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歴代最強の帝国皇女は敵国騎士と結ばれたい  作者: 永頼水ロキ
第三章
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第七話 最強皇女の婚約者候補

 アデレードは今回の内乱鎮圧に全権を皇帝カサエルから委譲されていた。そこには特殊部隊「土竜」の貸与も含まれている。


「――問題ないですね?」


 任務を伝えると闇に潜む彼らに念を押した。とはいえ、彼らが失敗する可能性は低いだろう。


「御意」

「……ティアは残ってもらえますか」


 土竜の他のメンバーは下がり、ティアだけが残った。


「ティアはアーロン侯や子息について何か知っていますか?」

「……親戚ではありますがあまり交流がございません。ハト派の貴族たちを取り纏めてはいますが、今まで名目上でした」


 土竜にいつも構成員を出している家名であり、そして、今回アデレードの婚約者候補としてこの家の令息が選ばれた。ということは、本来政治的に大きな力を持つはずだが、実情はそうではない印象が強かった。帝国内であまり目立たない貴族。それがアデレードの彼らに対する元々の印象だった。


「アーロン候の子息はロック殿で、彼については特筆することがあります」

「何ですか?」

「もともと病弱であまり社交界に出ることがなかったのですが、最近は体調が良くなったのか問題なく動けるようになりました」

「……それで?」

「父親のアーロン候より交渉事に優れているのと政治的な動きが上手いようで、ハト派の取り纏めとして父親より優れた手腕を発揮し始めているようです」

「……そう。私が未だ会ったことはなかったのは、最近まで体調が悪かったためであり、婚約者候補になったのは家柄というより彼自身の政治手腕への期待が影響しているということですか?」

「それは私には分かりかねますが、あるいはそうです。確かアデレード様と同世代の令息の中での評判は良かったはずです」

「……分かりました。もう下がって良いです」

「失礼いたします」


 なるほど。あまり同世代との交流が少なくて……。というより、社交界への参加もベールで隠して控えていたからよく知らなかった。


 そして、これからついに彼と会うことになる――。


 ――城の会議室には、エイデン、アーロン、そしてロックが待っていた。


 ロックは黒髪の短髪で刈り上げた髪型だった。軍人のような鋭さのある、目鼻立ちがはっきりしていて、確かに男女問わず魅力的に見える見た目だ。年齢は同い年である。


「ようやくお会いできました。はじめまして、アデレード殿下。私がロック・リカーブです」

「はじめまして、アデレード・オブ・ディスタードです。アーロン殿より優秀なのですか?」


 笑顔で軽く言葉で小突いてみる。さて、どのように反応するのか。


 ロックは少しも動揺した様子は見せず、ぱっと笑顔を向けてくる。


「ありがとうございます。日々、父上からは政治を勉強することの大切さを教えられています。そのために私に自ら動く機会をいくつか頂き、実地で学んでいるところです」


 ……なるほど。


「アデレード殿下にはお願いがありまして、まずそれをお伝えしたいのですが宜しいでしょうか?」

「何でしょうか」

「今回、アデレード殿下自ら戦場に立たれること、臣下の一人として尊敬しておりますが、ぜひその背中を守らせていただきたいのです」

「うむ、まずは席に座ってそれから話しましょう」


 エイデンは咳払いすると若者をいさめた。


 会議室の椅子に全員が腰掛けると、アーロンから説明を始める。


「黒騎士による護衛がつくことは存じ上げていますが、ぜひこのロックを殿下のお側に置いていただきたいのです。これは魔力が優れており、万が一の時にも役にたつでしょう」

「……殿下、土竜の面子は側に置かれますかな?」


 エイデンは目を瞑ったままアデレードに聞いてきた。明らか二人の動きを面白くないと思っている顔だ。おそらく、土竜の面子とはティアのことだろうと思われた。同じ家名の魔力持ちの、それも特別に訓練された者が側にいるなら、ロックが側にいる理由はなくなる。


「いいえ。当日、彼らは別の任務につけているので、ポータルでの移動後は黒騎士のみ私の側につきます」

「ふむ。では、私の方からも護衛をつけましょう」

「エイデン候の?」

「はい。不肖の娘ではありますが、魔力はそれなりです。それに戦場とはいえ、殿下のお側で()()()()()()()()()が一人はいた方がよいでしょう。黒騎士隊には女性騎士がいなかったかと」


 ……ケイトを連れていくわけにはいかないから、まあ確かに。


 右と左の派閥争いは何処でも起こる。タカ派にあって、かつ、アデレードに釣り合う若手がいなかったのか、エイデンはロックの対抗馬、婚約者候補を用意できていなかった。


「さて、では本題に入りましょう」

「ええ」


 ――作戦を確認する。それほど時間に余裕はなく、進軍を続けている反乱軍は、進みながら膨れ上がりつつ、クロイスター領との境に至るのは明後日の見込みだ。


「――この地形を利用し、連中をまとめる予定です」


 一見すると平地だが、実は季節によって沼地となる。今は乾燥期にあり乾いている。そこに水を流して、彼らの足を止めさせ、乾いた土地の方に誘導し集める計画である。


 そのための魔力が『水生』だ。戦略のうち帝国の水計を担うのがクロイスター家である。何もないところから水を生み出すことが出来、中でもエイデンの魔力量は歴代でも随一で、洪水を起こせるほど。


「……連中はクロイスター家の水計を警戒していますから、おそらく、すぐに目的の場所に誘導されるでしょう。よく見える高台の方に」


 この高台の土地は広大で、軍を一つ置けるほど開けている。そして、そこを見下ろせるように、さらに高い山の頂があって、この高台はそこからだと丸見えになっている。あとは、その山の頂に立つアデレードの餌食になるだけだ。


「……作戦が事前に察知されている可能性はありますか?もしくは、途中で気付かれる可能性は」

「彼らが上手く誘導されない場合は、別動隊を使って奇襲します。その場合は少し両軍に被害が出ますが、ハト派側の領地から軍が現れるとは、さすがに予見できないかと」


 ロックが"プランB"を説明してくる。反乱軍は現在の位置まで進軍する際に、ハト派の領地の側をすんなり通ってきている。いつものことで彼らは日和見に動かない。そう思わせていた。


「分かりました。その場合は、リカーブ家の領軍を借ります」

「お任せ下さい」


 ロックはすっと立ち上がって一礼した。

次回第八話 最強皇女

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