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歴代最強の帝国皇女は敵国騎士と結ばれたい  作者: 永頼水ロキ
第二章
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第二十八話 Day1…サプライズ

 遂にこの日がやってきた。準備万端、あとは天気に恵まれれば最高。


「では、馬車を受け取りに行ってきます。こちらでお待ちください」


 黒騎士隊長ウィリアムはそう言ってホテルをあとにした。それを見届けるとアデレードは動き出す。


 ユリウスの邸に着くと、家令のマキシアスが応対してくれた。


「おや、アディさん。まだ約束の時間より早いようですが。それにお一人ですか?」


 ユリウスとマキシアスは、"マルーンの君"の『変装』をやめていたアデレードを未だに「アディ」と呼び続けていた。


「ええ。ちょっと予定を変更したくてユリウスに会えませんか?」

「……承知しました。どうぞお入り下さい」


 案内された客間は、記憶喪失で目覚めたあの部屋だった。懐かしくて少しうろうろと部屋を歩き回っていると、ノックの音がしてユリウスが入ってきた。


「アディ、どうしたんだ?」

「うん。待ち合わせ場所が変わったから呼びにきた。あと出来ればすぐに出たいんだけど、どうかな」

「ん?ああ、準備は出来ているが、馬車がここにくるんじゃなかったのか?」

「荷物は多い?」

「……いや、着替えだけにしてくれという話だったから、大きなスーツケースだけだ」

「そしたら、出来ればそれを持って一緒について来てくれる?出発したい」


 少し首を傾げながらもユリウスは頷いてくれた。


 ――二人で街道を歩き、待ち合わせの場所に向かう。


 馬車の停留所の一つに着くと、その奥にドナルドが待っていた。椅子に腰掛けて手元の杖に顎を乗せていた。じっと半眼でこちらを見てくる。


「……面倒事ばかりですな」

「分かっているから、ちゃんと割り増しで支払うよ」

「この馬車に言われた物は積んである。それにウィリアムにも別の場所に用意した上で――」

「これを」


 ドナルドのしゃべりを途中で妨害すると、有無を言わさず覚書を渡した。そこに経費と支払い条件がアデレードのサイン付きで書かれている。


 ドナルドはその中身を確認して、鼻を鳴らすと立ち上がった。そして、何も言わずに去っていく。


「ウィリアム殿は……」

「うん。別行動になったんだよ。あと行き先を変えたくて、とりあえず一緒に御者台に乗ろう」

「あ、ああ。分かった」


 馬車は最高級品でほとんど揺れない。ドナルドは何だかんだと文句を言うが、いつも仕事はしっかりしていた。


 街道を行き街を出る。ユリウスが手綱を引いていて、アデレードが行き先を案内する。


「それで、どこに行くことにしたんだ?」

「うん、ミニエーラ王国には鉱山ともう一つ名物が有るのを知ってる?」

「ん?ああ、温泉だな。山が多いから活火山もあって温泉地も多い」

「そう。そこの一つに行きたくて」


 ちょうど今の季節は花の見所も多い。温暖なミニエーラでも標高の高い有名温泉街は冷える。その温泉街がもっとも良い花の季節に入っていて、アデレードとしてはずっと行きたかった。


「山木の花が綺麗に咲いているって……ユリウス?」

「あ、ああ、いや。そうなのか」


 横に顔を向けると、ユリウスの顔が真っ赤になっていた。


 え?どうしたの?


「何か気になることでもあった?」

「いや、大丈夫だ。俺も聞いたことがある。山桜の群生がある街だとか」

「そう、そこ。道はわかる?」

「ああ、だいたいは」


 ここからだと一ヶ所小さな町を経由すれば着く。


 例の国境線の橋についた。橋を渡りきった先にミニエーラ王国の警備兵が待っていた。以前はユリウスが事前に話を通しておいてくれたためすんなり通してくれていた。その警備の駐屯所の前で二人は降りた。


「こんにちは」

「身分証と通行証を確認させてもらう」

「どうぞ」


 アデレードが用意しておいた通行証と自分の身分証を出した。それを見てユリウスも自分の通行証を出す。アデレードの身分証はアディ・ライアーとなっている。


「……目的地はどこになる?」


 証書を確認しながら警備兵の一人が確認してきた。


「ブローサーを経由して、サトルニーに行く予定です」

「新婚旅行かな?サルトニーは今良い時期だよ!」


 ひょこっと横から出てきた別の警備兵が軽い感じでそう話しかけてきた。


「あ、いや、まだ……じゃなく。ただの旅行で」


 ユリウスが珍しい感じになっていた。初めて見るかもしれない慌てかただったので、ちょっと吹き出してアデレードは笑ってしまった。


「良いねえ、美人の彼女で!どうぞ、ミニエーラ王国へ!」

「おい、まだチェックが済んでないだろ!」

「ユリウス様といえばレオール王国の公爵様。今さら荷物をあらためるまでもないだろ?」

「領主様からのお達しがあるだろ!」

「侯爵からの通達?」


 ユリウスが一気に引き締まった顔になった。すると、軽い雰囲気の警備兵の方が答える。


「あ、ええ。何でもレオール王国側からの密入国が急に増えているようで、警備を強化しているんですよ」

「おい!」

「とにかく、公爵様を無下にしたと国際問題にされてもかなわないだろ、お通ししようぜ」

「……分かった。通って良いぞ」

「……ありがとう」


 馬車に乗り込み、再び馬を走らせる。


「……密入国」

「もしかしたら、この前の関係で逃亡した者達とか?」

「かもしれないな」


 このペースなら予定より早く目的地に着きそうだった。今のところは天気には恵まれていて、太陽がきらきら光っていた。


 邪魔するなら容赦しないけど。まあ、温泉街には逃げないよね。

次回第二十九話 Day1…最初の町へ

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