第29話 フランス王国の建国
機巧暦2139年12月・西フランス・ナント
「これはこれは遠路はるばるご苦労だったな」
「フン、形式にハマることはないぞ。お前とは長年の付き合いだ。軽くしてくれ」
「そうだな」
西フランスの陸軍元帥・シャルル=ジョゼフは北フランスの陸軍元帥・マクシミリアン=ウェールズを首都ナントの自分の屋敷に招いた。
「で、わざわざ呼び出して何の用だ?」
「まあまず一杯飲んだらどうだ?」
「うむ」
ウェールズはワインの入ったグラスを取ると飲み干した。
「キール陥落の件は聞いたか?」
「ああ、連合王国がやったらしいな」
「連合王国? アイツらはドイツと講和しようとしてた連中だろ? 自分から講和交渉を破綻させたのか?」
シャルルは困惑しながらそう言う。
「2つに割れてるんだよ。ドイツ帝国を滅ぼすために徹底的にやる滅亡派とある程度生かして搾り取ったほうが得だって言う搾取派でな。キール陥落は滅亡派がやったことだ」
「軍を勝手に動かした・・・・・・・と言うことか」
「いや軍は完全に独立組織だからな。王や議会の承認なく動かすことが出来るって聞いてるぞ。まあ勝手に動かして失敗した場合は厳罰処分だがな・・・・・・・粛清か厳罰処分を恐れて一か八かでキール攻めやった可能性はあるな」
「・・・・・・・・・・・ハァ、となるとキール陥落は軍が暴走してやった可能性があるのか」
「暴走状態であれば我が国の北フランスにも攻めてくるかもしれないな」
ウェールズは青ざめながらそう言う。ドイツ=フランス戦争で兵力や経済に大損害を出していた北フランスは自国の復興が全く進んでいなかった。この状態で連合王国軍に攻め込まれれば滅亡は確定だった。
「さてそこで本題に入るとする。ウェールズ元帥、北フランスと西フランスで合併しないか? 合併すれば連合王国と言えども簡単には手出し出来ないはず」
「なるほど・・・・・・・・」
「聖四大魔術やらは時代遅れだ。今は|機巧魔術の時代だ! 連合王国から技術を学びつつ富国強兵に勤しむんだ」
シャルルは目を輝かせながらそう言う。
「フランス統一と言うことか・・・・・・わかった。合併した暁にはシャルル元帥が王となり私が宰相となろう」
「ああ」
その後、2人は北フランス、西フランスのそれぞれで擁立していた王家の一族を斬り、旧王都であるパリに向かい宮殿にて統一を宣言した。シャルル元帥が王として即位しフランス王国が樹立された。




