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歴代最強の帝国皇女は敵国騎士と結ばれたい  作者: 永頼水ロキ
第二章
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第一話 神話(おとぎばなし)

 協会の神殿には壁面にステンドグラスが必ず設置されており、そこに描かれているものは、協会の唱える神話が紙芝居のように順に描かれている。どこの国の神殿でも全て同じである。


 その神話はこの世界に生きるものであれば一度は聞いたことがあるお話だった。神父は何度となく語ってきた物語を、いつものように説法の最初に語る。


 ――――

 むかし、その一柱の神は他の神々より大きな力を持ってこの世界に君臨していた。人の営みも獣の営みも木々の営みも全てがこの神一柱に支えられていた。神は人に国と文化と言葉を与えた。

 しかし、いつしかその神の心はその力に溺れて腐敗した。多くの人が神の戯れに殺され、世界は闇に包まれた。神の驕りが世界を腐らせていった。

 神々はこの一柱の暴挙を許さず協力して倒した。

 倒されたその神は雫となって世界に降り注ぎ、その力は大地に帰った。

 いつしか人がその力を受け継いでいた。神の御業の一部を受け継いだ人が現れた。

 しかし、神々は仰られた。その力に驕ってはならないと、驕ればかつて滅ぼされた神のようになるだろう、と。

 ――――


「――いつもありがとうございます。あなたのように信心深い方はずいぶん減ってしまいました」


 説法を終えた神父は男に近づいてくると、少し残念そうな面持ちで声をかけてきた。男が周りを見渡すと、確かに参拝者が昔より少なくなったと感じた。


「そうですね。ですが、それだけ人々の暮らしが良くなったといえるのかもしれません。神に頼るのは困ったときでしょうから」


 神父は納得したように少し笑うと神殿の奥にさがった。


 男は自分の右頬に手を当てた。そこにはかつての火傷の跡がある。指先にごつごつとその感触が伝わる。男の原動力は神への信仰とこの怒りだ。


 後ろに座っていた部下が小さな声で報告してくる。


「どうやら漆黒の姫が鳩と仲良くなろうとしているようです」


 やはり鷹とは相性が悪かったらしい。


「戦争を終わらせたいと?」

「はい」


 ディスタードの皇女は皇子に暗殺されたと思われていた。しかし生きていた。そして、皇子は現在幽閉されている。つまり、この政権内の抗争は皇女の勝利で終わったことになる。


 その皇女は戦争を否定するハト派の貴族に近付いている。嘘か真か、敵国の公爵とも繋がりを取り付けているらしい。


「本当に不思議な存在だな」

「……消しますか?」

「いや――」


 彼女はおそらく神の強い加護を受けている。


 神話において、滅ぼされたという神は数多の神力を使うことができたという、それは分かたれたあと人に宿って魔力となった。魔力『平伏』は最もその神が多用した力であり、神話の中で大きな動きの時には常に用いられた力だ。そのため、他の魔力とは一線を画すと男は考えていた。


 その『平伏』をあれほどまで使える存在は、もはや神に匹敵すると言っても良い。


「彼のように、神から見放されかねないからな」


 敵対することより近付きたい。男は考えていた。どうやったら彼女を手に入れることが出来るのか。


 * * *


 アデレードは協会の帝国支部、城下町の片隅にある大きな神殿を訪れていた。引き連れた皇女直属の黒騎手たちは神殿の裏手に待たせていた。


 先生、協会司教ウリエルの部屋は相変わらず意味のわからない物がいくつも置かれていた。


「アデレード様の方からいらっしゃるなんて、どうされたのですか?」

「先生が私の記憶を封じ、あの時私をレオール王国の海岸に置いていった。それを確認しに来たのよ」

「ええ、そうですよ」


 え?


 あっさりと答えたウリエルは平然としていた。


「……何が目的?」

「最近は良くお調べものをされるようになったと聞いております。郊外授業が上手くいったようで何よりでした」


 椅子に座っていたアデレードは立ち上がった。


「馬鹿にしているの?!」

「まさか!アデレード様にそのようなことはできません。私はただ、アデレード様のご希望にそっただけです」

「先生の魔力はなんなの。父上に確認しても教えてはくださらなかった」

「皇帝陛下がお教えにならなかったことを私からは申せませんね」


 アデレードが眉間にシワを寄せて口を開くところで、ウリエルが先に言葉を続けてそれを塞ぐ。


「それよりも、もっと知りたいことがあって来たのでしょう」


 この男はどこにでも耳と目がついているらしい。


「分かった。この件はまた後日にする……。戦争孤児の多くが行方不明になっていることが分かった。レオール王国でも同様の事例が確認されている。レオール王国や他の国にも支部をもつ貴殿方協会なら何か知っていることがないかと」


 ウリエルは目を瞑った。


「協会のルールはご存じですね」

「……全ての人々に救済を与え、如何なる国にも関与しない。でも、孤児を救うためなら」

「そうですね。ご存知ならば問題ないです。さて、紅茶をいれてもらいましょう」


 ウリエルはそういうと、懐から赤い石を取り出した。

次回第二話 ユリウスの婚約者

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