第9話 補給軽視
機巧暦2139年9月・ドイツ帝国帝都ベルリン参謀本部
柚希やレイシアが休暇を過ごしている期間、帝国参謀本部は具体的な作戦計画や配置について話し合われていた。
「西部戦線は五個師団《10万》で作戦行動する予定だ。エルザス地域に一個師団《2万》、ロートリンゲン地域にも一個師団《2万》を守備部隊として配置する。残りの三個師団《6万》で迂回して挟撃というプランになっている。異論はあるか?」
「異論を申し上げても貴方は聞くかね?」
「なに!?」
参謀総長のヘルムート=ヴィーリッヒの言葉に異を唱えたのは海軍大臣のオットー=フォン=マーシャル元帥だった。
「散々補給に問題があると意見が出ているのに貴方は聞いていないフリをする。この場で貴方に申し上げても作戦の修正はしないでしょう?」
「海軍元帥の言うとおりですな。陸軍大臣の私も同意見です」
陸軍大臣のアルフレート=フォン=ヘルマンがそう言った。
「そもそも作戦がお粗末すぎます。迂回する部隊は中立国のベルギー王国の道を借りてフランス共和国に侵攻するつもりだとか・・・・・・ベルギーが簡単に道を譲るとでも?」
「・・・・・・・・」
「私は譲らないと思いますよ? 譲らないどころか奴らは我らの非を連合王国に訴えるでしょうな。そうなれば連合王国も参戦してきます・・・・・・参謀総長その辺りはどうお考えで?」
「そ、それは・・・・・・」
「ハァ 結局、貴方は何も考えてない・・・・ということですか。帝国軍の頭脳である参謀本部がその有様では困る。参謀総長、海軍と陸軍は独自で作戦行動をしてもよろしいでしょうか?」
「クッ!」
陸軍大臣と海軍大臣は参謀総長の反応に落胆した。
作戦会議後ーーーー
「海軍大臣はこれからどうするおつもりで?」
「陸軍大臣が先に作戦行動を決めてくれなければ動きようがないんだが」
「・・・・・・まあ考えておくとしよう」
「うむ」
結局その後、陸軍大臣、海軍大臣ともに考えが纏まらず参謀総長ヘルムート=ヴィーリッヒの作戦を渋々受け入れることになった。