第13話 女王陛下の勅命
機巧暦2140年1月・イギリス連合王国ロンドン
「首相! 女王陛下から勅命です」
「勅命だと? 読み上げてくれ」
「此度の王立陸軍によるドイツ侵略は許し難し。陸はフランス軍、海は王立海軍に任せ王立陸軍を討伐。内閣は外交交渉によりドイツとの対話の窓口を開くこと・・・・・・・・とのことです」
「そうか女王陛下が言われたことだ従わなければならないな。直ぐに王立海軍をドイツ帝国のキールに向かわせろ!!」
「分かりました」
こうして女王陛下のご下命により王立海軍は戦艦クイーンエリザベスを旗艦とする第1戦艦部隊と輸送艦60隻をキールに向けて出撃させた。
ーーーー旗艦クイーンエリザベス
「司令!! キールが見えてきました!!」
「よし全艦に戦闘準備をしろと通達しろ!! 輸送艦の兵士らには上陸準備をしろと言え!! キールを解放するぞ!」
「はい」
連合王国の港から出港した艦隊はキール近海まで来ると砲弾を装填し戦闘準備を整えた。
「全艦準備完了致しました!!」
「よし。テェェェェェェェ!!!!」
「テェェェェェェェェェ!!!!」
司令官の言葉に伝令係が通信機器に向かってそう叫ぶ。戦艦部隊が単縦陣を組み、広範囲に渡る艦砲射撃を行う。射撃する度に静な海を衝撃波が貫き波が立つ。
「耳を塞げ!! 鼓膜が破れても知らぬぞ!!」
「次弾装填急げ!!」
「撃てェェェェェ!!」
約2時間に渡って只ひたすらに艦砲射撃を行いキール軍港は地形が変わるレベルまで壊滅した。キール軍港にいたドルシア軍の守備隊はまさか仲間に撃たれているとは思ってもいなかった。そのため対応が遅れに遅れた結果、沿岸地域にあった砲台を破壊されしまった・・・・・・・・・・・
「上陸船艇を突撃させろ!!」
輸送艦から上陸船艇が沿岸地域に到着すると物資やら兵士やらが次々と上陸し最終的に6千の兵力が上陸を完了させた。
「6個に兵力を分けて街に侵攻する。良いな!!」
「「「はっ!!」」」
6方面から弧を描くように街に侵攻することになり、僅かなドルシア軍は連合王国軍を突破して海に活路を求めることになったが残念ながら失敗し壊滅した。その後、キール軍港はドルシア軍から連合王国に支配権が変わった・・・・・・・・・これはドルシア軍が本国に退くことが出来なくなったことを意味していた。さらに補給も軍港から行っていたため補給が途絶えることになった。
ーーーードイツ帝国ポツダム・学園都市
「会長、正面バリケードが手榴弾によって破壊されました。敵が続々と市街地から校舎内に侵入しています」
「防ぎきれなかったか・・・・・・・・」
「どうしますか?」
「レーゲル大将は屋上か?」
「いえ実は昨夜から姿が見えず・・・・・・そればかりか軍の姿もありません」
「ど、どういうことだ!?」
会長は絶望しながらそう言う。
「恐らくレーゲル大将も勝ち目無しと見て精鋭部隊を温存するために撤退したと思われます・・・・・・・・」
「な、何てことだ・・・・・・・我らは僅かな兵力しかいないのに」
「逃げますか?」
「いや私も未熟ながらも帝国軍人。ここで奴らに降伏するよりも徹底抗戦するぞ!!」
「分かりました」
会長は刀の柄を握りながらそう決心する。この時、義勇軍は死兵となった。
ーーーードイツ帝国ベルリン・宮殿
「戻られたかレーゲル大将」
「これはどういうおつもりですか? 陛下」
「参謀本部からあのポツダムは戦略上、守るのは無意味と言われてな。ベルリンで決戦するから集まれと各地の諸将らに文を送っている」
「陛下、ベルリンは敵の最終目標です。ここを破られれば陛下のお命はないのですよ? お考え直し下さい」
「決めたことだ。私の決定に異を挟むな」
「・・・・・・・・陛下、私はポツダムの学園都市の若き将校らに何と申し開きすれば良いのですか!? 彼らは私が見捨てて逃げたと噂するでしょう!!」
「声を荒げるとはレーゲルらしくもない」
イリアスは怠そうにそう言う。
「私がいない間に随分と変わられましたね。溢れんばかりの知性は何処へいったのですか? 今の陛下は抜け殻同然!! 精気が感じられません!!」
「もう言うな。参謀本部の意に従わなければ軍法会議だぞ。処断されたくなければ決定に従え」
「・・・・・・・・・・・・」
これ以上は追及出来ずレーゲルは決定に従うことになった・・・・・・・
その後ーーーー
「久しぶりだなレーゲル」
「カーチスか」
食堂でやけ食いしているレーゲルにカーチスが話しかけてきた。
「散々だったようだな」
「・・・・・・・陛下は陛下では無くなってしまったのか」
「政務にほとんど興味を無くして毎日昼間から美少年を囲って酒浸りって聞くぜ。堕落したもんだな。この帝国も・・・・・・・」
「なぁ、陛下は何か吹き込まれてるんじゃないだろうな?」
「さすがにそれは無いだろう。聡明な方だからな陛下は・・・・・・」
「・・・・・・・・そ、そうだよな」
二人は苦笑いした。帝国は既に末期状態となっていたのだ・・・・・・・・・・




