追放
「えーい【回復】」
ぼくは、魔法を唱えてパーティメンバーを回復させた。
「おう。ありがとうな、ルカ」
そう言ってくれたのは勇者でありパーティリーダーのカイン。
とても強くて、皆から慕われている。
「ちょっとルカ! さっきからちょっと回復のタイミング遅れてるよ?」
そうぼくを注意してきたのは、サブリーダーのマゼンタ。
リーダーお気に入りの少女だ。
「えへへ、ごめんなさい」
彼女はとても優しくて、仲間が傷ついたらすぐに近寄って何か
アドバイスをしている。
今日はぼくの回復タイミングが遅いことを注意してくれた。
「もうルカったらー」
「ちょっと注意力散漫なんじゃないか?」
【メイジ】を務める少女と、【タンク】を務める青年にも注意された。
こんな暖かい仲間達に助けられながら、ルカ楽しく冒険しています!
「よーし日も暮れてきたし、今日は帰るとするか」
「はーい」
「今日はルカが入って一ヶ月だ。たっぷり楽しもうぜ!」
(何かお祝いでもしてくれるのかな……?)
ぼくは皆が何をしてくれるのか楽しみでウキウキした。
そんなことを考えながら、冒険を終えてギルドに戻った。
心なしか皆ニコニコ笑っている。
(きっと、盛大なお祝いが始まるんだろうな)
そんなことを考えていると、リーダーが口を開いた。
「お前もうパーティ追放な?」
(え……)
一瞬何が起こったのかわからなかった。
(もしかしたら今日ぼくの回復が遅れたのが悪かったのかもしれない)
ぼくはそう考えて、とりあえず必死にお願いしてみた。
「待ってください! ぼくはまだ戦えます、まだ皆さんの戦力になれますから」
ぼくは必死に謝った。
だけどパーティのメンバーは一人もかばってくれない。
土下座をするけどみんな溜息をつくばかりだ。
サブリーダーがようやく口を開いた。。
「あんたさ、わかってんの? 自分が回復術師として失格だってこと」
「え?」
ぼくは予想していなかった答えに驚いた。
(皆を危ない目に合わせたことはない。なのにぼくが回復術師として失格だって……?)
ぼくはその場に立ち尽くした。
その様子を見てリーダーは呆れた顔で、ぼくに近寄ってくる。
「テメエは役立たずだ、ささっと消え失せろ」
彼がそんな言葉を浴びせると、ついにみんなは笑い出した。
「キャハハハ、あー。スカッとしたー!」
「え? え? どういうこと?」
ぼくは状況が全く飲み込めずにいた。
そんなぼくをみんなで笑い者にしている。
「お前は目障りなんだよ」
ぼくは目の前が真っ白になった。
(なんでいきなりこんなことを言ってくるの?)
ぼくはぶざまな顔を晒す。
「そうだよ。それ! それ! その顔が見たくてわざわざパーティに誘ったんだよ。なあ? みんな」
「そうそう、わざと攻撃を食らってダメージを受けたフリするのとかめっちゃ苦労したわー」
サブリーダーのマゼンタは大爆笑だ。
他のパーティメンバーもクスクスと笑い声をあげる。
「もうあんたトロいから全部言っちゃうよ? 私達があんたを誘ったのは、こうやって追放する時にどういう反応をするのか見るのが楽しくてたま
んないからなのよ。本当は私が回復術師をやっていて、あんたが回復する前に私が回復呪文を唱えてたのよ。気づかなかった?」
そうマゼンタに言われたとき、涙があふれいていた。
ぼくが過ごしたあの一ヶ月の冒険はウソだったの?
ぼくのガラスの心は砕け散った。
「ま、そういうわけだ。お前いらないから出ていけ」
そうしてぼくはパーティを追放された。
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