勇者
「ルカよ、よく来てくれた。感謝するぞ」
国王陛下にぼくは謁見した。
「陛下、ここにカインというものがやってくると聞いたのですが、それは本当ですか?」
「カイン? はて、知らぬのぉ。そちの他には【勇者】アベルしか来ておらぬぞ。何者じゃそいつは」
(どういうことだ……? もしかしてカインは【勇者】だと嘘をついていたのかな? でも──)
ぼくは、訳がわからず混乱してしまった。
カインは意地汚い男だったけれど、勇者の証とされる赤い龍の痣があった。
直接見たから間違いはないはずだけれど、もしかしたら入れ墨をいれていたのかもしれない。
だとしたら、これは一大事だ陛下にお伝えしなければ。
「先程話に出たカインという男ですが赤い龍の痣を持っていたのです」
「なんと! それは本当か?」
「本当です。おそらく入れ墨か何かだと思うのですが……」
「なるほど、それではその偽勇者に指名手配をかけよう。おい、本物の勇者をここに呼べ」
そう言って国王陛下は、部下に命じて本物の勇者を連れてきた。
本物の勇者は、金色の鎧に兜、仮面を被っていた。
勇者は、王様の前へやってくると礼儀正しく礼をした。
「国王陛下、今ここに【勇者】アベルやって参りました」
「うむよく来た、仮面を外せ」
国王陛下が【勇者】に命じると、アベルは素顔を見せた。
(え! どういうことだ? このアベルって【勇者】カインとそっくりだ。いやでも──)
なんとアベルはカインと見た目がそっくりであった。
しかし、アベルは髪が赤髪なのに対して、カインは金髪であった。
ジロジロとカインの顔を眺めていると、それに気づいて声をかけてきた。
「えーと、ルカ君だっけ? いや、領主だからルカ様と呼ぶべきか。ぼくの顔になにかついているかい?」
「いえ、そういうわけでは。ただ、知り合いに似ていたのでつい」
「ハハハ、まあ世界には似ている人が三人はいるって言うからね。そういうこともあるだろさ」
カインは、意地汚いアベルと違いとても明るい好青年であった。
(また騙されるか心配だったけれど、この人なら大丈夫そうだ)
「なんじゃ、二人とももう仲良くなったようじゃの? よいよい、これから【勇者】アベルはルカ君の部下になってもらう」
「わかりました」
なんと国王陛下は、【勇者】をぼくの部下にしてくれた。
今までカインの元で冒険をしていたぼくからしたら、立場が逆転し大出世だ。
(カインは酷いパーティリーダーだったけれど、ぼくはこの人を大切にしてあげよう)
「ところで、ルカ君よ」
「はい、なんでしょう国王陛下」
「君は、シアンという少女の呪いを治療したと聞く。実は我が娘も謎の病に犯されているのじゃ。国が誇る【回復術師】が
なにをやってもお手上げなのじゃ、そこで君に治療を任せたいのじゃ」
「わかりました! なんとしてでも治してみせます。【神の手】である爺ちゃんの名にかけて!」
「おお、なんとルカ君はあの【神の手】の孫だったのかそれはとても心強い、娘の部屋に案内しよう」
ぼくは、国王陛下に連れられて娘である王女の部屋へと連れて行かれた。
王女の部屋では、【回復術師】が絶えず魔法を唱えていた。
「【回復】」
「クッ……アッ……グッ……」
しかし、王女の病気は治ることがないどころかどんどん悪化していっているのがわかった。
(とても苦しそうだ……早く治してあげなきゃ)
「すみませんが、ぼくと王女様二人だけにしてくれませんか?」
「わかった、出ていこう」
国王がそう言うと、ぼくと王女は二人きりになった。
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