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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第二章 翔ぶ鶴
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第15話 ポツダム攻防戦 その4

機巧暦2140年1月・イギリス連合王国軍本営



「ニーナ、撤退命令を出してくれないか」



「何故だ? 我らは今破竹の勢いで攻め込んでいるんだ。この勢いを崩すわけにはいかない」



「状況が変わったんだよ。学園都市を攻めていた連中が言ってたんだが帝国軍第一師団が撤退してから義勇軍の抵抗が前に増して強くなってるらしい。いくら我らが精鋭と言えども死兵を相手に戦うのは不利。一旦退いて体勢を立て直すべき!!」



「・・・・・・・・・・この千載一遇の好機を逃せと言うのか?」



「これは好機ではない。危機だ」



「危機?」



ニーナはイライラしながらそう言う。



「このまま攻め続ければ落とせると思ったら大間違いだ。そとから援軍でも来たら疲労している我が軍では太刀打ちできない。壊滅は必須だ」



「アハハ外からの援軍なんて来るはずないじゃん。ドルシア軍の飛び石作戦で各地域は糧道や情報網共に寸断されてる。援軍には来ないだろう?」



「・・・・・・・・・・・」



「ニーナ様!! 報告です!!」



「?」



「何?」



「学園都市を攻めていた部隊が全滅しました!! 生き残りの兵士によれば学園都市内に外部からの援軍が密かに入り込んでいるとのことです!!」



駆け込んできた兵士からそう告げられる。 







さらにーーーー



「報告!! 敵の別働隊が我が軍の兵糧所を襲撃し焼き払ったとのこと!!」



「報告!! 退路のために確保しておいた橋が破壊されました!!」



「報告!! 学園内にいる部隊は魔導航空戦隊だと判明致しました!!」



「だ、魔導航空戦隊だと!!」



「ニーナ!! 状況が悪化する前に今から撤退するぞ」



兵から立て続けに悪い報せを聞いたニーナは呆然とした。まさか知らぬ間にこんなに追い詰められていると思いもしなかったからだ・・・・・・・・・・



「退路が断たれている今、我が軍に退くという選択肢はないな・・・・・・・・全軍を学園都市内に突撃させるぞ!!」



「なっ!? 正気かニーナ!!」



「正気だよ。全軍に告ぐ!! 前進し活路を開け!!」



ニーナは主力部隊を学園内の広大な空き地まで進出させた。







学園都市・空き地ーーーー




「ここが空き地? 平原の間違いでは?」



「いや学園内の空き地で間違いない アレを見ろ」



「なるほどアレが校舎か」 



50m先に校舎が見える。さらに左右にも校舎が建っているのが見える。



「さぁ行くぞ!!」




「「「うォォォォォォォォ!!!」」」



ニーナは馬上から剣を振るって突撃の合図をかける。歩兵部隊が一斉に学園に向かって走って行く。







ーーーー学園都市・義勇軍



「友那少将、敵が此方に向かってきます」



「見れば分かるよ。全軍、魔弾の使用を許可する!!」



(分かりました。しかし本当によろしいのですか?)



友那は通信機に向かってそう言うと自らも銀色の塗装が施されたモシンナガンに魔弾を装填する。



「魔弾?」



「?」



会長や副会長を含め義勇軍の連中は首を傾げるが周りに飛行している航空戦隊の連中は厳しめな表情をしていた。魔弾は対軍兵器だ。鉄と魔術師の血とよって生成された銃弾。一発放てば広範囲に渡って破壊する。



「・・・・・・わ、私だけ魔弾を使うわ」



(分かりました。私たちは通常弾による援護にまわります)



「宜しく頼むわ」



 



ガチッ!! ガチャッ!!






「使うのは一発の魔弾だけ。それ以上はいらない・・・・・・・」





バァンッ!!





銃口から放たれた魔弾は突撃してくる敵歩兵部隊の中央に命中






そしてーーーー







ドカァ!!





「ギャァァァァァァァァァ!!!!」





「ブハッ!!」



 


「ギギギァァ!!」

   






「グハッ!!」




蒼い閃光と共に轟音が鳴り響く。轟音に混ざり敵兵の断末魔や悲鳴も辺りに響き渡る。





ジャキッ!!  





「・・・・・・・・・・・・」





友那は銃身を強く握り締め砂塵が収まるのを待った。






そしてーーーーー






「うっ!!」





「・・・・・・・・っ!!」







「・・・・・・・・・・」






地面にはクレーターができ、吹き飛ばされた兵士の遺体が辺り一面に散らばっていた。ほとんどが肉片と化していた。余りにも悲惨な光景に会長や副会長はその場で嘔吐した。



「こ、これほどの威力だとは・・・・・・・・・」



「初めて見た・・・・・・」



「こりゃ軽く使えないな・・・・・・」 



「防御魔法陣・・・・・・を壊し敵魔術師の魔術回路を滅茶苦茶にする兵器だ。並み威力以上じゃないとそれは不可能」



周囲を飛んでいた魔導航空戦隊の連中は口々にそう言う。






ーーーー連合王国軍



「・・・・・・・・・・うっ!!」



「・・・・・・・・・・」


 

「・・・・・・・・・っ!!」



目の前で味方がミンチにされる有様を見た連合王国軍の兵士らは絶句し戦意喪失していた。



「こ、これが魔弾・・・・・・・・」



「魔術師によって威力も様々だと聞く。ポーランド侵攻の際には敵司令部を壊滅させたらしい・・・・・・・・」



「・・・・・・・これ以上の戦争続行は不可能だ。退くぞ」



「分かった」



ニーナは全軍に撤退命令を下した。ポツダム防衛戦は多大な犠牲を払いながらも義勇軍の粘り勝ちとなった。

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