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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第二章 翔ぶ鶴
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第2話 欧州大戦の可能性

機巧暦2139年12月・ドイツ帝国ベルリン



「連合王国の横暴は断じて許されることではない!! 今こそ正義の鉄槌を下す時です!!」



「我らと講和交渉を進めながら西プロイセン侵攻を企てていたとは・・・・・・・・・やはり世界を股にかける連中は違いますな~ アハハ」



「マーシャル元帥、笑い事ではありませんぞ。西プロイセンが占領されたとあらば奴らはこの帝都に進路をとりましょう」



陸軍大臣のアルフレート=フォン=ヘルマン元帥はヘラヘラと笑う海軍大臣のオットー=フォン=マーシャル元帥にそう言う。西プロイセンが連合王国に占領されると大臣らは国策を練るために緊急会議を開いた。緊急会議には外務大臣や財務大臣も出席していた。



「さてとこの国難においてレイシア少将やイリアス陛下がこの会議にいないとはどういうことですかな?」



「・・・・・・・・まあとにかく私たちでやりましょう」



「・・・・・・・・・・」



財務大臣が陸軍大臣の言葉を遮った。財務大臣は今のイリアスでは会議に参加したとしても大臣らの言うことを聞かないばかりか疑ってかかることを知っていたため、あえて呼ばなかったのだ。



「今の段階で連合王国軍とぶつかり合うとどうなるか?」海軍大臣と陸軍大臣の意見が欲しいのだが」



「陸軍は連合王国と戦った場合必ず負けると思うが・・・・・」



「海軍も連合王国の王立海軍とぶつかれば負けるでしょう」



「なっ!? な、何故負けると?」



海軍大臣と陸軍大臣の負けると言う発言に財務大臣は困惑する。



「海軍としては予算を増やしてくれれば増強出来るんですが・・・・・・・・旧式艦しか無い状況では何も出来ませんからねぇ」



「陸軍は部隊の疲弊が酷い。士気も低く戦えない。師団を増やしてくれれば何とかなるんですが」



二人はチラリと財務大臣を見た。



「予算はこれ以上無理です。ドイツ=フランス戦争で帝国の経済は停滞してしまっているのです。これ以上、予算を増やすとなると民は食うや食わずの生活になります」



「・・・・・・・・なら海軍は打つ手はない」



「フッ陸軍も同じである」



「・・・・・・陸軍大臣、切り札はどうしたのだ? 第一航空戦隊はどうしたのだ!!」



「第一航空戦隊は壊滅しました。ユズキ=クオンは明日もしれぬ重傷と聞いています」



「あ、ああ!?」



「陸軍大臣それは真か!? 海軍も今初めて聞いたぞ!!」



財務大臣と海軍大臣はビックリ仰天した。さらに周りに居たメイドや書記の連中も仰天する。陸軍は柚希の入院を極秘事項としてイリアスやレイシア以外には口外してなかった。



「真だ。まあ第一航空戦隊壊滅は言い過ぎかもしれないがな・・・・・・・まあ士気に障るとして極秘として扱っていたわけだ。ユズキ少将は胸元を刺し抜かれながらも生還したわけでね。不幸中の幸いだ。亡霊の異名もあながち嘘ではないのかもしれないな」



「い、生きているのであれば幸いだ・・・・・・・」



「第一航空戦隊は防波堤だ。壊滅されては困るからな。それで第一航空戦隊は今指揮官不在ってことに・・・・・なるのでは?」



「ご心配なさらずとも後任がいますので」



「・・・・・そ、そうか。ならばその第一航空戦隊に迎撃させるのはどうか?」



「海軍は異論無し」



「陸軍も承知致しました」



こうして第一航空戦隊こと魔導航空戦隊が帝国の盾として連合王国軍と戦う事が決まった。





ーーーードイツ帝国ブレーメン



「ユウナ少将、連合王国と本格的に殺し合うなら連合王国と帝国の間に走るドーバー海峡の制空権を得ることが大切です」



「・・・・・・・・」



「制空権を得ればイギリス本国とキール侵攻軍との連携を断ち切ることが出来ます」



「・・・・・・・・」



「ユウナ少将、失礼ながら分かってます?」



「分からないわ」



友那はそう言うとあくびをする。グレイスは友那に戦術を教えていた。勉強嫌いの友那は如何にも眠そうな目をしていた。



「戦術は戦う上で最重要ですよ。貴方は少将の身分なんですから基礎くらいは頭に入れなければなりません」



「って言われても・・・・・・・・人殺しの学問なんて意味ないし・・・・・・」



「はぁ、なら戦術ではなく地政学をやりましょうか」



「地政学?」



友那は首を傾げた。



「地政学とは歴史学と地理学を掛け合わせたような学問と思って頂ければ結構です。土地の気候や風土によって何処を取ったら自国の利益となるか・・・・・・そういう学問です」



「取るってことは戦争じゃんよ。結局は人殺しじゃない?」



「戦争は外交の最終手段です。話し合いで解決するのが最上の一手です。まあ話し合いで解決出来ないから戦争になるわけですが・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・でその地政学ってのは何なの?」



「世界には2つのグループに分けられるんです。シーパワーと呼ばれている海洋国家とランドパワーと呼ばれている大陸国家です。シーパワーとは海に囲まれた国のことでイギリス連合王国や極東の大日本帝国、アメリカ合衆国のことを指します。対してランドパワーとは陸続きの国のことで我がドイツ帝国やオスマン帝国やフランス王国がそれにあたります」



「・・・・・・・・・・」



「海洋国家は緩衝地帯をつくるために大陸国家を侵略し、大陸国家は海洋資源や航路を求めて海へと勢力を伸ばすのが常識です」



「それじゃイギリスは緩衝地帯を?」



「イギリスの緩衝地帯はベルギーとオランダになりますからドイツ帝国への侵略は完全に利益第一と考えるのが正しいかと・・・・・・」



「ふ~ん。イギリスと戦うには海峡の制空権を取ればいいって話してたけど無理なんじゃない?」



「?」



友那は伏せていた顔を少し上げてそう言う。



「イギリスはアフリカや中東、インドに植民地を持ってるわ。その植民地を経由して南の運河からも補給物資が来ると思うの。そうなるとドーバー海峡だけではなくスエズ運河もドイツの勢力圏に入れないとダメだと思う」



「つまりこのイギリスと全面戦争するなら他国を巻き込んだ大規模戦争になる可能性はあり得るということです」



「局地戦だけではダメということね」



友那がそう言うとグレイスは頷いた。



「プロイセン=フランス戦争なポーランド侵攻戦やドイツ=フランス戦争とは全く違う・・・・・・・国家の存亡を賭けた総力戦となるでしょうね」



「・・・・・・・・・・」



ドイツ=フランス戦争の時は他国が直に軍隊を送ってくることは無かった。イギリス連合王国もフランスに経済支援しただけでロシア=ソビエト連邦は中立になりオスマン帝国もドイツ帝国に経済支援していただけだった。



しかし、イギリス連合王国との戦争となれぱ事情が変わってくる。イギリスの各地の植民地とも戦うハメになりそれは他国の土地を踏み荒らすことになる・・・・・・・・・

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