいと言ってもなんて言えばいいんだろう?
ぼくはどうすればよいのかわからなかったが、とりあえず見様見真似でやってみることにした。
「ねえ、シャロどう? 気持ちいい?」
「はい、とっても気持ちいいです……頭がトロけそうですわ」
「じゃあもっと、こうここをグッと……」
「あ、あっ! も、もう。ルカ様ったら意地悪です」
「意地悪……? ぼくが? 本当はもっとこう、してほしいんでしょ?」
「あんっ、そこっ。いい! いいですわ」
王女シャロはすっかりぼくの【施術】のとりこになってしまっていた。
こうなれば総仕上げだ。
ぼくは急にシャロにやっていた【施術】をやめた。
「あんっ、なんでやめてしまうんですか? ルカ様」
「なんでって? それはね……」
ぼくは、彼女の顔面すれすれまで自分の顔を近づけた。
それに驚いて彼女はポっと顔を赤らめた。
(よーし、これは面白い反応が見れそうだ)
ぼくは思い切り息を彼女の耳へと吹きかけた。
「ヒャッ」
(思った通り面白い反応が見れたぞ)
「も、もうルカ様ったらとても意地悪なんですから」
「ははは、ごめんなさい。でも、体の不調は治ったでしょう?」
「あ、本当ですわ。なんとお礼申し上げたらよいのやら」
そう言って彼女はぼくにお淑やかな表情を見せた。
それを見てぼくはドキッとした。
(やっぱり王女様だ。上品でとっても綺麗)
さっきまであまり意識していなかったが、シャロは金髪と青い目のコントラストがとても可愛らしい
女性だった。
「あ、あの……」
「それじゃあ治ったようなのでぼくはこれで」
「行ってしまいました、言いたことがアッたのに──」
シャロが何かいいかけたのはわかったが、最後まで聞くことができなかった。
とりあえずぼくは、国王陛下からの頼みを終えることができて満足した。
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