第1話 叔母として
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国ハンブルク
「レイシア様、ベルリンから使者がお見えです」
「ここに通せ」
「分かりました」
レイシアは陸軍を辞めた後、父祖代々の地であるハンブルクに引き篭もっていた。家事はメイドにやらせ自身は特にやることも無いため読書したり狩りに出掛けたりとダラダラと過ごしていた。
その後ーーーー
「遠路遥々とご苦労だったな」
「いえレイシア様もお元気そうで何よりです」
「さぁ飲むといい」
「頂きます」
席についた使者にレイシアはコーヒーを勧める。使者はカップに入ったコーヒーを一口飲むとカップをテーブルに置く。
「陛下はどうかね? 相変わらず酒の日々か?」
「・・・・・・・・レイシア様、私が使者として来たのは陛下の件で御座います」
「そうか。なら申してみよ」
「はい・・・・・・・・陛下が一昨日崩御されました」
「・・・・・・・崩御?」
「残念ながらお亡くなりになりました・・・・・・・・酒毒によりこの世を去りました」
「そ、そうか。この私を置いていくとはなイリアス」
「・・・・・・・・・・最期に陛下は貴女に対してこんな私の親友でいてくれて有難うと申されました」
レイシアは瞳に涙を浮かべる。いくら邪険にされても遠ざけられてもレイシアにとって大切な親友だった。上辺だけと友人なら沢山いるがイリアスのような心から打ち解けられる親友はいなかった。
「それで遺言はあるのか?」
「レイシア様の甥・アルフレート=フォン=アイネス様を皇帝にとのことで後見人に宰相とレイシア様に頼みたいと言い残しました」
「・・・・・・・・・断る」
「何故です?」
「アイネスは宰相に任せる。私は軍はもちろん政界も退いた身。今更、政治に携わりたくないからな」
レイシアは面倒事はウンザリといった表情でそう言う。
「わ、分かりました。後日、アイネス様をお迎えに参りますので宜しくお願いします。では私はこれで失礼致します」
「うむ」
その後ーーーー
「叔母上?」
「ああアイネスか・・・・・・・」
扉からヒョッコリと顔を出したのは長い銀髪に赤い瞳が特徴的な少女だ。瞳の色以外は久遠柚希にそっくりだ。
「何かあったのですか?」
「お前に少し大事な話がある。こっちに来たまえ」
レイシアがそう言うとアイネスはコクリと頷く。
「・・・・・・・?」
「今初めて知ったのだが陛下が崩御された。陛下はお前を皇帝にと遺言を残したらしいのだ。それ故、明日ベルリンに向かえ」
「ぼ、ボクが皇帝?」
「うむ。後見人の宰相がしばらくの間、実権を握ることにはなるらしいが、いずれはお前が親政をやることになるだろうな」
「叔母上はどうなさるのですか?」
「フッ、私はこのハンブルクを守る使命がある。この地からお前を陰ながら応援してるから安心したまえ」
「ボク、アルフレート家の為に頑張るよ」
「うむ」
その翌日、アイネスは馬車はベルリンに向かった。レイシアは不安ながらも見送った。アイネスの母や父は既に亡くなっていてレイシアが母代わりとして養育していたのだ。子がいないレイシアにとってアイネスが我が子だった・・・・・・・




