第16話 ベルリン陸軍大病院
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国ベルリン陸軍大病院
「ん、ん・・・・・・・・・」
目を開けると白い天井があった。消毒剤の臭いがする・・・・・・
ここはどこだ・・・・・・・? 確か俺はドルシアに刺されたはずじゃ
「気づかれましたか?」
「こ、ここは・・・・・・・?」
「陸軍大病院の病室ですよ」
俺のベッドの横に看護師が立っていた。ちょうど点滴袋を替えているところだった。
「俺はどうなったんだ・・・・・・ゆ、友那は」
「2日間、意識不明だったんですよ? 貴方の親しい方々はご無事ですから安心して下さい。むしろ貴方が一番危険な状況だったんですよ」
「そうか・・・・・・死にかけた・・・・ということか。友那が無事なら何も言うことはないな」
俺は安堵の溜め息をついた。意識は醒めたが体はまだ動かせない。辛うじて首が動かせる程度だ。
そ、そうだ戦況はどうなったんだ!?
「看護師さん! ラジオは無いのか?」
「ラジオ? 在りますよ。今お持ちしますね」
今の国の状況が知りたかった。連合王国やフランスがどうなったか・・・・・・・・・
数分後ーーーー
「はい。どうぞ」
「ありがとう・・・・・・・」
看護師はラジオを机の上に置くと病室から出ていった。
「ハァ・・・・・・・・」
(参謀本部の発表によりますとイギリス連合王国は西プロイセンを占拠、その後ベルリン南部のポツダムへの侵攻を開始致しました。さらに各地域の要塞を落とした模様です。ベルリンの皆様は混乱せず速やかにベルリンから退去願います)
に、西プロイセンがお、落ちただと!?
(イギリス連合王国軍ははブレーメンや東プロイセンを無視しベルリンの最終防衛線とも言えるポツダムを攻撃中とのことです。ベルリンやポツダムの皆さん!! いつでも避難出来るような準備をして下さい。自分の命は自分でしか守れないのです)
「・・・・・・・・・・・」
コンッ コンッ!!
「?」
ラジオを聞いていると誰かが病室の扉をノックする。
「誰だ?」
「私だ」
「・・・・・・レイシア師匠」
現れたのは黒コート姿のレイシアだった。いつもは紅髪を後頭部で束ねているが今は結っていなかった。
「いよいよ帝国も追い詰められたな。帝国軍も必死だと聞くよ。まったく帝国の未来はどうなるやら」
「師匠も他人事じゃねぇだろ?」
「フフッ、私は既に軍を退いていてね。他人事なんだよ」
「軍を辞めた? ど、どういう事だよ・・・・・・・」
「そのままの意味さ。私は帝国陸軍少将の職を辞めたのだよ。今は先祖代々が使っていた屋敷に隠棲してるのだ」
「・・・・・・・な、何で辞めたんだよ。今が師匠の出る幕では?」
清々しい顔をでそんなことを言うレイシアに俺は困惑する。
「何で辞めたんだよ・・・・・・・・」
「私では父を超えることは出来ないのでな・・・・・・今ではすっかり陸軍のお荷物だ。だから辞めたんだよ」
「そんな・・・・・・・・」
「まあ何かあったら相談しに来てくれ。私はいつでも待ってるからな」
「・・・・・・・・そう言えば魔導航空戦隊の連中はどうしているんだ? グレイスが指揮を執っているのか?」
「いやユウナに指揮を執らしている。ユウナが指揮官に立候補してきてな。意気込みに応えて第一航空戦隊指揮官にして臨時の陸軍少将に命じたのだ」
友那が・・・・・・・・・一航戦の指揮官?
「部隊の名称も第一航空戦隊から魔導航空戦隊に変えて第一航空戦隊から第五航空戦隊の5部隊に分けていると聞いている」
「そ、そうか・・・・・・俺が居ない間にそんなことが・・・・・・・」
「まあ君は療養に集中したまえ」
レイシアはそう言うと病室から出ていった。




