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歴代最強の帝国皇女は敵国騎士と結ばれたい  作者: 永頼水ロキ
第三章
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第十二話 最強皇女は敵国騎士と結ばれたい

 二人が向かい合って会場の中央に立つと、他にも何組かがその場に立ち、他の者達はそれを静かに見守っていた。


「そのマスクだと口元も見えないね」

「その方がかっこいいと思ったから」


 アデレードの黒い仮面は、目鼻を隠す黒い革製のハーフマスクに、口元を隠すように黒いベールをおろしたようになっている。ユリウスは白いハーフマスクなので口元は周りからも見える。


 ユリウスにエスコートされつつ、ダンスのために二人は体を寄せた。そして、ゆっくりとした音楽が始まり、それに合わせてダンスを踊る。


「ユリウス、ありがとう」

「いや、上手くいかなかった。根回しは済ませたつもりだったんだが、すまない」

「ううん。この場を設けただけで、レオールのトップがディスタードと歩み寄ろうとしていること。そして、ディスタードの次期女帝がそれに応えようとしていることは伝わったはず。まだ時間がかかるだけ」


 アデレードは躍りながら、隙をみてユリウスの服のポケットに赤い石を忍ばせた。


 それにユリウスは気がついたようで、視線が一瞬揺らぎ周りを見渡すように動いた。


「ここからは別のことを答えて。口元を見られているから」

「……もう一度連合する国に呼び掛けてみるさ。もしかしたら分かってくれる国も現れるかもしれない」

傀儡糸(くぐつし)による各国要人の傀儡化(かいらいか)が進んでいる。今回、反対の立場をとった国の多くにエニグマの手が及んでいて、ここにもいる」

「マリアの親戚筋も広いからね。彼女から呼び掛けてもらうのもありかもしれない」

「昨日一日ではここまでが限界だった。エニグマの目的や傀儡糸のルート、どこまで各国にどの程度浸透しているかは分からない」

「いや、あいつだって頼りになるんだ。意外とレオもやるから期待してくれ」

「あと『伝令』は盗聴できることがわかった。協会は敵ではないけど味方でもない。魔力には秘密があった」

「……そうか。ありがとう」

「魔力には単純な表の使い方と、少し工夫した使い方ができることがあるみたい。『伝令』は意図した相手にだけ連絡をとれて戦略性が高い。だから、各国で取り決め、今は『伝令』持ちの家系が全ての国にいる。その『伝令』に割り込んで盗聴することが一部の使い手にはできて、エニグマにその使い手がいる」

「じゃあ、レオとマリア、それにルーカスやクリスティーナも巻き込もう」

「だから今までは情報戦で奴らに負けていた。でも、これからはそれを逆手に取れる。あとでプレゼントの赤い石に魔力を流して。疑似的に『伝令』が使えて、そちらは盗聴されないから続きはそこで……」


 ああ、こんな話をしたかった訳じゃなかったのに……。せっかくのダンスが……。ううん。さあ、あとはスーザンにも赤い石を渡せれば計画を進められる。


「……アディ」

「ん?」

「君と出会えたことに感謝している」


 ……え。


「俺はあの日、海岸で君に出会ったことは。それが誰かの陰謀だったり、仕組まれたことだったとしても。そんなことよりもずっと大きな運命で出会ったのだと思っている」

「……陰謀……運命」

「そう。時々思い出すんだ。あの時、あまりに出来すぎていたって。だってそうだろ?帝国皇女が記憶を失い、俺のすぐ目の前の海岸に流れ着くなんて。意図を感じる」

「……確かにあれは、先生……ウリエル司教が何か目的を持ってしたこと」

「そうか。でも、その彼にもたぶん分かっていなかったことがある」

「何?」


 ダンスの音楽が終わりに差し掛かる。的確なユリウスのリードでアデレードはダンスを踊っていた。


「アディと俺の出会いは、アディも分かっていると思うけど、とても大切なことで嬉しいことだった」

「……ユリウス」

「出会いは人を変える。そして、それは誰にも計算なんて出来やしない。俺にとって君との出会いは衝撃で、すべての価値観を変えるぐらいのことだった。君との出会いがなければ、喜んで帝国との戦争に足を踏み入れていたから」

「……私もきっとそう」

「アディ、君のことが好きだ」


 アデレードはびっくりしてユリウスの目をみた。周りの何人かは読唇術で気付いたのだろう。ざわざわと雑音が大きくなった気がした。


「責任ある俺達は軽々しくはなれない。だから今は約束する。必ずこの不安定な世界を変えること。堂々とアディの手を取れる未来をつかみとること」

「……うん。うん」

「任せてくれ」


 アデレードはそれ以上声が出なかった。ただ、ゆっくり踊りながら、ユリウスの動きに身を任せ、抱き合っていた。暖かなユリウスの体温を感じながら。思っていた以上に自分が不安を感じていたことに、今更ながら理解した。今は感じる安心感がそれを再確認させてくれた。


 ……ユリウスと一緒になるために。そう、世界を変えよう。

第一節ここまでです。


次回第十三話 三人の幼馴染み

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