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歴代最強の帝国皇女は敵国騎士と結ばれたい  作者: 永頼水ロキ
第三章
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第二十四話 主張なきテロリズム

 アデレードにかけられていた『変装』は未だにそのままに、アディ・ライアーとしてそこにいた。


 アデレードとカサンドラはエニグマに連れられ、レオール王国の街道を馬車で移動している。カサンドラはきつく縛られ、爆弾が仕掛けられているというチョーカーが首輪としてアデレードには着けられていた。


「申し訳ございません、殿下……」


 身内に裏切り者を抱えていたこと。それは、カサンドラにしてみれば怒りもあれば、悔恨の念も強いのだろう。


 アデレードはただ静かにしていた。


 そういえば鉱石街で誘拐された時は、マリアさんに助けられたんだっけ……。あの時は抵抗する方法なんて思いもよらなかったから、怖かったんだよね。


 妙に落ち着いていた。


 ウィリアムが来れなくなったこと。ユリウスが遅れていたこと。おそらくは全てエニグマの計画だった。


 アデレードは自らを誘拐したエニグマの目的について考えをまとめていく。


 カサンドラは『診断』で『変装』を見抜けるから、私を偽物と入れ換えるのに邪魔だった。あの時、ヘンリーとティアが出ていったタイミングは、この状況を作るのに完璧。ティアのことは一度ユリウスは見ていてエニグマではないと言っていた。だからあの時、二人が離れたことは偶然かな。ヘンリーもエニグマである可能性が完全には否定できないけど、総合的に考えると違うように思う。


 馬車から外は見えなかった。ただ振動だけを感じながら目を閉じる。


 帝国の実権は私が持っているといっていい。でも、ディアク家はカサンドラだけじゃない。ずっと騙し続けるなんて不可能。だから、カードとして残さざるを得ないから私を殺せはしない。


 目を開けて縛られたカサンドラを見た。恐怖したのか彼女はうつむいた。


 カサンドラをあの場で撃たなかったのは、とりあえずまだアデレードの偽物を置きたいから。あの場に彼女の死体があっては騙せない。なら、適当な場所についたらカサンドラは殺されてしまうかもしれない。生かしておく価値はなさそう。


 馬車を見回した。鍵が外からかけられていて窓はなく、荷馬車として偽装されていた。


 一時的に偽物の皇女を置くことでできること。


 エニグマの目的。


 ……もしも破壊そのもの、社会に対する攻撃という、エニグマが今までやってきたことそのものが目的なら……。


「……戦争を起こさせる」


 起きてしまえば、その後戻ってもアデレードにはどうすることもできない。あれは偽物のやったことだったのですといって、誰が許してくれるのか。


 そうか、エニグマに裏なんて無いのかもしれない。最初からやりたいことをやっていただけ。世界を壊そうとしていただけだ。そう考えた方が単純だし、分かりやすく説明がつく。


「……だからエニグマは掴めなかった」


 ただ世界を憎み、世界を壊す。破壊(テロ)そのものを目的としたテロリスト。どんな組織も利益が目的となるのに、彼らは破壊という無、生産性のないことを目的にしていた。それなら実体なんて捉えられるわけがない。元々実体なんて無いのだから。


 ユリウスが見出だそうとしたエニグマの正体は、目の前の破壊そのものだった。


「あの……」


 アデレードの独り言を聞いて、おずおずとカサンドラが見上げてきた。


「考えをまとめていたのよ。貴方はとりあえず大人しくしていなさい」


 私はアデレード・オブ・ディスタード。帝国第一皇女で歴代最強。私に敵対してただで済むと思っているなら、それは間違いだということを分からせてあげる。エニグマ。


 アデレードはそっと目を閉じた。


 暫く馬車で揺られ……止まった。


 鍵が開く音が聞こえて覆面の男が戸を開けると、二人を外に連れ出した。


 目の前には森が広がっていて、その中にぽつんと炭焼き小屋のような丸太小屋があった。


 無言の男に連れられ、二人はその小屋に入れられた。中には、小さく無骨な木の椅子がいくつかと、動物の皮を開いたような雑な敷物が敷かれ、お世辞にも綺麗とは言えない。薄暗く、真ん中の暖炉には火がはいっていない。


「ここでどうするのですか?」

「そこに座れ」


 二人は指示された椅子に座った。それを見て男は出ていき、戸に鍵をかけた。


 さて、どうやって逆転するか。


 そっとチョーカーに触れた。

次回第二十五話 綱引き

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