第24話 キール奇襲
機巧暦2139年12月・ドイツ帝国キール
「ドルシア様、大日本帝国・欧州本部から電報です」
「ありがとう」
イギリス連合王国・陸軍中将のアルフレート=フォン=ドルシアは配下から電報を受け取る。
「欧州本部からは何と?」
「ユズキ=クオンを始末してくれないかと言ってきた・・・・・・全く私たちを便利屋か何かと間違えてないかな? 奴らは・・・・・・・」
「どうするんですか?」
「アハッ!! そんなの決まっているでしょ。先にこのキールを壊滅させるわ!! ユズキの始末はその後よ!!」
ドルシアは蒼い髪を指先でクルクルしながらそう言う。ドルシアは連合王国の将ではあるものの、連合王国からの評判はかなり悪い。独断専行で上への報告は一切しない。彼女が中将になれたのは上官・ウィリアム=ロドネーのお陰だった。
今回のキールの軍港に潜伏したのも彼女の独断によるものだった。上からの評判はすこぶる悪い彼女だが不思議と下からは好かれるようで配下から姉の如く慕われている。
「分かりました。では計画通り夜半に決行致します」
「期待しているわよ」
ドルシアの言葉に配下の将が頷く。
そしてその夜ーーーーー
「第一師団!! 突撃せよ!! 第二師団は軍港の出口を塞げ!! 第三師団は敵艦隊司令部を攻めよ!! キールを地獄の底に叩き込んでやるといいわ!!」
ドルシアは各師団に対して声高らかにそう叫んだ。
機巧師団は機械人形によって編成された部隊だ。機巧魔術によって生み出された兵器で当然ながら感情などは無い。全員が西洋騎士のような格好をして右手または両手に小型機関砲やライフル銃、近接武器として籠手には剣を仕込んでいる。機械人形の動力は胸に内蔵された魔術宝珠となっていてそこから魔術回路が体の隅々まで無数に張り巡らせている。
ザッ!!
ザッ!!
ザッ!!
ザッ!!
機械人形らはドルシアからの司令を受けると各方面に向かって進軍していった。当然ながら人間ではないため不気味な程動きに無駄がない・・・・・・・・
今回のドルシアの目的は連合王国とドイツ帝国の講和を破綻させることだった。理由はただ一つ・・・・・・戦争が終われば平和な世に自分たち軍人は要らなくなる。そのため政治力皆無なドルシアらは粛清を恐れていたのだ。粛清を避けるには戦争を続行させるのが最善の手だった。
密かに連合王国とドイツの間にあるドーバー海峡を輸送艦で渡り手始めにキールの軍事基地を占領しキールを橋頭堡として東プロイセン、西プロイセンを手に入れる手筈だった・・・・・・・・・・




