第14話 ポツダム攻防戦 その3
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国ポツダム学園都市
「攻め込めェェェェ!! ここを落とせばベルリンは目前だ!!」
「おぉォォォォォォ!!!!」
「させるかァ!!」
「グハッ!!」
「撃てェ!! 撃て撃て撃てェ!!!」
「この学園が我らの墓標だ!! 死兵となりポツダムを護れェェ!!!」
会長が刀を振り回しながら迫り来る敵兵を片っ端から斬り殺す。後にいる書記や会計、副会長らも銃で援護射撃を行う。狭い廊下では敵は包囲することも出来なかった。
「くっ!! たかが素人の分際が!! 生意気抜かすな!!」
「素人でも信念貫けば立派な国士となる!!」
グサッ!!
「ブハッ!!」
「貴様ら侵攻軍に国を護ろうとする者の何が分かる!!」
義勇軍は突入してきた第一陣の大将を斬り殺し押し返すことに成功する。
しかしーーーーー
「会長・・・・・・申し訳ございません」
「・・・・・・・安らかに眠れ。私はお前達の分まで戦う」
「ヴァルハラでお会いしましょう・・・・・・・」
「・・・・・・・・今までありがとうな」
書記、会計が重傷を負い亡くしてしまったのだ。さらに死傷者も多く出た。千人いた義勇軍は今は僅か百足らずになっていた。
「会長・・・・・・・・・っ!!」
「死後に神の加護が在らんことを」
亡くなった会計と書記の最期を看取りと立ち上がった。副会長は目の前に迫る敵兵に後ずさりしていた。
「副会長は残存兵を集めてベルリンに行け」
「えっ!? いや俺も会長と共に戦う!!」
「いいから逃げろ!! 私が活路を開く!!」
ガチャッ!!
「・・・・・・・死ぬつもりか?」
「死んで護国の鬼となれ。大日本帝国の言葉だ。意地を見せる!!」
「会長!!」
会長は腰の刀に手をかけると勢いよく抜刀する。
「ハァァァ!!! ・・・・・・・なっ!!?」
カチャッ!! カチャッ!!
「終わりだ。義勇軍の総大将さんよ。ここで果てな」
「くっ!!」
機関銃を構えた敵兵が二人、さらに奥にはライフルを構えた兵が10人ほど・・・・・・・・・・
「てぇェェェ!!!!」
「か、会長ォォォォォォォ!!!」
ダダダッ!!
「・・・・・・・・・これまでか」
機関銃から次々と銃弾が発射される。会長は死を覚悟し刀を振り上げて突撃を敢行しようとする。
しかしーーーーー
ガキンッ!! ガキンッ!!
「へっ!?」
「?」
「・・・・・・・・な、なんだ・・・・・と?」
会長の体を貫くはずの銃弾は蒼い魔法陣により弾き返される。
「ま、魔法陣?」
そしてーーーー
「その歳で命を散らそうなんて勿体ないと思わないの?」
「あ、貴方は・・・・・・・?」
「通りすがりの魔導士よ」
会長を庇うように立っていた女性は振り返ると笑いながらそう言う。黒い鶴の模様が入った白いコート、コートの下には太ももの上くらいの丈の短い赤ドレス。白いニーソをはいていて絶対領域が眩しい。腰には刀を差している。
「・・・・・・・あ、貴女は?」
「私は魔導航空戦隊・第一航空戦隊所属の紅坂友那よ。間に合って良かった!!」
「ま、魔導航空戦隊・・・・・・・・・・・・」
強力な援軍が到着したのだ。
「だ、第一航空戦隊だと!?」
部隊名を聞いた敵軍は明らかに動揺し始める。
「そうよ!!」
ガチャ!!
「・・・・・・・・灰色の亡霊もいるってことか」
「残念ながら彼は戦線離脱中よ。今は私がこの部隊の長なの。まあ話はここまでにして目の前の奴らを倒すわよ!!」
友那は防御魔法陣を解くと腰の刀を引き抜く。
そしてーーーー
「救国の剣!!」
ビキッ ビキッ!! バリッ!! バリッ!!
刃の表面に蒼い幾何学模様の魔術回路が浮かび上がる。
「君は私の後に付いてきて!!」
「わ、分かった」
「・・・・・・・・・」
友那はそう言うと刀を振りかざして機関銃を構える敵兵の首を刎ねる。さらに別の敵兵が機関銃を発射しようとするが発射する前に銃身を叩き斬られる。
ドスッ!!
「ブハッ」
「速い・・・・・・・」
あっという間に6人を斬り捨てるとそのまま脇の窓ガラスを刀で叩き割る。
ガシャーン!!
「さぁここから逃げるよ!!」
「ちょっ!? ここは3階だぞ? 飛び降りのか?」
「当たり前じゃない。このまま出口までどれだけの敵がいるかわからないわ。こうする方が手っ取り早いしね!!」
会長が戸惑いつつそう言うと友那は頷く。
「さぁ行くよ!!」
「ちょっ!!」
「・・・・・・・パワフルなお方だな」
友那、会長、副会長の順に3階廊下の窓から中庭に向かって飛び降りる。
ーーーー学園内・中庭
「よしっ着地!!」
「うわっ!!」
ドサッ!!
「ヒィィィィィ!!」
ドサッ!!
「無事かな?」
「な、なんとか・・・・・・・副会長はどうだ?」
「無事だぞ」
「うむ。良かったわ」
3人はギリギリの体勢で着地すると辺りを見渡した。
「これって・・・・・・」
「死地から脱したかと思ったが・・・・・・・・また死地に来てしまったのか?」
「死地から死地へか・・・・・・悪くないわね!!」
50メートル先に敵の大軍が展開していた。敵はポツダムの城門を打ち破り学園都市内に陣を移していたのだ。つまり目の前に進軍しているのは敵将ニーナが率いる本隊だ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「背後はもう安心と言ったところかしらね?」
「会長ォォォォォォ!!」
「副会長!! よくご無事で!!」
学園の入り口から義勇軍が此方に向かって走ってくる。学園内の敵軍は第一航空戦隊の兵らが掃討したのだ。そのため背後には敵はいなかった。
「おお、お前ら無事だったか!!」
「な、なんとか僅か30名足らずになってしまいましたが・・・・・」
「いやよくやった!! 生きてくれててありがとう」
「フフッ・・・・・・」
義勇軍らは仲間の無事を喜び合っていた。
「さぁ!! 最終仕上げだよ!! 敵本隊はもう目の前!! アレを殲滅すればこの防衛戦は私たちの勝利となる!! 義勇軍、第一航空戦隊の諸君!! 神は我らと共にある!!」
「「「うぉォォォォォォォ!!!!!」」
兵士らの歓声の声が天地を揺るがした。義勇軍に至ってはあれだけの損失を出していながら士気は下がっていなかった。その事に友那は内心安堵した。
 




