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歴代最強の帝国皇女は敵国騎士と結ばれたい  作者: 永頼水ロキ
第三章
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第三話 帝国の最高戦力

 ベッドの中でそっと瞳を開いた。ベッドカーテンの天蓋が見えた。そして、窓の方から鳥のさえずりが聞こえる。久しぶりに夢を見た気がしたが、内容は霞のように消えて忘れてしまった。


 アデレードはベッドから降りると、テーブルに近寄りベルを鳴らした。するとすぐに扉からノックが聞こえてケイトが入ってきた。


「すぐに着替えをお願い」

「承知しました」


 着替え、化粧、ヘアセット……。皇女殿下が作られていく。深呼吸して心も切り替える。朝食を手早く済ませた後は、エイデンやアーロンが集めた味方の諸侯との緊急会合を予定していた。


 普段はタカ派が発言力を持つけど、今回はハト派に大きく動いてもらうことになる。ただ、彼らは積極的に戦うことはないわね。さて、どうしようか。


 タカ派筆頭はエイデン・クロイスター侯爵であり、ハト派筆頭はアーロン・リカーブ侯爵だ。もともとリカーブ家は土竜に構成員を有する家柄のため、皇族への忠誠心は高く、どちらかといえば、タカ派が国の意見を聞かないことがあった。ただ、エイデンを味方につけてからは状況は変わりつつあった。


 この内乱は予想の範囲。少し予想より早くて関係の調整が間に合ってないことが問題か……。


 アーロンとはあまり接する機会は少なかった。ハト派というと纏まりがあるように聞こえるが、実情は中道に近く、また、日和見な者達が多い。アーロンが筆頭とされていても、それは単に面倒事をやらされているだけ。エイデンとは立場が異なった。そのため、ハト派の貴族達には個別に関係を作っていた。そして、アーロンだけに特段の関係を作ってはいなかった。


 ……確か、ティアとは別の家で親戚筋なのよね。


 もう少し興味を持ってもよかったのかもしれない。アデレードの婚約者候補がアーロンの息子なのだから。


 まだ、会ったこともないけど。


 アデレードが気になっているのは、アーロンが今回の内乱で積極的に武功をたててしまった場合だ。日和見とはいえ野心が無いわけでもないだろう。もしそうなると、アーロンの息子が婚約者として固まってしまう可能性が現実味を帯びてくる。


 となると――。


 ――朝食を普段より手早く終えると、会議室の円卓に向かった。黒騎士たちが周りを固め、足音をたてながら城の廊下を進む。


 部屋にはいる。円卓を囲むように諸侯が立っていた。そして、宰相の隣席の前に進んだ。少しして皇帝カサエルがその場にやってくると、全員が敬礼をした後に皇帝着席後に皆座る。


 カサエルは黙って腕を組んでいた。いつものことだが、宰相が一度咳払いの後に口を開く。


「……皆様、至急の呼び掛けにお応え頂き――」


 一通りの挨拶やら説明やら終えると、いつもの流れでアデレードが口を開くことになる。かつては宰相がそのまま話続けた。事前の皇后ソフィアとの取り決め通りに。


 ソフィア亡き今、その役目はアデレードが担っていた。普通とは違うだろうが皆文句を言うことはない。むしろアデレードが前面に出るようになってからの方がスムーズだった。


 ……だからこそ、御兄様との不仲が決定的になったのだけど。


 周りに気付かれないよう静かに深呼吸してから口を開く。


「以前から、民より自分の利益だけを追求し麻薬等に手を出していた者達が、ついに我が帝国に反旗を翻しました。我が皇帝陛下に刃を向けた不届き者には破滅しかありません。詳細な今後の作戦については将軍から説明させますが、諸侯においては我が皇帝陛下のために尽力することを望みます」


 タカ派でも麻薬を扱わなかった者や、ハト派でもこの機会に領地を拡大することを狙う者など、少し熱量が増した気がした。滅ぼされた貴族の領地が今回の報奨に望めると思っているのかもしれない。


 ま、そう甘くはないけどね。


 将軍が立ち上がると一連の作戦を説明しはじめた。円卓には地図が広げられ駒も置かれていて、それを動かしながら各諸侯の動きについて確認する。


「――え?では、アデレード皇女殿下が自ら戦場に立たれるのですか?!」


 最後の作戦を説明されたアーロンが立ち上がった。今回あまり根回しは出来ていないというより、今日朝食をとりながら将軍に説明した内容だったわけで……。つまりは初めて諸侯に作戦を御披露目したわけだ。驚く諸侯が多かったその一方で、エイデンは納得したのか満足したような表情が伺えた。


「さすがは皇女殿下ですな。自ら率先して動かれるとは」

「しかし!危険では?!」

「問題ありません。黒騎士や国軍を配します。それに私の魔力ならば簡単に制圧出来るでしょう」

「……アーロン候、ここまでされては我らも全身全霊をもってお応えすべきでしょうな」


 アーロンは少し間をあけて頷いた。ほかのいくつかの諸侯も明らか動揺していた。


 あてが外れた……。そういう顔。この作戦のほとんどは私による解決策。つまり最大功労者は私であり皇族となる。おそらく何人かは今回の反乱で皇族が力を落として、自分達に有利な政治にすることが出来ると思っていた。でも、実際にはこの反乱は予定されたものに過ぎない。それを知った。そんなところかな。

次回第四話 午前の講義

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